「案件渡したところで意味ない」――インフルエンサー起用の目的は新規顧客獲得、投稿の指摘はほぼ正しかった
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10月25日昼前に投稿された一つの考察ポストが、それだけの数字を記録しました。
「そもそもインフルエンサーに案件を渡すのは、そのインフルエンサーのファンから新規ユーザーを獲得するのが目的なのであって既存ファン向けではないと言う話を何回すれば理解するんだろうか」。
投稿はそう言い切り、「ゆゆは知らん。
コイツに案件渡したところで意味ない」と続けました。
企業からPR依頼(企業がお金や商品を提供して紹介してもらう仕事)を受けたことがあるインフルエンサー本人にとっても、逆に発注する側のSNS担当者にとっても、聞き覚えのある指摘ではないでしょうか。
この記事では、「案件の目的は新規ファン獲得であって既存ファン向けではない」という主張が、実際のマーケティング業界でどこまで定説なのかを調べました。
先に結論をまとめると:
– 「新規層へのリーチ」は、インフルエンサーマーケティングの目的として業界の解説記事でも繰り返し説明されている代表的な狙いの一つ
– ただし目的は一つではなく、認知拡大・購買促進・ブランドイメージの醸成など複数が同時に設計されるのが実務の実態
– 既存ファンの満足度を高める施策は「インフルエンサー案件」ではなく、ファンマーケティングやロイヤルティプログラムという別の枠組みで語られることが多い
「コイツに案件渡したところで意味ない」投稿が記録した数字
投稿は案件の仕組みそのものについての考察で、文面からは、起用されたインフルエンサーの既存ファンがその案件に興味を示さなかった、というもどかしさがにじみます。
元の投稿は次のとおりです。
そもそもインフルエンサーに案件を渡すのは、そのインフルエンサーのファンから新規ユーザーを獲得するのが目的なのであって既存ファン向けではないと言う話を何回すれば理解するんだろうか
— VesperState (@statements666) 2026年10月25日
ゆゆは知らん。コイツに案件渡したところで意味ない https://t.co/me7o4nw7PQ
この投稿には92件のリツイートと11件の引用がついています。
ただし引用欄でどんな意見が交わされたかまでは確認できていません。
確認できたのは投稿本文と、いいね・表示回数・リツイート数という公開されている指標だけです。
この一つの投稿が示しているのは、「案件はファン向けではない」という考え方に、1,046件のいいねが入ったという事実にすぎません。
ではこの主張は、マーケティングの実務からするとどこまで的を射ているのでしょうか。
一次情報を確かめてみました。
調べて分かったこと
本当に「新規顧客獲得」が主目的なのか?
結論から言うと、投稿の指摘はマーケティング業界の説明と大きくは外れていません。
SNSマーケティング企業のホットリンクが公開している解説では、インフルエンサーマーケティングの目的として「新規顧客へのアテンションの最大化」「ブランド・商品への興味関心の醸成」「ECでの購入」「店舗来店」「SNSでの話題化」が並べて挙げられています。
ここで最初に名前が出てくるのが、まさに投稿が指摘した「新規顧客」です。
マーケティング支援会社のトライバルメディアハウスも、インフルエンサー施策の目的を解説の中で「認知の獲得」と「購入・利用意向の向上」の2つに整理しています。
同社は「売上を直接的な目的にしないこと」を強調しており、インフルエンサーを使うのは、そのフォロワーという土台に向けてブランドを初めて知ってもらう・興味を持ってもらう段階の施策だという位置づけが読み取れます。
つまり、投稿が言う「新規ユーザーの獲得」は、的外れな思いつきではなく、業界で説明に使われる言葉とほぼ重なっています。
ただし、どちらの解説も目的を一つに絞ってはいません。
「新規顧客獲得」はインフルエンサー施策の代表的な目的の一つではあっても、唯一の目的ではないというのが実際のところのようです。
認知拡大・興味関心の醸成・購買促進・話題化といった複数の狙いが、同じ案件の中に同時に組み込まれていることが多いという説明になっています。
既存ファン向けの施策は、そもそも存在しないのか?
