「言えるのは、言えないという事だけ!」――『天地創造』31年ぶりの”目覚め”を予告した会社の正体
約23秒の動画に流れるのは、聞き覚えのある旋律でした。
ゲーム内BGM「祈り」をアレンジした音楽、そして「Wake up. All the living things in the world await your awakening.(目覚めの時だ。
世界のすべての命が、お前の目覚めを待っている)」という一文。
動画の最後にひっそりと表示されたクレジットには「©SQUARE ENIX/QUINTET/Kamui Fujiwara」の文字が並びます。
1995年にスーパーファミコン(SFC:任天堂が1990年代に発売していた家庭用ゲーム機)で発売されたアクションRPG(ARPG:戦闘をリアルタイムで操作するタイプのロールプレイングゲーム)『天地創造』を知っている人なら、これだけで十分にピンとくる仕掛けです。
長らく動きのなかった旧作IPがどう掘り起こされていくのか、SNS運用やコンテンツ発信に関わる方にも参考になりそうな事例なので、今回はこの動きの中身を確認してみます。
先に結論をまとめると:
– スウェーデンのパブリッシャー「Clear River Games」が8月18日、『天地創造』を思わせるティザー動画を公開しました
– 詳細は日本時間8月25日午前3時配信のレトロゲーム番組「Pixel Arcadia」で明らかになる見通しです
– 原作を開発したクインテットは既に倒産しており、今回の動きの主体はライセンスを持つスクウェア・エニックスと海外の再販専業パブリッシャーとみられます
「目覚めの時だ」――Xで急速に広がった予告動画
このティザーを投稿したのは、Clear River Gamesという海外パブリッシャーの公式アカウントです。
投稿文はシンプルに「It’s time to wake up.(目覚めの時だ)\n\nWatch @PixelArcadiaShw on August 24th!」というものでした。
It's time to wake up.
— Clear River Games (@clearrivergames) 2026年8月18日
Watch @PixelArcadiaShw on August 24th! pic.twitter.com/nM23bySTmn
このツイートは29万インプレッションを超え、1,000件以上のいいねと500件超のリツイートを集めています。
投稿自体には「天地創造」という単語は一切登場しません。
それでも反応が広がったのは、動画中の音楽・セリフ・クレジット表記という3つの要素が、往年のファンにとって”答え合わせ”のように機能したからです。
ただ、公式アカウントの一投稿だけでは、これが本当に『天地創造』を指しているのか、それとも別の作品との連想違いなのかは判断できません。
ゲームメディアや原作関係者の反応まで含めて、もう少し裏を取ってみます。
調べて分かったこと
Clear River Gamesとは何者なのか?
聞き慣れない社名ですが、素性不明の会社というわけではありませんでした。
複数のゲーム系データベース・ニュースサイトの情報を総合すると、Clear River Gamesは2020年に設立された、スウェーデン・カールスタッドを拠点とするゲームパブリッシャーで、大手ゲームグループ「Embracer Group」傘下に位置づけられています。
事業の中心は、レトロゲームやシューティングゲームの再販・パッケージ化です。
実際にこれまで手がけた作品には、『RUSHING BEAT X: Return of Brawl Brothers』『Cotton Reboot! High Tension!』『Truxton Extreme』『R-Type Delta: HD Boosted』といった、往年の日本製アクション・シューティングタイトルの復刻版が並びます。
日本の開発会社の版権作品を海外向けに掘り起こす、という点では今回の動きと文脈が一致しており、ゲームスタジオというよりは「移植・復刻の専門商社」に近い立ち位置と考えられます。
『天地創造』はどんな作品だったのか?
改めて確認すると、『天地創造』は1995年10月20日にエニックス(現スクウェア・エニックス)から発売されたSFC用ARPGです。
開発を担当したのはクインテットという東京都多摩市のメーカーで、『ソウルブレイダー』『ガイア幻想紀』と合わせて「クインテット三部作」「ソウル三部作」と呼ばれるシリーズの最終作にあたります。
キャラクターデザインを担当したのが、今回反応した漫画家の藤原カムイ氏です。
北米では当時公式に発売されなかった一方、欧州・オセアニアでは1996年に任天堂から発売され、国境をまたいで熱心なファン層を持ち続けてきた作品として知られています。
移植版やリマスター版はこれまで一度も出ておらず、開発元のクインテット自体も現在は倒産していると報じられています。
つまり「オリジナルを作った会社はもう存在しないが、権利を持つ発売元は健在」という状態の中で、今回の話が動いていることになります。
藤原カムイ氏の反応は本物なのか?
