「デジタル化を阻む条文を87箇所抽出してみたよ」──安野貴博氏、AIで法律を”全文スキャン”した話
96,780条。
これが日本の法律全体に存在する条文の総数です。
参議院議員の安野貴博氏は、この条文すべてをAIに読み込ませ、デジタル化の妨げになっている規定を87箇所探し出しました。
フロッピーディスクでの提出を求める規定や、対面でのやり取りを前提にした手続きなど、更新されないまま残っていた条文が次々と見つかったといいます。
AI活用や行政のデジタル化に関心がある人にとっては、法律そのものをソフトウェアのように点検するという発想が、今後の制度設計にどう影響するか気になるところです。
先に結論をまとめると:
– 安野貴博氏がAIツール「Fable5」を使い、e-Govが公開する法律96,780条を全文スキャンした
– デジタル化を阻む条文を87件の改正候補として抽出した
– 行政手続法の行政指導規定や戸籍法の口頭届出規定など、具体的な条文名まで挙げている
法律を”全文スキャン”したとは、何をしたのか
安野氏は10月4日、自身のXアカウントでこの取り組みを紹介しました。
ある投稿では「Claude Codeのultracodeで法律を全スキャンしてデジタル化を阻む条文を87箇所抽出してみたよ」と書かれており、詳細をまとめたnote記事へのリンクも添えられています。
AIで法律をリファクタリングする: Fableで改正候補条文を抽出 / 立法における"Mythos Moment"を考える|安野貴博 @takahiroanno https://t.co/G2pbhHp5mJ
— 安野貴博@チームみらい (@takahiroanno) 2026年10月4日
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Claude Codeのultracodeで法律を全スキャンしてデジタル化を阻む条文を87箇所抽出してみたよ、という話を書きました。
この投稿には10月5日時点で1,546件のいいねと109件の引用が集まっています。
ただ、投稿の文面だけでは「どうやって87箇所を見つけたのか」までは分かりません。
そこでリンク先のnote記事を確認してみました。
調べて分かったこと
どうやって87箇所を見つけたのか
note記事によると、安野氏はAIツール「Fable5」を使い、e-Govが公開する現行法律のXMLデータ全体(条文数96,780条)を読み込ませたうえで、Claude Codeを「ultracode」という長時間稼働モードで数時間動かして検証したと説明しています。
対象は特定の分野に絞らず法律全体で、その結果として87件の改正候補が抽出されたとのことです。
人の目で全法律を読み通すのは現実的ではない作業量ですが、AIに全文を渡すことで網羅的なチェックが可能になった形です。
具体的にどんな条文が見つかったのか
note記事では、抽出された改正候補の例として次のような条文が紹介されています。
- 行政手続法:行政指導の内容を書面で交付する規定に、電磁的方法による提供を認める案
- 戸籍法:口頭での届出に、映像および音声の送受信によるオンライン対応を加える案
- 道路運送車両法:物理的な「封印」に代えて、電磁的方法による照合を認める案
いずれも、対面や紙・物理的な手続きを前提にしたまま残っていた規定です。
デジタル技術があっても、条文がそれを想定していないために使えない、というケースが多く見つかったことになります。
「Mythos Moment」とは何を指しているのか
投稿のタイトルにもある「Mythos Moment」について、note記事はAIがソフトウェアの脆弱性を大量に発見した出来事になぞらえて説明しています。
セキュリティの世界でAIによる網羅的なチェックが転換点になったのと同じように、法律の分野でも同様の爆発的な改正需要が生まれるのではないか、という予想です。
note記事では今後の課題として、未施行の改正内容が反映しきれていない点や、実際に条文を直す省庁・国会側の処理能力がボトルネックになりうる点も挙げられています。
見つけたあと、どう改正につなげるのか
note記事では、87件の候補を見つけたあとの進め方にも触れられています。
安野氏が提案しているのは、デジタル化対応のルールを個別の法律ごとにばらばらに直すのではなく、韓国の「行政基本法」のような共通ルールとしてまとめる方法です。
関連する条文をまとめて見直す「一括改正法」の形で処理する案になります。
条文を見つける作業はAIで効率化できても、実際に条文を書き換えて国会を通すのは従来どおり人の手に委ねられています。
各省庁・国会側の処理能力がボトルネックになりうる、という課題も合わせて挙げられています。
Shiritomo編集部の考察:現場のルールも同じ発想で棚卸しできる
国会議員本人がコードを書いて検証した、という点がこの事例の特徴です。
立法の現場でAIを使うというと政策論の話になりがちですが、今回はまず「条文を読み込ませて矛盾や古さを洗い出す」という地味な作業から始まっています。
これは企業の社内規程や業務マニュアルにも応用できる発想です。
長年更新されずに残っているルールは、法律に限らずどの組織にもあります。
AIに全文を読み込ませて「今の実務と合っていない箇所」を洗い出す使い方は、立法に限らず試せる範囲が広いはずです。
一方で、見つけた候補をどう修正につなげるかという”運用側”の負荷は、AIでは代替しにくい部分として残ります。
AIが得意なのは「大量の文書から該当箇所を網羅的に洗い出す」工程までで、優先順位をつけて実際に直すかどうかを判断する工程は、依然として人の仕事として残りそうです。
まとめ
AIに法律96,780条を読み込ませたところ、デジタル化を阻む条文が87箇所見つかりました。
見つけること自体はAIで効率化できても、実際に条文を直す工程は人の手に委ねられている、という現状も見えてきます。
さらに深掘りしたい方へ
取り組みの詳細は、安野貴博氏本人が公開しているnote記事でも確認できます。