投稿の後半部分、「既存ファン向けではない」という言い切りについても調べてみました。
ここで見えてきたのは、業界側が「既存ファン向けの施策」自体をインフルエンサー案件とは別の枠組みで扱っている、という整理です。
既存顧客の満足度や愛着を高める取り組みは、一般に「ファンマーケティング」や「ロイヤルティマーケティング」と呼ばれています。
ある解説では、ファンマーケティングには新規・ライト層向けの「ファン化」と、既存ファン向けのクローズドな「ファン育成」という2つのアプローチがあると説明されており、既存ファンへの施策はロイヤルティプログラムのようなクローズドな手法が担うとされています。
つまり、インフルエンサーに案件を渡すこと自体は新しい層への入り口を作る手段であり、既存ファンのつなぎ止めは別の手法が担当する、という役割分担が業界側にもあるようです。
この点では、投稿の「既存ファン向けではない」という整理は、おおむね業界の区分と一致していると言えそうです。
もっとも、ブランドの施策全体を見れば、新規獲得と既存ファンのエンゲージメント維持が完全に無関係というわけでもなく、両方を同時に意識して設計されるケースもあると見る向きもあります。
案件がファンに響かない――選び方のどこで食い違うのか
投稿の苛立ちの矛先は、起用されたインフルエンサー自身にも向いていました(「ゆゆは知らん。
コイツに案件渡したところで意味ない」)。
これは「このインフルエンサーの新規層獲得力が低い」という指摘とも読めます。
同じトライバルメディアハウスの解説では、企業がインフルエンサーを選ぶときに陥りやすい失敗として、フォロワー数の大きさだけで判断してしまうことを挙げています。
本来重視すべきなのは、自社がリーチしたいターゲット層と、そのインフルエンサーのフォロワー層がどれだけ一致しているかという「親和性」であり、過去のタイアップ投稿のエンゲージメント率を通常投稿と比較して効果を検証することも推奨されています。
言い換えれば、「案件を渡しても意味がない」という状況が起きるとすれば、その原因はインフルエンサー起用という手法そのものではなく、フォロワー層とブランドのターゲット層がそもそも噛み合っていない選定の問題である可能性が高いということです。
企業がインフルエンサーを選ぶ際に「誰のファンか」より「どんな属性の人が見ているか」を優先しているのは、投稿が指摘した新規獲得の狙いと矛盾しない動きと言えるでしょう。
Shiritomo編集部の考察:案件の裏側を言語化した投稿が伸びる理由
今回伸びたのは、企業の施策発表でも炎上騒動でもなく、広告の仕組みそのものを言い当てた考察でした。
普段見えない構造を一文で言語化する投稿は、拡散の仕組み上いいねが集まりやすい形をしています。
読んだ瞬間に「言われてみればそうだ」と感じさせる説明は、情報としての新規性がなくても、既に薄々感じていたことへの納得感を生むためです。
今回のケースも、PR案件に違和感を抱いたことがある人にとって、自分のモヤモヤに名前がついたような体験だったのではないでしょうか。
SNS担当者としては、こうした「なぜ響かなかったか」を説明する投稿が伸びたとき、個別の施策への不満ではなく、起用基準そのものへの関心として受け止めると、次の企画設計に活かしやすくなります。
まとめ
「案件の目的は新規ファン獲得であって既存ファン向けではない」という投稿の主張は、インフルエンサーマーケティングの解説が説明する目的ともおおむね一致していました。
ただし目的は一つではなく、既存ファンへの施策は別の手法として区別されているという業界側の整理があることも見えてきました。
さらに深掘りしたい方へ
インフルエンサーマーケティングの目的や選定基準については、以下の解説記事も参考になります。