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「ウィズさん、性能を試したかっただけです」――1880いいねを集めたAI動画の正体

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年9月3日 更新
「ウィズさん、性能を試したかっただけです」――1880いいねを集めたAI動画の正体

「ウィズさん🥲 MiniMax H3の性能を試したかっただけです‼」

Xにそう投稿された動画には、体力ゲージと「FIGHT」の文字が浮かぶ対戦画面が映っていました。
向き合っているのは、青い髪のキャラクターと、投稿文で「ウィズさん」と呼びかけられているローブ姿のキャラクター。
格闘ゲームさながらの演出に仕立てられた、数秒の映像です。

投稿から1日足らずで、いいねは1880件、表示回数は18万を超えました。
作った本人いわく「性能を試したかっただけ」――つまり作品づくりが目的というより、AIの実力を確かめるための実験だったということです。

SNSで動画を作る人やAI活用に関心がある人にとって気になるのは、「このAI、実際どれくらい速くて、どれくらい安いのか」という点でしょう。
投稿の裏を調べると、8月末に発表されたばかりの新しい動画生成モデルが見えてきました。

先に結論をまとめると:
– 投稿で使われていたのは、AIインフラ企業fal(フォール)が2026年8月27日に発表した動画生成モデル「H3 Max」。
中国MiniMax社のオープンウェイトモデル(誰でも重みをダウンロードして使えるモデル)「MiniMax H3」を、falが追加学習したものです
– 5秒の動画をおよそ3秒足らずで生成でき、公式版のMiniMax H3と比べて最大35倍の速さで処理できます。
総合品質・プロンプト理解度・美的品質の人間評価でも1位を獲得しています
– 価格は1秒あたり0.04〜0.08ドル程度(時期・解像度で変動)。
2026年9月3日時点では、サインインのうえ1日5回・最大15秒までの動画を無料で生成できます

「ウィズさん」への謝罪から始まった動画

投稿者の@uramiyabi_さんが公開したのは、格闘ゲーム風の対戦画面を模した数秒の動画でした。
画面には体力ゲージ、ランクらしき表示、「FIGHT」の文字が入っており、二人のキャラクターが向き合う構図になっています。
ハッシュタグには「#このすば」「#スト6」が添えられていて、人気アニメのキャラクターを格闘ゲームの舞台に立たせて動かしてみた、という趣旨のようです。

投稿文にある「ウィズさん」は、この対戦相手の一方を指しているとみられます。
もう一方のキャラクター名は投稿では明かされていないため、ここでは断定を避けます。

たった1880いいねの元ネタが、実は「動画生成AIの新モデルを試しただけ」という軽いノリだったというギャップも、この投稿が伸びた理由の一つでしょう。

ただ、動画の面白さだけでは「3秒で生成できる」という数字のすごさは伝わりません。
実際に何が起きているのか、一次情報を確認しました。

調べて分かったこと

なぜ数秒で動画ができるのか?

falはAIインフラ企業です。
自社で完結したサービスを持つというより、他社が開発したAIモデルをホスティングし、高速化・低コスト化して提供する事業を展開しています。
今回話題になったH3 Maxは、中国MiniMax社がオープンウェイトとして公開した「MiniMax H3」が土台です。
falはこれに独自のpost-training(公開済みのモデルに追加の学習をかけて性能を調整する手法)を行いました。

fal公式ブログによると、プロンプトへの忠実さと画質を重視した新しいデータを追加で学習させたといいます。
さらに、検証可能なタスクでの強化学習にも計算資源の大半を割いたそうです。
その結果、5秒・720pの動画をおよそ3秒足らずで生成できるようになりました。
これは公式版のMiniMax H3を呼び出す窓口(エンドポイント:AIモデルを利用するための接続先)と比べて約35倍の処理速度(スループット)にあたります。
同等の画質を持つ他モデルと比べても、平均15倍速いとfalは説明しています。
独立系ベンチマーク「Design Arena」では、50倍以上速いとの報告もあるようです。

動画生成AIの性能を継続的に計測しているArtificial Analysisも、次のように報告しています。

(日本語訳:MiniMax H3 Maxは、Artificial AnalysisのVideo Leaderboardsにおいて、画像から動画への変換部門で1位、テキストから動画への変換部門で3位でデビューした)

業界からはどう評価されているのか?

falのpost-trainingという手法自体は珍しいものではありませんが、今回は速度と品質を同時に大きく引き上げた点が注目を集めました。
元Meta幹部として知られるTodd Jackson氏も、自身のXアカウントで次のように評しています。

(日本語訳:falがpost-trainingしたMiniMax H3 Maxは、まったく独自の領域にある。
ベースモデルよりほぼ50倍速い)

MiniMax本家のXアカウントも、falチームの取り組みを祝福する投稿をしています。
モデルの開発元と高速化を担った企業が、対立ではなく協業の形になっている点も、このニュースの珍しいところです。

値段はどれくらい安いのか?

fal公式サイトによると、H3 Maxの価格は解像度によって異なり、768pで1秒あたり0.08ドル、480pで0.05ドル程度です。
発表から2週間は50%オフのプロモーション価格が適用され、768pで0.04ドル、480pでは0.025ドル程度だったとみられます。
5秒の動画なら、プロモーション価格で1本あたり0.2ドル、日本円でおよそ30円という計算になります

無料でどこまで試せるのか?

多くの人が気になるのは、無料でどこまで使えるかではないでしょうか。
「ai動画生成無料」という検索は月間1万8,100件にのぼり、しかも直近1年の平均とほぼ同じ水準で推移しています。
一過性の話題ではなく、常に一定数の人が探し続けている言葉ということです。

fal公式サイトによると、2026年9月3日時点の無料枠はサインインのうえfalのサンドボックスで1日5回まで、生成できる動画は最大15秒までとなっています。
課金しなくてもここまで検証できるのは、動画生成AIを初めて触る人にとって大きなハードルの低さでしょう。

Shiritomo編集部の考察:試すなら「無料枠」から始めていい理由

SNS運用者にとって重要なのは、動画生成AIの技術力そのものより「気軽に試せるコストかどうか」です。
H3 Maxは1本あたり数十円、無料枠を使えば0円で試作できる水準まで下がりました。
これは企業のマーケティング担当だけでなく、個人クリエイターが「とりあえず作ってみる」までのハードルを下げる意味を持ちます。
実際、今回バズった投稿も、企業案件ではなく個人が趣味の延長で作ったパロディ動画でした。

画像生成AIの世界でも、性能競争が一巡すると次は価格競争・無料枠競争に移るという流れが繰り返されてきました。
動画生成AIも同じ道をたどりつつあるように見えます。
運用担当者は性能ランキングの数字だけを追うのではなく、「無料でどこまで検証できるか」を比較の軸に加えると、実務でのツール選定を誤りにくくなるでしょう。

まとめ

falが発表したH3 Maxは、MiniMax H3をベースに追加学習した動画生成モデルです。
5秒動画を3秒足らずで生成できる速さと、1秒0.04〜0.08ドル程度という価格の安さを両立しています。
日本のXでは早速アニメパロディの実験素材として使われはじめており、無料枠で気軽に試せることもあり、しばらくはこうした「試してみた」投稿が増えていきそうです。

さらに深掘りしたい方へ

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一次情報にあたりたい方は、fal公式ブログの発表記事も参考になります。

fal公式ブログ「Introducing H3 Max by fal」
fal公式サイト「MiniMax H3 Max」