「カッパの捕獲は犯罪」――pixivFANBOXで一般作品も公開停止に、対象は「洗脳」から「拉致」まで

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年9月26日 更新
「カッパの捕獲は犯罪」――pixivFANBOXで一般作品も公開停止に、対象は「洗脳」から「拉致」まで

「決済事業者からのご指摘により、投稿の公開を停止いたしました」。
2026年9月25日前後、pixivFANBOXの複数のクリエイターに、こんな趣旨の通知が一斉に届きました。

対象になったのは過激な性描写だけではありません。
あるクリエイターが公開停止にされたのは、数年前に描いたという、カッパの着ぐるみを女の子が虫取り網で追いかける、ほのぼのとしたイラストでした。
本人いわく「カッパの捕獲は犯罪!」。
SNSやクリエイター活動でX・pixiv・note等を使っている人なら、明日は我が身の話です。

先に結論をまとめると:
– pixivFANBOXで「決済事業者からの指摘」を理由に、性描写だけでなく一般作品まで含めて多数の投稿が公開停止になった
– 対象になったのは「洗脳」「拉致」「暴力」「臓器」といった単語やテーマで、数年前の投稿もさかのぼって対象になっている
– 公開停止になった投稿は、内容を修正して運営の審査に再提出すれば再公開できる可能性がある

Xで広がった困惑

きっかけを最初に整理した投稿の一つが、ogino_otakuさんによるものです。

「決済事業者からの指摘により、特定のワードの入った作品の公開停止などが行われた」という説明は、これまでも噂されていた「クレカ検閲」が推測ではなく運営の公式な文言として明記された点で、これまでとは違う受け止められ方をしました。
表現の場を維持できるかという不安が、性表現を扱わないクリエイターにまで広がっていったのです。

ただ、「決済事業者の指摘」とひとことで言っても、実際に何がどこまで引っかかったのかは、通知を受け取った本人にも分かりづらいものでした。
そこで、具体的にどんな投稿が対象になったのかを一次情報で確かめてみました。

調べて分かったこと

実際に何が「非公開」にされたのか?

海外メディアAUTOMATON WESTの報道によると、対象になったのは「催眠」「洗脳」「拉致」に加え、「暴力」「残酷性」「臓器」「死体」といった単語やテーマを含む投稿でした。
運営からの通知文面は「決済会社の指摘により、『修正が必要な項目』に該当する可能性のある投稿について、公開停止の措置を取りました」という趣旨だったといいます。

その基準の曖昧さを象徴するのが、Cafe_Raichuさんのケースです。

添付されている画像を確認すると、描かれているのは「誘拐」というタイトルの、カフェ店員風の女の子が虫取り網でカッパの着ぐるみを追いかける、コミカルなイラストでした。
血や暴力の描写は一切なく、むしろ和やかな雰囲気の一枚です。
それでも「犯罪行為が描かれている」という理由で公開停止になったと本人が明かしており、キーワードだけを機械的に拾う運用の粗さが浮き彫りになった一件です。

影響を受けたのは無名の投稿者だけではありません。
ホラー漫画家として活動し、日本マンガ協会の理事も務める洋介犬さんも、自身の投稿が公開停止になったことを公表しました。

洋介犬さんだけでなく、複数のクリエイターが同様の公開停止を報告しており、一部の界隈だけの出来事ではなく、pixivFANBOXでクリエイター活動をする人全体に関わる問題だと捉えられていることが分かります。

公開停止になった投稿はどうすれば戻るのか?

自分の投稿が同じように公開停止になったとき、まず確認すべきなのが公式アカウントの発表です。
pixivFANBOX公式は「一部投稿の再公開時における審査協力のお願い」と題した投稿で、対応方法を案内しています。

要点は次の2つです。

  1. 公開停止になった投稿は、クリエイター自身の操作では再公開できない
  2. 再公開を希望する場合は、投稿編集ページから内容(本文・タグなど)を見直したうえで、運営の審査に再提出する必要がある

AUTOMATON WESTの報道でも、タイトルやタグの該当箇所を言い換えて再提出したところ承認されたという投稿者の体験談が伝えられており、単語そのものよりも「その単語がどう使われているか」を運営側が個別に見直している様子がうかがえます。
焦って全削除する前に、まずは表現を調整して審査に出す、という順番を踏むのが現実的な対処法になりそうです。

なぜ今、決済事業者が口を出しているのか?

「決済事業者」というと聞き慣れませんが、平たく言えばVisaやMastercardのようなクレジットカード会社です。
2020年頃から、アダルトコンテンツを扱う海外サービスに対してカード決済の停止・制限を求める動きが強まり、その背景にはポルノ規制を訴える海外の非営利団体からの働きかけがあるとされています。
2023年以降はこの流れが強まり、DLsite・Fantia・Melonbooksなど、日本の複数のクリエイター向けサービスが同様の対応に追われてきました。

pixivFANBOXは他サービスと違って今もVisa・Mastercard決済を提供し続けているため、カード会社の基準変更が起きるたびに、その影響を真正面から受けやすい立場にあります。
今回の件も、単発の不具合や気まぐれな運営判断ではなく、この数年続く一連の流れの最新の1コマと見たほうが実情に近いでしょう。

Shiritomo編集部の考察:明日からできることは2つ

今回の件で見えてきたのは、プラットフォームの規約よりも、決済インフラを握る海外企業の基準のほうが実質的な検閲ラインになっているという構図です。
SNS運用担当者・クリエイター双方にとっての実務上の教訓は2つあります。

1つは、収益化の窓口を1つのサービスに依存させないことです。
カード会社の基準変更は特定のプラットフォームの都合とは無関係に起きるため、FANBOXだけ、pixivだけといった一極集中は、今回のような措置が起きたときにそのまま活動停止リスクに直結します。
もう1つは、投稿時のタグ・キーワード付けを普段から意識しておくことです。
今回のケースのように、内容そのものより単語の拾われ方が引き金になっている以上、あらかじめ誤解を招きにくい表現を選んでおくことが、実質的なリスクヘッジになります。

実際、CLIP STUDIO ASSETSでも2026年9月に素材が大量非公開になる騒動が起き(こちらは決済事業者ではなく運営自身のガイドライン運用が原因でしたが)、運営が「説明が不足していることもあり、ご心配やご不安をおかけしております」と認めて誤判定分を再公開しています。
今回も機械的な判定の粗さが指摘されている以上、同じような揺り戻しが起きる可能性はありますが、そのつど「なぜ引っかかったのか」を自分で把握できる体制を整えておくかどうかで、対応の速さは大きく変わってきそうです。

まとめ

pixivFANBOXで9月25日前後に相次いだ公開停止は、性表現だけでなく一般作品まで巻き込んだ広範なものでした。
決済事業者の基準という、クリエイター個人では制御できない要因が背景にある以上、この種の出来事は今後も形を変えて起き続けるとみたほうがよさそうです。

さらに深掘りしたい方へ

今回取り上げた出来事についてさらに詳しく知りたい方は、以下の一次情報もあわせてご覧ください。