Instagramは若い女性、Xは独身男性、という笑い話は数字でどこまで本当なのか
テレビ番組の画面に、SNSごとの「バズる傾向」をまとめた一枚の図が映りました。
Instagramの欄には「若い女性」、Xの欄には「独身男性」。
ただそれだけの分類が、放送直後からXのタイムラインを軽いジョークで埋め尽くしていきます。
SNS運用やマーケティングに関わる人にとって、これは笑って流すだけの話では終わりません。
プラットフォームごとの「らしさ」がどこまで実態に沿っているのか、放送を機に公的な調査データで確かめてみました。
先に結論をまとめると:
– 「男性はX、女性はInstagram」という方向性自体は複数の調査で裏付けが取れます(男性はXがInstagramより12ポイント高く、女性はInstagramがXより6ポイント高いとする調査があります)
– ただし全年代の利用率そのものはInstagramの方が高いとする総務省調査もあり、「Xは独身男性向け」と単純化するのは実態とずれます
– 「独身男性はXを好む」という関連性を示す試算も存在しますが、これは相関の分析であり、Xを使うから独身になる・独身だからXを使う、という因果関係ではありません
「独身男性のみなさんごきげんよう」が連鎖したきっかけ
話の発端は、ある番組で紹介されたSNS利用者像の分類図でした。
Instagramは若い女性に人気、Xは独身男性に人気、という区分けが画面に映った瞬間、Xでは自嘲まじりのジョークが一気に広がります。
よく見かけたのが「独身男性のみなさんごきげんよう」という一言を引用リツイート形式で連鎖させる流れです。

そこに「Xは年寄りの女が好むもの」というひねりを加える人が現れたり、女性や既婚者までもが「私も独身男性だった」と乗っかったりと、分類そのものをネタにして遊ぶ空気が広がっていきました。
一方で「これを機にInstagramに移ろう」と呼びかける投稿も見られ、単なる自虐で終わらない反応の幅広さも感じさせます。
過去の調査でも男性のX利用率が女性より高い傾向は繰り返し確認されており、今回の盛り上がりは完全な作り話というより「よく言われる傾向」を極端にデフォルメしたジョークだったと言えそうです。
ただ、この分類、実際のデータではどこまで裏付けられるのでしょうか。
一次情報で確認してみました。
調べて分かったこと
本当に「男性はX、女性はInstagram」なのか?
NTTドコモ モバイル社会研究所が2025年に実施した全国15〜79歳・6,962人を対象にした調査によると、男性はXの利用率がInstagramより12ポイント高く、女性はInstagramの利用率がXより6ポイント高いという結果が出ています。
同時期のICT総研の調査でも、ネットユーザー全体の利用率はX(旧Twitter)が55.9%、Instagramが54.5%とほぼ拮抗しており、その内訳で男女差が分かれているという構図のようです。
一方で、総務省が公表した令和6年度「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」では、全年代の利用率はInstagramが52.6%、Xが43.3%と、Instagramの方が高い数字になっています。
つまり「全体としてはInstagramの方が使われている」というのが実態で、Xが「独身男性だけのもの」というのは、あくまで男女比で見たときの傾向を切り取った話ということになりそうです。
利用目的にも違いが出ています。
モバイル社会研究所の調査では、Xについて男性は「ニュース情報の収集」や「世間で話題のモノ・コトを把握する」目的での利用が強く、特に30〜50代でその傾向が高いとされています。
対してInstagramは、女性の「有名人・知人の動向把握」目的の利用がおよそ3割を占め、人の動きを追う使い方が目立つようです。
つまり両者は単に「男性向け・女性向け」というより、「情報を追う場」と「人を追う場」という機能面の違いが、結果として性別の偏りにつながっている可能性があります。
「独身男性はXを好む」という話に根拠はあるか?
番組の分類がとくに刺さったのは「独身男性」という表現でした。
これについては、こども家庭庁が2024年度に実施した「若者のライフデザインや出会いに関する意識調査」を基にした民間メディアの独自試算があります。
それによると、25〜34歳のX利用者の未婚率は男性で66.8%、Instagram利用者の未婚率は男性で56.1%と、Xの方がおよそ10ポイント高くなっています。
女性でもX利用者が62.1%、Instagram利用者が53.5%と、同様の傾向が見られたとされています。
ただし、この数字はあくまで既存の公的統計を掛け合わせた民間側の試算であり、公式調査そのものが「独身男性はXを好む」と結論づけているわけではありません。
Xを使っているから独身なのか、独身だからXを使うのかは、この数字だけでは判断できず、あくまで「相関が見られる」という段階の話として受け止める必要がありそうです。
なぜこうしたイメージが定着したのか?
背景として考えられるのは、プラットフォームごとの発信文化の違いです。
Xはリアルタイム性が高く実名性も薄いため、趣味や社会的な話題について気軽に発言しやすい場として使われてきたと言われています。
一方Instagramは写真・動画中心のビジュアル訴求が軸で、友人・知人とのつながりやライフスタイルの発信に使われる場面が多いとされます。
こうした使い方の違いが積み重なった結果、「Xは一人で情報を追う人向け」「Instagramは人とのつながりを見せる人向け」というイメージが浸透し、それが今回のような分類図としてテレビでも取り上げられたのではないでしょうか。
Shiritomo編集部の考察:ターゲティングは「性別」より「目的」で組み直す
今回の一件は笑い話として消費されましたが、SNS運用担当者にとっては示唆に富む話でもあります。
実務でありがちなのは「Instagramは女性向けだから」「Xは男性向けだから」と、性別だけで配信先を決めてしまうことです。
しかし今回確認した調査結果を見る限り、両プラットフォームの差を生んでいるのは性別そのものというより「情報を追いたいのか」「人とのつながりを見せたいのか」という利用目的の違いでした。
たとえば同じ商品訴求でも、Xでは「話題性・ニュース性」を前面に出した投稿の方が伸びやすく、Instagramでは「誰が使っているか」「どんな暮らしに馴染むか」を見せる投稿の方が反応を得やすい、という切り分けが成立します。
性別・年代の属性データだけに頼らず、各プラットフォームの利用目的データを掛け合わせてコンテンツを設計することが、今回のような分類図を鵜呑みにするより確度の高いターゲティングにつながりそうです。
まとめ
「Instagramは若い女性、Xは独身男性」という分類は、方向性としては複数の調査に裏付けがある一方、独身かどうかまで断定できるほど単純な話ではありませんでした。
数字の背景にある「利用目的の違い」まで踏み込んで見ておくと、テレビの一枚の図をそのままターゲティングに使うよりも、実務に生かしやすい示唆が得られそうです。