人間の脳細胞で動くデータセンター、消費電力はGPUの100分の1以下――メルボルンで稼働開始
20万個の人間の脳細胞が、シリコンチップの上でゲーム『DOOM』を操作する。
そんな実験で知られるオーストラリアのCortical Labsが、今度は脳細胞そのものをデータセンターに変えようとしています。
メルボルンでは生きた脳細胞を使う「Bio Data Centre」がすでに動き出し、シンガポールでも大学と組んだ試験施設が立ち上がりました。
装置1台あたりの消費電力はわずか30ワット。
AIの電力消費が世界的な課題になっているいま、この技術は本当に現実の選択肢になるのでしょうか。
先に結論をまとめると:
– Cortical Labsの生体コンピュータ「CL1」を使った「Bio Data Centre」が、メルボルンで120台規模ですでに稼働している
– シンガポールでもNUS(シンガポール国立大学)とデータセンター企業DayOneが試験施設を立ち上げ、将来的に最大1,000台規模への拡大を計画している
– CL1は1台あたり30ワットで動作し、GPUよりもはるかに少ない電力で済む一方、意識の有無をめぐる議論は今も続いている
メルボルンで動き出した「生きたデータセンター」
CL1は、幹細胞から培養した人間のニューロン(神経細胞)を電極アレイの上に乗せ、糖分を含む溶液で生かし続けながら動かす装置です。
1台に約20万個のニューロンが入っており、最大6か月ほど生存するとされています。
このニューロンの集まりに電気信号でゲーム画面の情報を送り込み、敵が現れたら特定の電極を刺激することで、ニューロン側が撃つ・避けるといった反応を返す――という仕組みで『DOOM』を操作させたのが、もともとの実験でした。
今回新しく分かったのは、この技術が研究室の実験を離れ、実際の設備として動き始めたことです。
メルボルンでは、CL1を120台並べた「Bio Data Centre」のプロトタイプがすでに稼働中。
シンガポールでも、NUS(シンガポール国立大学)医学部とデータセンター企業DayOneが協力し、NUSのライフサイエンス研究所に試験施設を設けています。
あるユーザーは、AIの「Grok」にこの話が本当かを尋ねる投稿で、次のように疑問を投げかけていました。
「ねえ@grok、これ本当?? 幹細胞から培養した人間の脳のニューロンがシリコンチップに電極アレイで直結され、生命維持装置で生かされているデータセンターがいくつかあるらしい。
数日おきに糖分を与えられている。
DOOMをプレイする。
意識があるかどうかは分からない」という内容でした。
Hey @grok, is this true??
— Weimar William (@WeimarWillhelm) 2026年10月23日
Some data centers now run on lab-grown human brain neurons derived from stem cells, wired directly to silicon chips via electrode arrays, and kept alive on life support. Fed sugar every few days. They play Doom. We don’t know if they’re conscious.
ただ、1件の投稿だけでは、この話がどこまで正確なのか判断できません。
実際に何が起きているのか、公式発表や報道をもとに確認しました。
調べて分かったこと
消費電力は、本当にGPUより少ないのか
CL1は1台あたりおよそ30ワットで動作するとされています。
これに対し、AI向けのGPUは1台で数千ワットを消費することもあり、CL1を並べたラック1本でも消費電力は850〜1,000ワット程度に収まるという報告があります。
桁が違うほど少ない電力で動く点が、このプロジェクトの最大の売りになっています。
ただし、これは同じ処理量を比べた数字ではなく、現時点でCL1が担えるのは限られた種類の計算にとどまる点には注意が必要です。
シンガポールでは何が起きているのか
シンガポールの施設は、2026年8月にNUS医学部の研究者や企業関係者80人以上を集めた公開イベントで披露されたプロトタイプです。
運営するDayOneは、将来的に同じ施設を最大1,000台規模まで拡大する計画を明らかにしています。
メルボルンの120台に比べてもかなり大きな規模で、商用化を見据えた動きであることがうかがえます。
意識はあるのか、倫理的な論点は
Cortical Labsは、CL1のニューロン集団について「意識のような特性は持たない設計にしており、そのリスクを検査して回避できる」と説明しています。
とはいえ、生きた人間の脳細胞を使っている以上、どこまでが単なる反応でどこからが「感じている」状態なのかという線引きは、専門家の間でも結論が出ていません。
この技術が広がるほど、この議論も避けられなくなりそうです。
AIの電力問題は、どこまで深刻なのか
AI向けのデータセンターが大量の電力を消費する問題は、今回の話の背景にもなっています。
GPUを並べる従来型の施設は電力網への負担や冷却コストが大きく、各国で供給力の確保が課題になっています。
CL1のような生体コンピュータがすぐに置き換わるわけではありませんが、低消費電力の計算手段を探す動き自体は、今後も繰り返し出てくるテーマになりそうです。
Shiritomo編集部の考察
今回の投稿が読者の関心を引いたのは、情報そのものの異様さに加えて「本当なの?」という疑いの形で書かれていたためだと見ています。
確信を持った告知よりも、半信半疑の問いかけのほうが引用や会話を誘いやすいという構造です。
SNS運用の視点でも、意外な事実を伝えるときに「本当ですか」という当事者目線の疑問形を使うと、同じ驚きを持つ読者の反応を引き出しやすくなります。
AI業界では電力効率が今後も重要な評価軸になり続けるため、CL1のような異色の技術も、実用化より先に話題として広がりやすい状況が続くと見ています。
まとめ
人間の脳細胞を使ったCL1は、メルボルンでの稼働とシンガポールでの試験施設立ち上げによって、研究室の実験から一歩進んだ段階に入りました。
低消費電力という利点と、意識をめぐる倫理的な論点は、どちらも今後注視していく必要がありそうです。
