ゲーム実況者に地上波CMを託した温泉ホテル 平戸サムソンホテル×MSSPが示すインフルエンサー活用の作法
9月1日から、長崎・佐賀・熊本・福岡・山口の5県で、あるテレビCMが順次オンエアされます。
出演するのは俳優でもモデルでもなく、ゲーム実況ユニット「M.S.S Project(MSSP)」の4人。
長崎県平戸市の温泉ホテル「サムソンホテル」が、地上波CMの主役にインフルエンサーを据えたのです。
地方の一ホテルが、なぜタレント事務所ではなく動画クリエイターに広告塔を任せたのか。
この記事では、発表直後からXで拡散した経緯と、その背景にある「5年前からの関係性」を掘り下げます。
SNS運用やインフルエンサー施策を担当している方であれば、地方企業がタイアップをどう設計し、どう「聖地化」を広告に転換したのかという流れに、自社でも応用できるヒントが見つかるはずです。
先に結論をまとめると:
– 長崎・平戸のサムソンホテルが、ゲーム実況ユニットMSSPを起用した地上波CM「温泉篇」など5パターンを9月1日から5県で放映開始
– 起用の決め手は一発企画ではなく、数年越しの動画コラボで生まれたファンとの「聖地」関係を土台にしている点
– CMの放送エリアは九州・山口の5県に限られるものの、発表直後からXでトレンド入りするなど、SNS上の反響はすでに全国区に広がっている

何が起きたのか Xで先にバズった地上波CM
事の発端は、MSSPの公式告知アカウントが投稿した1本のお知らせでした。
長崎平戸サムソンホテルの地上波CMに出演することが決まったという内容で、9月1日から長崎・佐賀・熊本・福岡・山口の5県で順次放映されると案内されています。
この投稿は3,000件を超える「いいね」を集めました。
📢お知らせ
— (公式)MSSP情報局(マジ) (@MSSP_oshirase) 2026年7月31日
なんと!
長崎平戸サムソンホテルさんの
地上波CMにM.S.S Projectが出演決定!!📺
9月1日より長崎・佐賀・熊本・福岡・山口の5県で順次放映📡https://t.co/hmcRjixWcC#MSSP#サムソンホテル#MSSPCM pic.twitter.com/KPTF8CVpEm
CMは「温泉篇」を含む5パターンが用意されており、メンバー4人がサムソンホテル名物の絶景露天風呂や新鮮な海鮮バイキングを楽しむ様子が描かれるとのことです。
ゲーム実況で知られる4人が、画面の向こうで温泉に浸かって騒いでいる姿は、ファンにとっては新鮮な組み合わせに映ったのでしょう。
発表から数時間のうちに関連ワードが日本のトレンド入りするなど、CM放映開始前からすでに話題は先行していました。
ただ、この盛り上がりだけを見ると「人気クリエイターが起用されて話題になった」という単純な話に見えてしまいます。
実際には、なぜこの組み合わせが選ばれたのか、そこにもう一段深い経緯がありました。
なぜ地方の一ホテルがゲーム実況ユニットを起用したのか?
