サムスン電子が最高益を更新、でもスマホは生産30%減――メモリ高騰が生んだ光と影
107兆4,000億ウォン。
サムスン電子が10月8日に発表した2026年7〜9月期(第3四半期)の営業利益です。
四半期としては世界のテック企業で初めて100兆ウォンを超えました。
その同じ会社が、同じ四半期にスマートフォンの生産量を最大30%も減らす方針を決めています。
稼ぎ頭と不調部門が、ひとつの決算書の中に同居している格好です。
ガジェット好きの読者にとっては、手元のGalaxyやPixelの値上げがなぜ止まらないのか、その裏側を知る手がかりになる話でもあります。
先に結論をまとめると:
– サムスン電子の2026年7〜9月期は売上高195兆ウォン・営業利益107兆4,000億ウォンで、ともに過去最高を更新しました
– 好業績の主因はAIデータセンター向けのHBM(高帯域幅メモリ)やDRAM・NANDの価格上昇で、半導体部門が全体を牽引しています
– 一方でスマホを扱うMX部門はメモリ部品の調達コスト増に直面し、2026年10〜12月期の生産を最大30%削減する方針です
何が起きたのか
サムスン電子は10月8日、2026年第3四半期の連結業績(暫定値)を発表しました。
売上高は約195兆ウォン、営業利益は約107兆4,000億ウォンで、前年同期の12兆1,700億ウォンから8.8倍近くに膨らんでいます。
営業利益率は55%前後に達し、4四半期連続で過去最高を更新したことになります。
牽引役は半導体を扱うDS(デバイスソリューション)部門です。
メモリー分野の売上高は四半期ベースで過去最高となり、半導体事業全体に占める割合は80.7%(前四半期から4.7ポイント上昇)に達しました。
背景にあるのは、AI向けサーバーで使われるHBM(High Bandwidth Memory:AIの演算処理に欠かせない高速・大容量のメモリ規格)の需要拡大と、それに連動したDRAM(パソコンやスマホの作業用メモリ)・NAND(データを保存するフラッシュメモリ)の価格上昇です。
サムスン電子はエヌビディア向けHBMの主要サプライヤーの一社でもあり、AIブームの恩恵を最も受けている企業のひとつといえます。
ただ、この数字だけを見ていると「絶好調の1年」で終わってしまいます。
実はこの好業績を生んでいるメモリ価格の上昇が、同じ会社の別の事業を圧迫しているという、もう一つの顔があります。
そこで部門ごとの中身を確かめてみました。
調べて分かったこと
なぜメモリ事業だけがこれほど稼げるのか?
サムスン電子は部門別の詳細な損益を10月29日の本決算で発表する予定で、7〜9月期のDS部門の利益額はまだ公表されていません。
ただ、直前の2026年4〜6月期(確定決算)では、DS部門の営業利益はすでに89兆2,000億ウォンに達していました。
AI投資が旺盛な数年は、サーバー向けのDRAM・NANDとも品薄が続き、価格が需要に追いつかれないまま上昇を続けています。
この流れは一過性の特需ではなく、AIデータセンターの建設計画が続く限り数年単位で続くとみる向きが業界内では多数です。
好決算のサムスンが、なぜスマホ生産を減らすのか?
答えは単純で、スマホの原価そのものがメモリ高騰の直撃を受けているからです。
MX(Mobile eXperience:サムスンのスマートフォン事業部門)は、2026年4〜6月期に通信事業と合算で約7,000億ウォンの営業赤字を計上し、これはMX事業として初めての赤字だったと報じられています。
複数の海外メディアによれば、7〜9月期についても1兆〜3兆ウォン規模の営業赤字になったとの見方があり、原因としてスマホ向けのLPDDR5X(スマホ向け省電力DRAMの最新規格)の調達価格が2026年上半期だけで前年平均比211%上昇した一方、スマホの平均販売価格の上昇は7%程度にとどまったことが指摘されています。
部品コストの上昇をそのまま値上げで吸収できず、売れば売るほど利益が薄くなる構造に陥っていたわけです。
この結果、MX部門は協力会社に対し部品の納入量を20〜30%減らすよう要請したと伝えられ、10〜12月期の生産を最大30%削減する方針が明らかになりました。
ある報道では、2026年通期の出荷目標は当初の2億4,000万台前後から、2億3,000万台強へ下方修正されたとも伝えられています。
折りたたみの新モデルなど話題性のある製品は売れていても、台数全体を絞って利益を守る方向にかじを切った格好です。
スマホが高すぎると感じるのは気のせいではない?
サムスンに限った話ではありません。
メモリ価格の上昇はスマホメーカー全体の共通コストで、他社でも価格転嫁の動きが相次いでいます。
実際、Xiaomiは2026年9月に新モデルの値上げに踏み切り、Pixel 10aも最大1万2,900円の値上げが明らかになるなど、ミドルレンジ帯の価格上昇はすでに複数メーカーで表面化しています。
パソコン向けのDDR5メモリも1年で価格が4倍超に膨らんだとの報道があり、スマホだけでなく自作PC市場でも同じ波が先に起きていました。
最近のスマホは高すぎると感じるとしたら、その感覚はメモリという共通部品の値上がりに根があると考えると筋が通ります。
値下がりの時期を見通せる材料は今のところ乏しく、しばらくはこの状況が続くとみておいたほうがよさそうです。
Shiritomo GADGET編集部の考察:メモリの値段が、次に買うスマホの値段を決める
サムスン電子の今回の決算で興味深いのは、同じ会社の中に「メモリの売り手」と「スマホの作り手」が同居している点です。
他社のスマホメーカーはメモリ高騰を外部コストとして受け止めるしかありませんが、サムスンは自社のメモリ事業が儲かるほど、自社のスマホ事業の原価も上がるという、いわば自己矛盾を抱えた構造になっています。
それでも生産を絞ってでも利益を守る判断をしたということは、値上げだけでは吸収しきれないほどコストが跳ね上がっていることの裏返しとも読めます。
ガジェットを選ぶ側としては、今後数ヶ月はミドルレンジ機を中心に「スペックそのまま値上げ」よりも「台数を絞って値引きをしない」方向の動きが増えると見ておくのが現実的です。
型落ちモデルやセール品を狙うなら、今のうちに動いておく価値がありそうです。
まとめ
サムスン電子はAI向けメモリの需要に支えられて過去最高益を更新した一方、同じメモリ高騰がスマホ事業の採算を圧迫し、生産量そのものを減らす判断に至りました。
ひとつの決算の中に、AIブームの恩恵と負担が同時に表れた形です。
さらに深掘りしたい方へ
今回の決算の全体像は、サムスン電子の公式発表にも目を通しておくと理解が深まります。
サムスン電子 2026年第3四半期 連結決算暫定値(Samsung Newsroom)
サムスン電子、第3四半期営業益107兆4000億ウォン…前年比782.5%増(朝鮮日報日本語版)


