AI規制・政策 読了 6 分

「MIDI文化を根絶やしにしたJASRACならやってくれると信じてた」――AI自律生成楽曲、管理対象外に

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年11月1日 更新
「MIDI文化を根絶やしにしたJASRACならやってくれると信じてた」――AI自律生成楽曲、管理対象外に

JASRAC(日本音楽著作権協会)は6月、人の手を介さずAIが自律的に作った曲は著作物に当たらず、著作権の管理対象から外すとする方針を公式に発表しました。
10月には、その申告が実態と合っているかを音源解析で確かめる「AI楽曲検知システム」の実証実験を始め、同じ時期、作曲AI「Suno」は自分の声を使って歌わせる新機能を追加し、音楽制作のハードルはさらに下がっています。
この報道を受けてXでは、JASRACの過去の対応を引きながらの反応も出ています。
SNSに音源を公開している人、AIで作曲を試している人にとっては、この先の著作権の扱いを左右する話です。

先に結論をまとめると:
– JASRACは6月、人の創作的な寄与がないAI自律生成曲を「著作物に当たらない」として管理対象から外す方針を公式発表
– 人が作ったと申告した曲にAI生成が混ざっていないかを調べる「AI楽曲検知システム」の実証実験を10月に開始、12月からクリエーター支援サービス「KENDRIX」で無料提供予定
– 作曲AI「Suno」は自分の声で歌わせる新機能「Voices」を追加するなど普及が進み、Spotifyも参加アーティストのAIカバー・リミックスサービスを計画中

何が起きているのか

音楽活動を行うShoichiro Toko(@shotoko_music)さんが10月31日朝に投稿した次の内容は、1万5000件を超えるいいねを集めました。

かつてJASRACが同人・ネット文化のMIDIファイル共有を厳しく取り締まった過去を引き、今回もAI生成楽曲に対して同じように厳格な対応をするだろう、という見立てを示した内容です。
1件の投稿ではありますが、JASRACの発表が単なる業界ニュースとしてではなく、過去の取り締まりの記憶と結びつけて受け止められていることがうかがえます。
ただ、この投稿だけでは発表の中身まではわかりません。
そこで、JASRACが実際に何を発表したのかを確かめました。

調べて分かったこと

なぜ「管理対象外」なのか?

JASRACの発表によると、線引きの基準は「人間の創作的寄与があるかどうか」です。
シンプルな指示だけでAIが自律的に作った歌詞や楽曲は、人の創作が加わっていないため著作物に該当せず、JASRACは管理を引き受けられないとしています。
一方、人がAIに手を入れて作詞や編曲に関わった場合は、その人間の寄与分は従来どおり管理の対象になります。
作品を届け出る際には「作詞(または作曲):AI自律生成」のように、AIが作った旨を記載することが求められる仕組みです。

見分けるための実証実験とは?

申告は作曲家らの自己申告が基本のため、実際にはAI生成の曲を「人間が作った」と申告されても、JASRAC側が見抜くのは簡単ではありません。
そこでJASRACは10月から、音源を解析してAI生成の可能性を判定する「AI楽曲検知システム」の実証実験を始めました。
作曲家の協力を得て精度を検証したうえで、12月からはクリエーター支援サービス「KENDRIX」を通じて無料提供する予定だと報じられています。

Sunoの新機能「Voices」とは?

今回の発表と時期が重なるように、作曲AI「Suno」はv5.5で新機能「Voices」を追加しています。
15秒から4分ほどの自分の声のサンプルを登録すると、生成する楽曲のボーカルを自分の声で歌わせられる機能です。
現在はベータ版で、Pro・Premierプランの利用者が対象、生成1回につき4クレジットを消費します。
登録した声はデフォルトで非公開に設定されており、本人が公開しない限り他の利用者には使われません。

Spotifyはどう動いているのか?

音楽を取り巻く動きはSpotifyにも及んでいます。
SpotifyとUniversal Music Groupは、参加アーティストの曲をファンがAIでカバー・リミックスできる有料サービスを計画していると報じられており、実現すればAIリミックスの再生実績は元の曲のチャートにも反映される仕組みが検討されているといいます。
導入は2027年初めが見込まれており、現時点ではまだ計画段階です。

Shiritomo編集部の考察:線引きは「人が何をしたか」に移っていく

今回の発表で注目したいのは、JASRACが禁止や規制ではなく「線引き」を先に示した点です。
AIが完全に作った部分は管理しない代わりに、人が関わった部分はきちんと管理するという整理は、AIと人間の創作をゼロイチで分けるのではなく、工程ごとに切り分ける発想です。
SNSで音源を公開している人にとっては、今後「どの工程を人がやったか」を自分で説明できるようにしておくことが、著作権の扱いを左右する実務になっていきそうです。
検知システムが本格稼働すれば、申告と実態のズレが見つかるケースも出てくるはずで、Voicesのような「人の声を使うがAIが作曲する」中間的な機能がどちらに分類されるかは、今後の運用を見ていく必要があります。

まとめ

JASRACはAIが自律的に作った楽曲を著作権の管理対象から外す一方、人の創作的な寄与がある部分は従来どおり管理する方針を示しました。
作曲AIの機能強化やSpotifyの動きと合わせて見ると、音楽と著作権の線引きが「AIか人か」ではなく「どの工程を誰がやったか」へ移っていく動きの一つと言えそうです。

さらに深掘りしたい方へ

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