「Geminiの凋落」とまで酷評される中、3.7 Flashにだけ開発者から歓迎の声が上がった理由
「フロンティアモデルとしてのGeminiの凋落は、もはや目新しい指摘ではないほど当たり前になった」。
ペンシルベニア大学の研究者イーサン・モーリック氏が8月6日、Xにこう投稿しました。
GoogleのAI「Gemini」への評価が、ここ数カ月でじわじわと下がり続けています。
AIを日常的に使う人にとって、「今どのモデルを軸に据えるべきか」は無視できない問題です。
この記事では、Geminiへの厳しい声の中身と、8月13日発表の新モデル「Gemini 3.7 Flash」への反応を調べてみました。
先に結論をまとめると:
– X上ではGeminiがGPTやClaudeなど競合モデルに見劣りするという指摘が相次ぎ、Googleの体制刷新にもつながっている
– 8月13日発表の「Gemini 3.7 Flash」はコーディング系ベンチマークが大きく伸び、価格も従来の半額に据え置かれた
– 開発者の間ではこのモデルを評価する声が広がっており、Geminiの巻き返しの兆しとして注目されている
Xで相次ぐ「Geminiは劣る」という声
Geminiに対する厳しい評価は、単発の愚痴では済まない広がりを見せています。
「もう新しい指摘ではない」という言い方が出てくること自体、この評価がしばらく前から定着していたことを物語っています。
モーリック氏は続けて、Googleは企業向け顧客を多く抱えている以上、性能面で見劣りする状態が続くこと自体がリスクだ、という趣旨の指摘もしていました(原文要旨:法人顧客がGeminiに囲い込まれているぶん、型落ちのGemini 3.1 Proへ押し戻されている状況こそが問題だ、という内容)。
It is not a novel observation at this point, but the collapse of Google’s Gemini as a frontier model series is still astonishing. Unlike Meta & SpaceX, Google has captive Gemini customers at an enterprise level, so the fact that they are pushed towards Gemini 3.1 Pro is a problem
— Ethan Mollick (@emollick) 2026年8月6日
こうした声の背景には、コーディング(プログラムを書く作業)用途での比較評価があります。
GeminiはGPT系やClaude系、Grok系の最新モデルと比べてコーディング面で後れを取っている、という見方がX上で広がっています。
一方で、コンピュータ操作や画像認識の分野ではGeminiが優位という分析もあり、単純な優劣ではなく用途による差だとする声もありました。
ただ、こうした声だけでは「実際どれくらいの差なのか」「Google側はどう動いているのか」までは分かりません。
そこで一次情報を確かめてみました。
調べて分かったこと
なぜGeminiは「劣る」と言われるようになったのか?
背景には、Google側の体制の動きがあります。
8月5日、Google DeepMind(GoogleのAI研究開発部門)はトップ人事を刷新しました。
CEOだったデミス・ハサビス氏はAlphabet(Googleの持株会社)のチーフサイエンティスト(研究開発面のトップを務める役職)へ異動し、長年その職にあったジェフ・ディーン氏も退社しています。
この発表を受けてGoogleの株価は一時最大6%下落したと報じられており、投資家の間でもGeminiの競争力への懸念が意識されていることがうかがえます。
次期主力モデル「Gemini 3.5 Pro」のリリースが繰り返し延期されているとの報道もあり、今回の人事刷新にはそうした遅れを立て直す狙いがあるとみられています。
Gemini 3.7 Flashは何がどう変わったのか?
そんな中、8月13日(日本時間14日)にGoogleが発表したのが「Gemini 3.7 Flash」です。
前モデル「Gemini 3.6 Flash」からわずか3週間というハイペースでの投入で、Google自身は「コーディングとエージェント(AIが複数の作業を自律的にこなす仕組み)向けとして、これまでで最も高性能なワークホースモデル」と位置づけています。
具体的な数字を見ると、コーディング能力を測るベンチマーク「DeepSWE」は49.0%から65.3%へ、複雑な作業の自動処理を測る「AutomationBench」は17.0%から30.4%へ、Web開発力を示す「WebDev Arena」のレーティングは1538から1588へと、いずれも明確な伸びを示しています。
価格面でも動きがありました。
Gemini 3.6 Flashが発表時に付けていた価格(入力100万トークンあたり1.50ドル、出力100万トークンあたり7.50ドル)に対し、3.7 Flashは2026年12月31日までの期間限定で、入力0.75ドル・出力3.75ドルというちょうど半額の導入価格を設定しています(2027年1月以降は両モデルとも同じ標準価格に統一される予定です)。
こうしたベンチマーク改善と価格据え置きの組み合わせを受けて、開発者コミュニティでは前向きな反応が見られました(原文要旨:Gemini 3.7 Flashが正式リリース、3.6からの伸びは意外なほどしっかりしている。
FrontierCodeは34.4%→43.6%、DeepSWEは49.0%→65.3%、AutomationBenchは17.0%→30.4%、WebDev Arenaは1538→1588 Eloという内容)。
Gemini 3.7 Flash official released. Surprisingly solid jump over 3.6!
— Chubby♨️ (@kimmonismus) 2026年8月13日
FrontierCode: 43.6% vs. 34.4%
DeepSWE: 65.3% vs. 49.0%
AutomationBench: 30.4% vs. 17.0%
WebDev Arena: 1588 vs. 1538 Elo
The model is designed to plan more carefully, handle tool calls more reliably and… https://t.co/Mz8OE2aiRF pic.twitter.com/Dq5YjK5tjO
開発者の反応は実際どうなのか?
Google公式の発表投稿には、「開発者からのフィードバックとアルゴリズム面の工夫を反映した」とのコメントが添えられていました。
3週間という短いサイクルでの改善が、実際の指摘に基づくものだと強調する狙いがあるようです。
もっとも、性能が上がったからといって、Gemini全体への評価が一気に好転したわけではなさそうです。
コーディング分野での遅れそのものを認めた上で、コンピュータ操作や視覚関連タスクでは依然としてGeminiに一定の強みがあるとする見立ても、X上には併存しています。
今回の3.7 Flashへの好意的な反応は、Gemini全体への評価というより「短期間でここまで改善してきたこと」自体への評価という側面が強そうです。
Shiritomo編集部の考察:AIツールを選ぶ基準は「今の実力」より「改善速度」で見る
ここまでの流れで気になるのは、Geminiへの評価が「性能そのもの」と「改善のペース」で分かれて語られている点です。
3.6 Flashから3.7 Flashまでわずか3週間という間隔は、他の大手AI企業と比べても速い部類に入ります。
SNS運用やコンテンツ制作でAIツールを使い分ける立場からすると、「今どのモデルが一番強いか」よりも「どのモデルが一番速く改善しているか」を見ておいた方が、乗り換えのタイミングを逃しにくいのではないでしょうか。
特にコーディングやエージェント用途は数週間単位でランキングが入れ替わりやすい領域なので、ベンチマークの絶対値だけでなく、直近数カ月の伸び幅を定点観測しておく価値がありそうです。
あわせて、価格が一時的な導入価格なのか標準価格なのかを都度確認しておくことも、コストを見誤らないためのポイントになります。
まとめ
Geminiへの厳しい評価がX上で目立つ一方、8月13日発表の「Gemini 3.7 Flash」はコーディング系ベンチマークの伸びと価格据え置きの両立が評価され、開発者から前向きな反応を集めています。
Google DeepMindの体制刷新とあわせて、次の一手であるGemini 3.5 Proがどう出てくるか、引き続き注目したいところです。