SNS運用Tips 読了 6 分

「あえて隠す」が武器になる——VTuberサムネ講師が説く、見せすぎないほうが伝わる理由

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年9月5日 更新
「あえて隠す」が武器になる——VTuberサムネ講師が説く、見せすぎないほうが伝わる理由

「あえて大切な情報を隠すことの魅せ方をしっておくことで、実際のご依頼にもたくさん活かせますね」。
9月5日午前、そう振り返りをXに投稿したのは、VTuber専門のサムネイル(動画一覧やSNSに表示される縮小画像)デザイナー・沙雨イニさんです。

投稿の最後には「アレとアレはドラゴンとみんなとの秘密ね」という一文も添えられていました。
何を隠したのかは書かれていません。
実はこの投稿自体が、前日の勉強会のテーマをそのまま体現していました。

サムネイルは動画やSNS投稿の「顔」として、クリックするかどうかを一瞬で決める要素です。
VTuberの新衣装・新モデルお披露目のような特別な発表を控えている運用担当者にとって、「何を見せて何を隠すか」の判断は他人事ではないはずです。

先に結論をまとめると:

  • 新衣装や新モデル発表など「特別な日」のサムネは、情報を全部出すのではなく一部を隠すことで期待感を作るのが基本の考え方
  • 通常配信のサムネと違い、お披露目サムネは「告知」と「期待の演出」を同時に担う難しさがある
  • 参加したサムネイルデザイナーたちが最も反応していたのは「期待をデザインする」という視点そのものだった

VTuberのサムネ勉強会で何が話されたのか

沙雨イニさんが講師を務めるこの勉強会は、サムネイル制作者向けのオンラインサロン「ARiVE」の中で開かれています。
本人が「月1回の勉強会をさせていただきました」と説明しているとおり、毎月開催されている企画のようです。
9月4日夜の回のテーマは「見せないことで魅せる」、新衣装お披露目のサムネイルデザインでした。

沙雨イニさん本人の投稿はこちらです。

参加したサムネイルデザイナーの投稿を見ると、学びの中心は「通常サムネ」と「お披露目サムネ」の違いだったとわかります。
あるデザイナーは「モチーフの考え方や、特別感、匂わせなど見る人にどういう感情になって欲しいかを考えて作るという事を教えていただきました」と振り返っていました。
サムネイルは告知のための画像であると同時に、見る人の感情を先回りしてデザインするものだという捉え方は、通常回の解説だけでは出てこない視点です。

では、なぜ「隠す」ことがわざわざ授業のテーマになるほど重要なのでしょうか。
そこをもう少し掘り下げてみます。

なぜ「見せない」ほうがクリックされやすいのか?

心理学には「好奇心ギャップ理論(情報ギャップ理論)」と呼ばれる考え方があります。
1994年に心理学者ジョージ・ローウェンスタインが提唱したもので、人は「自分が知っていること」と「知りたいこと」の間にギャップを感じると、そのギャップを埋めたくなるという仕組みを説明しています。
YouTubeのサムネイル設計やクリックベイト(釣り見出し)の研究でも、この「知りたいのに知らない」状態を作ることがクリックを後押しする要因として繰り返し取り上げられてきました。

つまり、サムネイルに全部の情報を載せてしまうと、見る人はその時点で「もう知った」と感じてしまい、動画を開く理由がなくなります。
逆に、新衣装のシルエットだけを見せる、色の一部だけをのぞかせる、といった「あと少し足りない」状態を作ることで、続きを見たい気持ちが生まれるわけです。
ある参加者が「知らせると同時に期待を募らせるという所が重要なんだな」と学びを共有していたのも、この仕組みと重なります。

通常配信とお披露目サムネ、具体的に何を変えるのか?

参加者の投稿を総合すると、変えるポイントは大きく2つに整理できそうです。
1つは「情報量」で、通常配信のサムネはその回の内容を伝えることが優先されるのに対し、お披露目サムネはあえて内容を絞ります。
もう1つは「モチーフの選び方」で、特別感や匂わせを演出する要素を意図的に加える点です。
ただし、勉強会の具体的なワークやワークシートの中身までは今回の投稿からは確認できていません。
この点は断定を避けておきます。

自分のサムネイルの作り方にどう活かせるのか?

VTuberに限らず、動画やSNS投稿のサムネイルを作る人にとって、この考え方はそのまま応用できます。
一般的なサムネイル設計の解説記事でも、シルエットや一部だけを見せる、数字や結果を伏せて「?」を残す、といった手法がクリック率向上のテクニックとして紹介されています。
全情報を詰め込む「説明型」のサムネイルより、あえて余白を残す「予告型」のサムネイルのほうが、開いてもらえる可能性が高いということです。
もちろん、隠しすぎて何の動画かまったく伝わらなければ逆効果になる点には注意が必要でしょう。

Shiritomo編集部の考察:応用できるのはVTuberだけではない

この「見せないことで魅せる」という発想は、映画の予告編や新商品発表のティザー広告と同じ構造です。
情報を出し切らない設計は、告知そのものをエンゲージメント設計の一部として扱っているということでもあります。
SNS運用担当者であれば、新商品や新サービスの告知投稿でも同じ手が使えるはずです。
全部を1枚目で見せるのではなく、シルエットや一部の色だけを見せて「詳細は後日」と添えるだけで、次の投稿への期待値を作れる可能性があります。
また、ARiVEのようにジャンル特化のオンラインサロンで「なぜそのデザインが効くのか」を言語化して共有する動きは、個人のスキルが属人化しやすいクリエイター業界において、ノウハウの継承手段としても注目に値します。

まとめ

VTuberの新衣装お披露目サムネは、情報を全部見せるのではなく、あえて一部を隠すことで期待感を作るのが基本の考え方でした。
この発想は「好奇心ギャップ理論」として心理学的にも説明がつくもので、VTuber以外のサムネイルやSNS告知投稿にも応用できそうです。

さらに深掘りしたい方へ

「認知されるために整える」——ARiVEの勉強会で400種のテクスチャが80分で配られた夜「認知されるために整える」——ARiVEの勉強会で400種のテクスチャが80分で配られた夜同じサムネイル制作者向けサロンARiVEの別回。 Photoshopプラグインを使った技法共有を扱った勉強会の様子。

沙雨イニさんの活動については、VTuberサムネイルデザインをテーマにしたウェビナー登壇の記事でも紹介されています。