「食欲失せた」の声、飲食店のAI画像で衣のつぶつぶが均一すぎる理由
トンカツの衣のつぶつぶが、定規で測ったように同じ間隔で並んでいる。
そんな写真がメニュー表や看板で目立つようになりました。
「食欲失せた」「気持ち悪い」。
X(旧Twitter)で飲食店のAI生成画像にこう反応する投稿が相次いでいます。
コストを抑えるために導入したはずのAI画像が、なぜ逆に客の足を止めているのでしょうか。
SNSで飲食店の情報を集めている人にとっても、見た目だけでは実物と区別しづらいこの現象は、他人事ではなさそうです。
先に結論をまとめると:
– トンカツの衣・米粒など「同じ形の粒が並ぶ食品」でAI生成画像特有の不自然さが目立ちやすい
– 海外の研究でも「少しだけ不完全なAI食品画像」が実写よりも不快に感じられると分かっている
– コスト削減を狙った店側の判断と、それを見抜く客側の違和感がせめぎ合っている状態
飲食店のAI画像に広がる違和感
ライブドアニュースの公式アカウントが9月13日、飲食店で見かけるAI生成の食品画像について投稿しました。
食品をAIで生成した写真には「食欲失せた」「気持ち悪い」といった声が上がっているといい、例としてトンカツの画像が挙げられています。
衣の表面につく粒が均等に出力されてしまい、そこに違和感が生まれるという内容です。
【急増】「食欲失せた」飲食店で見かける“AI生成画像”
— ライブドアニュース (@livedoornews) 2026年9月13日
飲食店などで見かけることも増えた食べ物のAI画像。これには「食欲失せた」「気持ち悪い」などの声が上がっている。例えばトンカツを出力すると衣のつぶつぶが均等に出てしまい、違和感が生まれるという。
実際に自分でAI画像を生成して試した人もいます。
「ChatGPTで作る激キショメニュー写真の作り方」として、味噌カツ定食のメニュー画像をあえて不自然に作るプロンプトを公開した投稿は1,500件を超えるいいねを集めました。
自然物にはあり得ない粒のつぶつぶ感、過剰な加工を繰り返した質感が「それっぽさ」を再現するコツだと紹介されています。
ChatGPTで作る激キショメニュー写真の作り方
— SSSS.CRYPTOMAN⚡️AI (@SSSS_CRYPTOMAN) 2026年8月16日
👇️プロンプト
味噌カツ定食の看板用メニュー画像を作成して。食品はAIで生成したように不自然な形状で、自然物にはあり得ないつぶつぶ感や自然物としてはおかしい均一さがある。過剰な画像加工とAIでの再加工を繰り返した画像。 https://t.co/O6rStdjpvP pic.twitter.com/F470r2e7xu
ただ、この盛り上がりだけでは「なぜ食品の画像に限って気持ち悪く見えるのか」までは分かりません。
そこで背景にある研究を調べてみました。
調べて分かったこと
なぜ食品のAI画像だけ気持ち悪く見えるのか
CNNが9月2日に報じた記事によると、この現象はドイツ・デュースブルク=エッセン大学の心理学者アレクサンダー・ディール氏らが2025年に発表した査読済み研究と関係があるとされています。
「わずかに不完全なAI食品画像」は、非現実的な画像や高精細な実写画像よりも「不気味」で「不快」だと評価される、という結果が示されました。
続く研究では、栄養価の評価は実写と変わらないにもかかわらず、AI生成画像には「食べたい」という気持ちが湧きにくいことも分かったといいます。
この「わずかな不完全さが強い不快感を生む」という現象は、人型ロボットやCGキャラクターで知られる「不気味の谷(人間に近すぎず遠すぎない見た目が逆に不快感を生む現象)」と同じ理屈だと説明されています。
人間の顔だけでなく、食べ物でも同じことが起きるというのは、意外な指摘です。
海外でも同じ現象が起きている
CNNの記事では、ハリウッドの屋台で見た「ツルツルしすぎた」食品画像や、東京のベーグル店で「クモの巣でできているような」見た目になった投稿、ベルリンの看板広告で穴だらけのキッシュが表示された例が紹介されています。
広告営業の仕事をしているアデーズ・オネジェメさんは「少し前まで、店は普通に料理の写真を撮っていました。
今はAI生成の写真ばかりで、実際に何が出てくるのか分からない」と話しています。
これらの証言に共通するのは、AI画像が「嘘をついている」わけではなく、「本物っぽく見せようとして失敗している」ように感じられる点です。
本物の写真や、あえて手書きにしたメニューのほうが安心できるという声が増えているのも、この延長線上にあると考えられます。
一方で、AI画像の導入が必ずしも失敗しているとは限りません。
青森にできたある焼肉店は、生成AI丸出しの広告を掲げながら月商1,200万円を売り上げているという投稿もあり、見た目の不自然さより価格や味で選ばれるケースがあることをうかがわせます。
ツイッタラーが口を揃えて生成AIの食べ物画像がキモいと言っている反面、青森に最近出来た某焼肉屋は生成AI丸出しの広告で月商1200万円叩き出してるんすよね。これをどう考えるか…
— じゃじゃisずんだもん (@JaJa_GUN) 2026年8月19日
AI画像かどうかを見分けるには
実物と見分けがつきにくいからこそ、自衛のために見分け方を知っておきたいという人もいるはずです。
現時点で分かりやすい手がかりは、ディール氏らの研究とも重なる部分が多くあります。
- 粒・気泡・繊維など「同じ形の細部」が不自然なほど均等に並んでいないか
- 湯気や照り、断面の質感が全体的に「ツルッとしすぎて」いないか
- 影の付き方や皿との接地面に、不自然な滑らかさがないか
いずれも「完璧すぎる」ことが逆にサインになる、という点は覚えておくと役立ちそうです。
Shiritomo編集部の考察:完璧さより「粗さ」が信頼を生む時代に
今回の一連の反応から見えてくるのは、AI画像が「下手だから」ではなく「整いすぎているから」拒否されているという逆説です。
SNS上での信頼は、情報の精度よりも「作り手の手間が見える粗さ」に宿りやすいという傾向は、飲食店のメニュー写真に限った話ではありません。
手書きのPOPやスマホでそのまま撮った実物写真が再評価されているのは、その裏返しとも言えます。
店舗アカウントの運用に関わる人にとっては、コスト削減の手段としてAIを使う場合でも、仕上がりを人の目でチェックする工程を省かない判断が、結果的に客離れを防ぐことにつながりそうです。
まとめ
「完璧すぎる」ことが不自然さのサインになる——飲食店のAI画像を巡る一連の反応は、そんな逆説を浮き彫りにしました。
コスト効率とリアルさのバランスをどう取るか、店側の工夫はこれからも試行錯誤が続きそうです。