キャラクターデザイナーの藤原カムイ氏は、実在の漫画家として『天地創造』のほかにも複数のゲーム・漫画作品でキャラクターデザインを手がけてきた人物です。
8月19日朝、氏は自身のXアカウントで次のように投稿しました。
Pixel Arcadia show 言えるのは 言えないという事だけ!
— 藤原カムイ (@kamuif) 2026年8月18日
「Pixel Arcadia show 言えるのは 言えないという事だけ!」という投稿は、847件のいいねを集めています。
文面から番組名「Pixel Arcadia」に触れていることは確かですが、「天地創造」という作品名そのものは書かれていません。
ティザー動画のクレジットに氏の名前が入っていたこと、そして「言えない」という言い回しが守秘義務(NDA)を連想させることから、ファンの間では『天地創造』関連の発表を指しているという見方が広がっていますが、これはあくまで状況証拠による推測にとどまる点は押さえておく必要がありそうです。
Pixel Arcadiaとはどんな番組なのか?
もう1つ確認しておきたいのが、発表の場になるという「Pixel Arcadia」の実態です。
これは2026年夏に初開催されるレトロゲーム専門のデジタルショーケース番組で、レトロゲームのマーケティングを手がける「Pixel Helix」が主催していると報じられています。
司会には、ゲーム関連の司会経験があるダン・マハー氏と、映画監督・ゲームディレクターのハスラフ・”HaZ”・デュラル氏が起用される予定です。
配信は8月24日20時(中央ヨーロッパ夏時間)、日本時間では8月25日午前3時からYouTube・Twitch・X・Facebookで行われる見通しとなっています。
この番組の存在自体は複数の海外ゲームメディアで報じられており、レトロゲームの復刻・リメイク発表に特化した新設イベントという位置づけのようです。
今回の『天地創造』関連の噂は、その第1回放送の目玉候補という扱いになっているとみられます。
ゲームメディアのでんふぁみこがめるも、この一連の流れを記事化しています。
スクウェア・エニックスのARPG『天地創造』が復活か…?とある予告動画が話題に。レトロゲーム番組「Pixel Arcadia」で何らかの発表へhttps://t.co/huyKEN557u
— 電ファミニコゲーマー (@denfaminicogame) 2026年8月19日
動画下部にはクインテットの小さなクレジット表記。原作キャラデザ・藤原カムイ氏も「言えるのは 言えないという事だけ!」と反応 pic.twitter.com/4ayIv8crae
この投稿には『天地創造』のパッケージイラストを使った画像が添付されており、投稿文でも「クインテットの小さなクレジット表記」「藤原カムイ氏も『言えるのは 言えないという事だけ!』と反応」といった要素が整理されています。
1,300件を超えるいいねが付いており、Clear River Gamesの投稿単体よりも大きな反響を集めている点も目を引きます。
Shiritomo GAME編集部の考察
今回の一件で興味深いのは、Clear River Gamesの投稿が「天地創造」という単語を一度も使わずに、音楽・セリフ・クレジットという3つの手がかりだけでファンに正解を推測させた点です。
SNS上での拡散は、企業アカウントが答えを言い切るよりも、フォロワー自身に”謎解き”をさせる設計のほうがエンゲージメント(いいね・リツイートなどの反応)を生みやすい傾向があります。
今回もリプライ欄や引用リツイートで考察合戦が起き、それ自体が2次的な拡散を生んでいました。
もう1点、原作の藤原カムイ氏本人が「言えない」とだけ短く反応したことも拡散を後押ししました。
関係者本人が公式発表より先に匂わせる形は、ファンにとって「本物である確度が上がった」と感じさせる効果があります。
ただしSNS担当者の視点で見ると、これは公式アカウントとインフルエンサー的な立場の人物が役割分担できる場合に限られる手法で、どの現場でも再現できるものではない点には注意が必要でしょう。
まとめ
Clear River Gamesが公開したティザー動画は、『天地創造』を強く連想させる要素で構成されていますが、リメイクや移植が正式に発表されたわけではありません。
真相は日本時間8月25日午前3時からの「Pixel Arcadia」で明らかになる見通しです。
さらに深掘りしたい方へ
今回の記事は、以下の一次報道・現地取材記事を参照して作成しました。