「米国の優れた企業が中国製を使うのは好ましくない」——Appleに米商務長官が釘を刺した本当の理由
「米国の優れた企業が中国製を使うのは好ましくない」。
米商務長官ハワード・ラトニック氏は8月13日、米テキサス州ヒューストンにあるAppleの製造施設を視察し、その翌日のインタビューでこう述べました。
政府高官がメディアを通じて特定企業の調達先に注文をつけるというのは、かなり異例の発言です。
このニュース、iPhoneユーザーにとっても他人事ではありません。
半導体メモリー不足が長引けば、価格や供給に跳ね返ってくる可能性があるからです。
何が起きているのか、順を追って調べてみました。
先に結論をまとめると:
– AIデータセンター向け需要の急増で半導体メモリーが世界的に不足・値上がりしており、Appleは中国メーカー製メモリーチップの採用を検討していました
– ラトニック商務長官は8月13日、Appleに対し「トランプ政権はこの調達を支持していない」と直接伝えました。
ただしこれは政権の意向表明であり、法的拘束力のある禁止命令ではありません
– 議会からも超党派で調達に反対する声が上がっており、Appleが最終的にどう判断するかはまだ固まっていません
何が起きたのか
ウォール・ストリート・ジャーナルが8月14日に報じたところによると、ラトニック氏はAppleに対し「メモリーの問題には別の解決策があるはずだ」と伝え、中国メーカーへの発注に難色を示しました。
この報道はすぐにXでも拡散し、速報アカウントの投稿は数時間で2,600件を超えるいいねを集めています。

【速報】🇺🇸🇨🇳 米政府、Appleに対し、中国製メモリーチップの購入をやめるよう要請 pic.twitter.com/r0mV6oWRdk
— SOU⚡️投資ニュース / 米国株・日本株・仮想通貨・AI (@SOU_BTC) 2026年8月15日
コメント欄では「そもそもなぜ中国製を検討していたのか」という疑問と、「米国政府がここまで介入するのか」という驚きの声が入り混じっていました。
この投稿にはトランプ大統領のAP通信配信写真が添えられており、政権全体としてこの問題に神経をとがらせている様子がうかがえます。
ただ、この見出しだけでは「なぜ今、この話が出てきたのか」が分かりません。
そこで背景を一次情報で確かめてみました。
なぜAppleは中国製メモリーに目を向けたのか?
発端はAIブームです。
ChatGPTや各社の生成AIサービスの普及で、データセンター向けの高性能メモリー需要が急増し、半導体メモリー(DRAM・NANDフラッシュなど、データを一時的・長期的に記憶する部品)の世界的な供給不足と価格高騰が起きています。
iPhoneやMacにも当然この種のメモリーは使われており、Appleにとってはコスト増と調達難という二重の課題になっていました。
WSJは8月10日の時点で、Appleが中国メーカー・長鑫存儲技術(CXMT)製のメモリーチップを試験採用していると報じていました。
Apple、中国CXMTの半導体メモリー採用へ試験 WSJ報道https://t.co/SKsZ7QiDk7
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) 2026年8月9日
この報道の段階では、あくまで一部端末向けのテストという位置づけでした。
CXMTのメモリーは価格面で優位性があるとされ、供給難を乗り切る現実的な選択肢としてAppleの調達チームが検討を進めていたようです。
しかし、この動きが今回の商務長官の発言につながっていきます。
なぜ米政権は「好ましくない」と言うのか?
Appleが検討していたCXMTと、もう一社のYMTC(長江存儲科技)は、いずれも米国防総省から「中国軍関連企業」に指定されています。
米商務省の輸出規制対象リスト(エンティティリスト)にも一部関わりがあるとされ、安全保障上の懸念から議会でも超党派の反対論が強まっていました。
上院の超党派議員グループがApple CEOのティム・クック氏に宛てて、CXMTやYMTC製の半導体チップを一切使用しないと確約するよう求める書簡を送っています。
つまり今回の発言は、単なる一企業への注文ではなく、AIブームが引き起こした部品不足と、米中の安全保障対立という二つの流れがぶつかった結果といえます。
Appleとしては目先のコストと供給を優先したい一方、政権は国家安全保障の観点から待ったをかけた格好です。
これは禁止命令なのか?
ここは記事を書くうえで慎重に確認したいポイントでした。
報道を読む限り、今回のラトニック氏の発言はあくまで政権としての「意向表明」であり、Appleに調達を禁じる法的な命令ではありません。
実際、海外メディアの報道でも「Appleがそれでも調達に踏み切る可能性はある」と指摘されています。
ラトニック米商務長官、Appleに中国製半導体の不使用を要請https://t.co/TASVJvNTIs
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) 2026年8月15日
日本経済新聞のこの投稿にも「不使用を要請」という表現が使われており、強制ではなく要請にとどまっていることがうかがえます。
Apple側は今回の件について公式なコメントを出しておらず、最終的にどう判断するかは明らかになっていません。
なお、海外メディアの報道では、Appleが米国内で6000億ドル規模の追加投資を表明したとも伝えられており、政権との関係を良好に保つための布石という見方も出ています。
Shiritomo GADGET編集部の考察:値上げリスクとして捉えるべきこと
この一件は「政治対立のニュース」で終わらせず、iPhoneユーザーの財布に関わる話として見るべきだと考えます。
Appleが中国製メモリーを避けるとなれば、代替調達先は韓国のサムスンや米マイクロンなどに絞られ、いずれも価格競争力ではCXMTに劣ります。
つまり調達コストが上振れしやすい構造になります。
過去にも半導体不足の局面では、部品コストの上昇がそのまま製品価格に転嫁されるケースが繰り返されてきました。
今回もメモリー不足が長引けば、次期iPhoneやMacの値上げ、あるいは一部モデルのメモリー容量据え置きという形で、購入時に「気づいたら選べる容量が減っていた」ということが起こり得ます。
政治的な駆け引きの裏側で、実際に財布へ影響が及ぶのはこれからだと見ています。
まとめ
AI需要によるメモリー不足を背景に、Appleは中国製チップの採用を検討していましたが、米商務長官が直接「好ましくない」と伝えたことで、状況は流動的になっています。
禁止命令ではないものの、政権と議会からの圧力は強く、Appleの最終判断とその先にある製品価格の行方が注目されます。
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