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学習は擁護、出力は不問——米司法省がNYT対OpenAI訴訟で示した「半分だけの味方」

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年9月3日 更新
学習は擁護、出力は不問——米司法省がNYT対OpenAI訴訟で示した「半分だけの味方」

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米司法省が現地時間9月1日、ニューヨーク州南部地区の連邦地裁に提出した文書は、それだけの厚みでした。

宛先はOpenAIでもマイクロソフトでもなく、裁判所です。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)が2023年末に起こした著作権訴訟をはじめ、OpenAI関連の複数の訴訟がまとめて審理されています。
この手続き全体に対し、当事者ではない政府が「意見書」という形で立場を表明しました。
中身は、AIの学習にニュース記事を使う行為はフェアユース(公正利用:著作権者の許諾なしに著作物を使える例外規定)に該当し得る、というものです。

生成AIを使って仕事をしている人、SNSに文章や画像を投稿している人にとっては他人事ではありません。
自分の投稿がAIの学習データになることの是非に、米国政府が公式に一つの見解を示したからです。

先に結論をまとめると:

  • 米司法省は2026年9月1日、NYT対OpenAI訴訟に意見書を提出し、AI学習へのフェアユース適用を支持しました
  • ただし政府が擁護したのは「学習」だけで、AIがNYT記事をそのまま再現するような「出力」の是非には踏み込んでいません
  • 意見書に法的拘束力はなく、NYT側は「政権が巨大AI企業の肩を持ち、クリエイターを犠牲にしている」と反発しています

NYT対OpenAI訴訟、そもそもの経緯

発端は2023年12月27日。
NYTがOpenAIとマイクロソフトを相手取り、自社記事を無断でAIの学習に使われたとしてニューヨーク州南部地区の連邦地裁に提訴しました。
担当はシドニー・スタイン判事です。
以来、同種の著作権訴訟がいくつも同じ手続きにまとめられており、今回の意見書はその全体に向けたものになります。

司法省の主張はシンプルです。
LLM(大規模言語モデル:大量の文章を学習して文章を生成するAI)が著作物を学習に使う行為は「極めて変革的(highly transformative)」だとしています。
その上で、フェアユースが成立し得ると述べているのです。
理由として挙げているのが、AI開発競争における国家安全保障と、米国の経済的競争力です。
広範なライセンス料の支払いを義務づければ、それを払える体力を持つ大手テック企業にだけ開発が集中し、かえってLLM市場の競争を阻害しかねない、という理屈でした。

対するNYTの反応は厳しいものでした。
政権が数千億ドル規模のAI企業の肩を持ち、作品を無断で使われた無数の米国のクリエイターを犠牲にしている、という趣旨の批判です。
ただ、この意見書だけで訴訟の行方が決まるわけではありません。
そこで「意見書」という制度自体を確かめてみました。

調べて分かったこと

「意見書」に法的な力はあるのか?

「statement of interest」は、米国の連邦訴訟で政府が当事者にならないまま自らの立場を裁判所に伝える仕組みです。
判決を左右する義務はなく、あくまで参考意見という位置づけになります。
とはいえ、行政府の公式見解として文書に残る以上、裁判所がまったく無視するとも考えにくいところです。
同じ手続きに乗っている他のOpenAI関連訴訟にも、影響が及ぶ可能性があります。

なぜ「学習」と「出力」を分けているのか?

ここが今回の意見書でいちばん見落とされやすいポイントです。
政府が支持しているのは、あくまで学習という行為そのものへのフェアユースの適用であって、学習を終えたモデルが実際に何を生成するかは別問題として扱っています。
つまり「AIがNYTの記事の文章をほぼそのまま出力してしまう」ようなケースについては、著作権侵害が成立する余地を否定していません。
学習段階の議論と、生成物が既存の著作物とどこまで似ているかという議論は、法的にはまったく別の土俵だということです。

なぜこのタイミングでの表明なのか?

背景にあるのは、AI開発競争の主導権をめぐる国家間の争いです。
司法省が強調しているのは、著作権の扱いを厳しくしすぎることへの懸念です。
資金力のある一部の企業にしかAI開発ができなくなり、結果として米国全体の技術的優位性が損なわれかねない、という理屈でした。
NYT対OpenAIという一つの民事訴訟の範囲を超えて、AI政策そのものへの政府方針が透けて見える意見書だと言えそうです。

「AIに学習されたくない」——止める方法はあるのか

この議論を追ってみて気になったのが、コンテンツを発信する側にとっての実務的な疑問です。
「AI学習禁止」の月間検索数はおよそ1,900件前後とみられ、一過性ではなく継続的に検索されているテーマのようです。
現状、サイト運営者がクローラーを技術的にブロックする、利用規約でAI学習への提供を禁止する、といった対策自体は可能です。
ただし今回の政府見解が示す方向性を踏まえると、そうした対策があっても状況は変わりにくいかもしれません。
「学習に使われたこと自体」を著作権侵害として法的に問うのは、今後さらに難しくなっていく可能性があります。
争点になるのは、学習させたかどうかではなく、生成された中身がどこまで似ているかという一点に絞られていきそうです。

Shiritomo編集部の考察:SNS発信者が意識すべきは「学習」より「再現」

今回の意見書を、SNSでの発信という切り口から見ると、示唆はむしろシンプルです。
自分の投稿がAIの学習素材になること自体を止めるハードルは、今後も下がりにくいという前提に立ったほうがよさそうです。
一方で、AIが自分の文章や画像をほぼそのまま再現して出力するようなケースは、引き続き争える余地が残っています。
「学習されるかどうか」ではなく「出力にそのまま出てくるかどうか」が、今後の著作権論争の主戦場になるというのが、今回の一次情報から読み取れる構図です。
すでに音楽生成AIをめぐる別の訴訟でも同じ「学習は擁護、出力は要検証」という枠組みが使われており、今後も同じロジックが繰り返し登場するとみられます。

まとめ

米司法省はNYT対OpenAI訴訟で、AI学習へのフェアユース適用を後押ししました。
ただしそれは学習という行為に限った話で、出力の是非についてまで白紙委任したわけではありません
この「半分だけの味方」という立ち位置が、今後のAI著作権論争をどう動かしていくのか、引き続き見ておく価値がありそうです。

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