サムソンホテルは今年、経営体制が大きく変わっています。
2026年4月1日付で、元NBC長崎放送アナウンサー・小説家の村山仁志氏が新社長に就任しました。
村山氏は親族が営むこのホテルから経営を引き継ぐよう依頼を受けていたものの、当初は固辞していたそうです。
しかしラジオのパーソナリティーツアーで何度も現地を訪れるうちに自身がホテルのファンになり、2026年3月末でアナウンサーを退社して経営に参画することを決めたと報じられています。
村山氏は就任にあたり、「伝える力」と「物語を紡ぐ力」をホテル経営に生かし、「滞在そのものが記憶に残る体験となるホテル」を目指すと述べています。
さらにホテル単体の集客にとどまらず、平戸市長に「観光宣伝隊のスピーカー役を任せてほしい」と直訴するなど、地域の観光振興そのものに軸足を置いているのが特徴です。
今回のMSSP起用も、こうした「発信力を武器にする」経営方針の延長線上にある施策と見てよさそうです。
そのうえで起用の決め手になったのが、サムソンホテルとMSSPが5年前から築いてきた関係だったとされています。
ゲーム実況・音楽ユニットとして2009年に北海道で結成されたMSSP(FB777、KIKKUN-MK-II、あろまほっと、eoheohの4人)は、ニコニコ動画への投稿から人気に火がつき、動画やライブ配信で幅広いファン層を持つグループです。
過去にサムソンホテルを訪れた動画企画が、ファンの間で「聖地」として語り継がれていたと報じられており、今回のCM起用はその積み重ねを土台にした続編と位置づけられます。
一過性のタイアップ広告ではなく、数年単位で育ててきた関係をCMという形に結晶化させたという見方ができそうです。
「聖地」化した実績は、どうやってCM起用につながったのか?
サムソンホテル公式アカウントも、今回の起用を発表後すぐに反応を見せています。
TBS NEWS DIGの取材記事「人気動画クリエイター『M.S.S Project』とのコラボで見据える、平戸『サムソンホテル』の新たな可能性」を紹介するツイートでは、CM撮影の背景やMSSPからの告知メッセージ動画も見られる旨が案内されていました。
というわけで!
— サムソンホテル【公式】 (@samsonhotel1) 2026年7月31日
サムソンホテルTVCMお願いしちゃいました!!#サムソンホテル #MSSP #MSSPCM
人気動画クリエイター「M.S.S Project」とのコラボで見据える、平戸「サムソンホテル」の新たな可能性 | TBS NEWS DIG (1ページ) https://t.co/p6nW28d8oq
さらに注目したいのは、放映開始前からすでにトレンド入りしたという報告です。
ホテルの公式アカウントは「まだCM始まってないのに日本のトレンドに乗った」と、自分たちでも驚いた様子で投稿しています。
なんと!皆さまのおかげで!
— サムソンホテル【公式】 (@samsonhotel1) 2026年7月31日
サムソンホテル
日本のトレンドに乗りました!!!
まだCM始まってないのに!!!!
ありがとうございます!!!!
ソウルメイト凄い!#MSSP #サムソンホテル #MSSPCM pic.twitter.com/Y5hU6soJNP
ホテル側自身が驚いているこの投稿からも分かるように、CMという「地上波・5県限定」の施策であっても、告知そのものがXで全国的に拡散する構造になっていました。
地方局のみで放送されるCMの認知が、放送エリア外にも届いている状態です。
これは、インフルエンサーのファンコミュニティが地理的な制約を越えて拡散のエンジンになっているためと考えられます。
ただし、これが実際の宿泊予約や来訪数の増加にどこまで結びついたかは、現時点で公表された数字がなく未確認です。
Shiritomo編集部の考察:関係性の「積み立て」がCM化の伏線になる
今回の事例で興味深いのは、CM化そのものよりも、その手前にある「5年間の関係構築」です。
単発のPR案件でクリエイターを起用しても、フォロワーの反応は一過性で終わりやすいものです。
一方でサムソンホテルは、過去の動画コラボがファンの間で自然に「聖地」として定着するのを待ち、その資産が育ってから広告に転用しました。
SNS運用の現場に置き換えると、「バズらせるための単発起用」ではなく「関係を積み立てた先に企画を置く」設計の方が、拡散後の熱量が長持ちする傾向があります。
地方企業がインフルエンサー施策を検討する際は、初回の露出量よりも、継続的な接点をどう作るかを先に考える価値がありそうです。
まとめ
平戸のサムソンホテルは、新社長の就任という節目に、過去の動画コラボで培ったMSSPとの関係を地上波CMという形で再活用しました。
放送エリアが5県に限られていても、SNS上の反響はすでにそれを超えて広がっており、地方発の施策がXを介して全国に届く様子を見せてくれた事例といえそうです。