「本当に、本当に大きな助けになっています」——資本のつながりはゼロなのに、カプコンが神谷英樹の新スタジオを支え続ける理由
「大神にハマりまくって、こんな素晴らしいゲームのキャラクターを自分の手で作りたいと決心してMayaを学んでいた過去がありまして」。
コスプレイヤーの伊織もえさんがXに投稿したこの告白に、2,000件を超えるいいねが集まりました。
3DCGソフト「Maya」をわざわざ学ぶほど、彼女を夢中にさせたゲーム『大神』。
その完全新作プロジェクトが今、ゲーム業界のちょっと変わった構造を浮き彫りにしています。
ゲーム開発の現場や会社の仕組みに興味がある方なら、この話は「大手パブリッシャーとスタジオの関係」を考え直すきっかけになるはずです。
先に結論をまとめると:
– 『大神』完全新作を作る新スタジオ「クローバーズ」に、カプコンの資本は一切入っていない
– それでもカプコンはエンジン提供や他スタジオとの協業サポートで「本当に大きな助け」を出している
– 率いる神谷英樹氏は、この新作の成功を「カプコンへの恩返し」と位置づけている
Xで盛り上がっているのは、なつかしさだけじゃない
『大神 完全新作』は2024年12月のThe Game Awardsで発表されました。
発表から1年近く経った今もX上では、往年のファンが当時の思い出を語る投稿が途切れません。
伊織もえさんのように「このゲームがきっかけで進路を考えた」というレベルの熱量を持つファンがいることは、この作品がただの続編以上の意味を持っていたことを物語っています。
伊織もえには、大神にハマりまくって、こんな素晴らしいゲームのキャラクターを自分の手で作りたいと決心してMayaを学んでいた過去がありまして
— 伊織もえ (@iorimoe_five) 2026年9月6日
大神 完全新作、それは私の人生のビッグイベントの一つ… https://t.co/q1uw3jNO1k
ただ、Xで交わされているのは懐古だけではありません。
「なぜ神谷英樹氏の新会社が、カプコンの看板タイトルを任されているのか」という、開発体制そのものへの関心も広がっています。
そこで一次情報を確認してみました。
調べて分かったこと
クローバーズとはどんな会社なのか?
クローバーズ株式会社は、『ベヨネッタ』や『デビルメイクライ』のディレクターとして知られる神谷英樹氏が、2023年10月にプラチナゲームズを退社した後に立ち上げた新スタジオです。
2024年12月13日のThe Game Awardsで、神谷氏がディレクターを務める『大神』完全新作プロジェクトの始動が発表され、同時にクローバーズの設立も明かされました。
開発は、クローバーズに加えて『大神』制作スタッフが多数在籍するエムツーと、マシンヘッドワークスの3社共同で進められています(ファミ通、gamebizなど複数メディアが報道)。
資本関係がないのに、なぜここまで支援を受けられるのか?
海外メディアVGCのインタビューで、神谷氏は「クローバーズはカプコンの資本が入っているわけではありません。
これは私たち自身の会社であり、その点においてはカプコンとの資本的なつながりは一切ありません」と明言しています。
つまりクローバーズは独立経営の会社です。
それにもかかわらず、神谷氏はカプコンからの支援について「本当に、本当に大きな助けになっています」と語っています。
具体的には、自社の開発エンジン提供や、エムツー・マシンヘッドワークスとの協業を後押しする体制面のサポートが挙げられています。
X上で広がる「細かい進捗報告なしに自由に開発を任されている」というニュアンスの話については、複数の報道でも「信頼関係」「作家性を大事にする」という表現で触れられていますが、具体的な報告頻度までを明言した一次発言は確認できませんでした。
この点は「関係者の受け止め」として広がっている情報だと理解しておくのが正確そうです。
なぜ神谷氏は「恩返し」という言葉を使うのか?
神谷氏はインタビューで、この新作を成功させてカプコンとの関係を良好に築ければ、今後新しいオリジナルIPや、カプコンの別IPを手がける可能性もあると述べています。
プラチナゲームズ退社の経緯や、業界全体で大手スタジオのレイオフが相次いだ状況を踏まえてか、「何としてでもこの場所を死守しなければならない」というスタジオを守る責任感も語られました。
Shiritomo GAME編集部の考察
大手パブリッシャーと独立系スタジオの関係というと、「下請け」か「完全子会社」かの二択で語られがちです。
しかしクローバーズの事例は、資本を入れずに信頼だけで大型IPを任せるという、第三の選択肢を示しています。
カプコンにとっては、看板IPの版権リスクを抱えずに開発力を確保できる利点があり、クローバーズ側は経営の独立性を保ったまま安定した開発環境を得られます。
これは近年、大手スタジオのレイオフが相次いだ業界において、クリエイターが自分の裁量を守りながら生き残るための、一つのモデルケースになり得ます。
今後、他の著名ディレクターが同様の形で独立し、大手パブリッシャーと組む動きが増えるかどうかは注目に値するでしょう。
成功すれば「資本なき信頼」という開発体制そのものが、この作品のもう一つの見どころになりそうです。
まとめ
『大神 完全新作』は、往年のファンの熱量だけでなく、資本を介さずに大型IPを任せるという開発体制そのものが話題を呼んでいます。
神谷英樹氏とカプコンの関係が今後どう発展していくか、ゲーム内容とあわせて注視したいところです。