AI活用事例 読了 5 分

スーパーの「AI値札POP」はなぜ見づらいのか 1300万回表示が突きつけた引き算の話

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年7月22日 更新
スーパーの「AI値札POP」はなぜ見づらいのか 1300万回表示が突きつけた引き算の話

ブドウの絵とネギの絵、フォントの縁取り、吹き出し、影付き文字——。
ある野菜売り場の値札POPには、それだけの要素が1枚に詰め込まれていました。
隣にはきのこ売場の値札があり、そちらは黄色い紙に品名と価格が書いてあるだけです。
同じ日、同じ店の売り場なのに、情報量がまったく違う2枚が並んで写真に撮られ、Xで一気に拡散しました。
生成AI(文章や画像を自動で作るAI技術)を業務のデザイン制作に使う動きが広がっています。
そのなかで、「見た目が派手=良いデザイン」ではないという、当たり前だけど見落とされがちな話が改めて浮き彫りになりました。
SNSでの情報発信やチラシ・POP制作にAIを使い始めた人にとっては、他人事ではない教訓が詰まっています。

先に結論をまとめると:
– AI生成の値札POPが「情報過多で見づらい」とXで批判され、1日で7万いいね・1300万回表示を記録した
– 問題の本質は「AIを使ったこと」自体ではなく、情報の優先順位(商品名・価格>その他)を人が整理しないまま生成AIに丸投げしたこと
– 現在の画像生成AIは、装飾を増やすことは得意でも「何を目立たせ、何を削るか」の判断はできない

野菜売り場ときのこ売り場、2枚のPOPが並んだ

きっかけは、7月20日にゾウモツさん(@zoumotu)が投稿した1枚の写真でした。
野菜コーナーには、ブドウやネギのイラストがびっしり詰め込まれた派手な値札POPが貼られています。
その様子が、きのこ売場のシンプルな手書き風POPと並べて撮影されていました。
片方は情報量が多すぎて価格がどこにあるのか一目でわからず、もう片方は品名と値段だけで完結しています。
同じ店内にある2枚の対比が、そのまま「見づらさ」の証拠として伝わりました。

投稿は1日で7万いいね、1300万閲覧を突破。
「品名と価格だけが必須」「ワードアート時代みたい」といった指摘がリプライやコメントで相次ぎました。

反応の多くは批判でしたが、なかには「AIで表現の幅が広がるのは悪くない」と擁護する声もありました。
ただ、この投稿だけでは「そもそもなぜAIを使うとこうなるのか」までは見えてきません。
そこで、まとめサイトやSNS上の反応を一次情報として確認しながら、背景を掘り下げてみました。

調べて分かったこと

なぜAI生成のPOPは情報過多になりやすいのか?

今回の件で目立ったのは、「AIを使うこと自体が悪い」という単純な批判ではなく、情報の優先順位が崩れているという指摘でした。
POPデザインには本来「商品>価格>その他の装飾」という優先順位があります。
しかし現在の画像生成AIは、プロンプト(AIへの指示文)に「野菜」「賑やかに」といった言葉を入れると、その言葉に対応するイラストや装飾を律儀に足していきます。
AIには「この売り場では価格が一番大事だから、他の要素は薄くしよう」という判断基準がありません。
結果として、指示された要素を全部乗せた画像ができあがりやすいのです。

まとめサイトの反応でも、「満遍なく情報量が増えた結果、どこを見るべきかわからなくなる」という声が紹介されていました。
「効果や視線誘導がわからない人が新しいおもちゃで遊んでいる」という辛辣な指摘もあります。
派手さと伝わりやすさは別物という点が、繰り返し話題になっていました。

デザインのプロが指摘した「本質的な欠落」は何か?

もう一つ興味深かったのは、「デザインはセンスの問題ではなく、技術・ノウハウの問題」という指摘です。
POPの役割は、通りすがりの買い物客に一瞬で「これは何の商品で、いくらか」を伝えることにあります。
文字の大きさ・配置・余白の使い方には、視線がどう動くかという実践的なノウハウが積み重ねられてきました。
今回のPOPは、そのノウハウを踏まえずに「にぎやかに見せたい」という思いつきをそのまま形にしてしまった例として受け止められたようです。
現状の画像生成AIは写真のようにきれいなイラストを描く能力は高くても、こうした「情報設計」の知識までは持ち合わせていません。
文字入りの画像を生成させると、そもそも文字自体がにじんだり読みにくくなったりすることも多く、視認性の面ではまだ発展途上の技術だと言えるでしょう。

Shiritomo編集部の考察:AIに丸投げする前にやることが1つある

今回の一件は、AIツールを業務で使い始めた人ほど陥りやすい落とし穴を示しています。
生成AIは「足し算」は得意でも「引き算」が苦手です。
指示すればするほど要素は増えますが、「これは削るべき」という判断はAIではなく人間の側で行う必要があります。
SNS投稿の画像やバナーを作るときも同じことが言えます。
伝えたい情報を1つか2つに絞ってからAIに指示を出す、あるいはAIが出した案から要素を削る。
この一手間が効果を分けるはずです。
実際、今回の投稿がここまで拡散した理由も、派手なPOPそのものより「シンプルなきのこ売場のPOPとの対比」という編集(引き算)が効いていたからでしょう。
バズる投稿の作り方としても、情報を盛るより削る勇気のほうが効くという、SNS運用にも通じるヒントが隠れていました。

まとめ

AI生成の値札POPが批判を集めた背景には、技術そのものの是非ではなく「情報の優先順位を人が整理しないままAIに任せてしまった」という運用上の課題がありました。
AIを使うときほど、何を残し何を削るかを決めるのは人の役目だと言えそうです。

さらに深掘りしたい方へ