「夢を追いかけるバンドマンの9割を焼き払う」——ドラマー整体師が投げた危険な記事の中身
「夢を追いかけるバンドマンの9割を焼き払ってしまうかもしれない危険な記事を書きました。
たぶん炎上すると思います」。
8月中旬、そんな一文とともにXに投稿されたリンクが、音楽好きの間で静かに広まりました。
投稿主はドラマー専門整体師を名乗るアカウント。
バンド活動に限らず、個人で発信・集客をしているすべての人に関わる話です。
先に結論をまとめると:
– 元プロドラマーの整体師が「バンドマンのためのマーケティング理論」というnote記事を公開し、ライブハウスのノルマ制度への依存を批判した
– チケットノルマは1枚1,500〜2,500円ほどを10〜20枚単位で仕入れ、売れ残りは自腹という仕組み
– 「作りたいものを作る」から「求められるものを作る」への発想転換と、SNSでの事前集客づくりを提案している

「危険な記事」と自ら予告した投稿
投稿の主は、note上に「バンドマンのためのマーケティング理論(基礎編)」という記事を公開したアカウント「@wave4drummers」です。
プロフィールによると、かつてプロドラマーとして活動し、現在は解剖学・神経学の観点からドラム演奏を研究する整体師として活動しています。
夢を追いかけるバンドマンの9割を焼き払ってしまうかもしれない危険な記事を書きました。
— ドラマー専門整体師 原浩之 (@wave4drummers) 2026年8月13日
たぶん炎上すると思います。
バンドマンのためのマーケティング理論(基礎編)|ドラマー専門整体師のドラム科学研究所 @wave4drummers https://t.co/RexXvCQIOz
この投稿自体が「炎上すると思います」と自己申告している通り、内容はインディーズシーンの慣習に真っ向から切り込むものでした。
記事では、ライブハウスのノルマ制度に頼った集客のあり方を「都合の良いカモ」と呼び、バンド運営をビジネスとして考え直すべきだと訴えています。
反応は賛否が分かれたようで、マーケティングの実践に同意する声がある一方、旧来のやり方だと捉える批判的な見方も見られました。
整体師という異業種の肩書きを持つ発信者が、ドラム演奏を解剖学・神経学の視点で語ってきた延長線上で、今度はビジネスの視点からバンド活動を語ったこと自体が、普段は音楽の話題だけを追っているフォロワー層にとって意外性があったとも考えられます。
ノルマ制度は、実際どういう仕組みなのか?
記事が問題視している「ノルマ制度」とは何なのでしょうか。
ライブハウスの一般的な仕組みを調べてみました。
出演者はあらかじめ1枚1,500〜2,500円ほどのチケットを、10〜20枚単位で会場から買い取ります。
集客できなかった分は自己負担、指定枚数を超えた分だけがバック(還元)される構造です。
単純計算でも、1公演あたり最低1万5000円〜5万円程度を出演者側が背負う可能性がある仕組みです。
記事が「都合の良いカモ」という強い言葉を使った背景には、こうした固定費に近いリスクが常に演者側にのしかかる構造への問題意識があると考えられます。
プロダクトアウトとマーケットイン、どちらが正解なのか?
記事のもう一つの柱が「プロダクトアウト」と「マーケットイン」という対比です。
プロダクトアウトは「自分たちが作りたい音楽を作る」という発想、マーケットインは「聴き手が求めているものを起点にする」という発想を指します。
記事はどちらか一方が正しいとは主張しておらず、両者の「折り合い」が必要だとしています。
そのうえで、ライブハウスに客集めを他バンドや箱側に依存するのではなく、配信やSNSで先に自分たちのファンをつくり、楽曲制作の依頼など複数の収入源を持つことを勧めている点が、単なる精神論と一線を画しています。
Shiritomo編集部の考察:バンド以外にも刺さる理由
この記事がバンドマン以外の層にも広がったのは、指摘されている問題が音楽業界特有のものではないからでしょう。
「箱を借りてから客を呼ぶ」のではなく「先に集客を作ってから箱を借りる」という発想は、個人で商品や作品を売るすべての人に共通する話です。
SNSでファンを可視化してから初期費用の大きい場に出る、という順番の入れ替えは、ハンドメイド作家や個人事業主の情報発信にもそのまま応用できます。
賛否が分かれた点にも学びがあります。
「昭和のステレオタイプ」という批判は、ノルマ制度そのものへの反発というより、それを乗り越える手段を持つ人と持たない人の格差を指摘しているように見えます。
SNSでの発信力が集客手段の代替になる時代だからこそ、発信力の差がそのまま経済的なリスクの差に直結してしまう、という新しい構造が生まれつつあるのかもしれません。
もう一つ興味深いのは、記事の主張が「ノルマ制度をなくせ」という単純な話にとどまっていない点です。
制度そのものを批判しながらも、複数の収入源を持つこと、楽曲制作の依頼を受けることなど、リスクを分散させる具体的な手段まで踏み込んでいます。
SNS運用の文脈に置き換えるなら、フォロワー数という単一指標だけを追うのではなく、フォロワーを起点にした収益の出口を複数用意しておく発想に近いといえるでしょう。
まとめ
「バンドマンのためのマーケティング理論」は、ノルマ制度という業界の慣習を正面から批判しつつ、箱を借りてから客を呼ぶのではなく、先にSNSで集客を作ってから場を選ぶという発想の転換を提案するものでした。
バンド活動に限らず、個人で発信し集客する立場の人にとって、参考になる視点といえそうです。