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「100年前から公開されていたもの」——GPT-6 Astraが解いた108年前の暗号、鍵の正体

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年9月20日 更新
「100年前から公開されていたもの」——GPT-6 Astraが解いた108年前の暗号、鍵の正体

1918年11月27日に打たれた一通のドイツ軍の暗号電文が、108年のあいだ誰にも解けないまま歴史資料の中に眠っていました。
使われていたのは「ADFGVX暗号」と呼ばれる方式で、暗号表と鍵語の両方が揃わなければ復元できない仕組みです。

それを解いたのが、OpenAIが2026年9月3日に公開した最新モデル「GPT-6 Astra」でした。
X上では公開直後から「108年ぶりの解読」という言葉が飛び交い、関連の投稿は短時間で数千件のいいねを集めています。

AIの実力を評価するとき、私たちはつい「未解読だった」という部分だけを見て驚いてしまいがちです。
ただ、ChatGPTやClaudeなどの生成AIを日常的に使っている方であれば、AIが何を発見し、何を発見していないのかを切り分けて見る視点は、今後AIの発表を読み解くうえでそのまま役立つはずです。
今回のケースを詳しく調べると、その線引きがくっきり見えてきました。

先に結論をまとめると:
– GPT-6 Astraが、1918年11月27日に送信された第一次世界大戦中のドイツ軍暗号を解読。
内容は英巡洋艦のセヴァストポリ入港など戦況の報告でした
– ただし暗号の鍵語そのものは数十年前から知られていたもので、AIの功績は「その鍵語が別の未解読メッセージにも使えると気づいた」推理にありました
– 同じAIは1941年のドイツ陸軍のEnigma暗号(ナチス・ドイツ軍が使っていた暗号機の暗号)も約10時間で解読しており、歴史文書のデジタル化とAIを組み合わせる手法が広がりつつあります

108年間、なぜこの暗号文だけ残っていたのか

この暗号電文は、ドイツの暗号研究者Klaus Schmeh氏が運営するサイト「Scienceblogs.de」に掲載された、未解読の第一次世界大戦暗号50件のリストに含まれていたものでした。
ADFGVX暗号は、文字を6種類の記号(A・D・F・G・V・X)の組み合わせに変換したうえで、さらに鍵語を使って並べ替える二重の暗号化を行うため、鍵語が分からなければ人手ではまず復元できません。

このリストに目をつけたのが、開発者のprinz氏でした。
GPT-6 Astraに解読を試させたところ、鍵語「TRUPPENVERSCHIEBUNG」(ドイツ語で「部隊移動」の意味)を使うと、この電文が意味の通る英語の文章に変換できることが分かったのです。
Xでもこの解読劇はすぐに大きな反応を呼びました。

投稿は公開から数時間で4,400件を超えるいいねを集め、「AIが歴史の謎を解いた」という文脈で拡散していきました。
ただ、この投稿だけでは「AIが具体的に何をどう解いたのか」までは分かりません。
そこで一次情報を確かめてみることにしました。

AIは本当に「暗号を解いた」と言えるのか

使われた鍵は、実はずっと公開されていた

プロジェクトを追いかけていたXユーザーの中には、解読の”種明かし”に気づいた人もいました。

指摘の通り、「TRUPPENVERSCHIEBUNG」という鍵語自体は目新しい発見ではありません。
第一次世界大戦後に連合国側がドイツの暗号資料を押収しており、この鍵語も歴史研究者のあいだでは以前から知られていました。
つまりGPT-6 Astraは、暗号を解読不能な状態から解いたわけではなく、すでに知られていた鍵語を、それまで結び付けられていなかった別の電文に当てはめて意味を通した、というのが実態に近いところです。

では何が新しかったのか

これまでの研究では、鍵語「TRUPPENVERSCHIEBUNG」は1918年12月9日以降に使われ始めたとされてきました。
ところが今回AIが解読に成功した電文は、それより12日ほど前の11月27日に送信されたものです。
つまりAIは、鍵語がいつから使われ始めたかという、これまでの研究者の前提そのものにズレがあったことを見つけたことになります。
しかも解読された文面(「英巡洋艦がセヴァストポリに到着、連合国艦隊が26日に続く」という趣旨の内容)は、実際のHMSカンタベリーの航海記録とも日付単位で一致していたといいます。

ここで一点補足しておきます。
拡散した投稿の中には「第一次世界大戦終結直前に送信された」という説明も見られましたが、休戦協定は1918年11月11日に結ばれているため、今回の電文(11月27日)は休戦の約2週間後に送られたものです。
戦争が終わる前の緊迫した通信というより、休戦直後の戦況整理・報告に近い性質だったとみられます。

同じ手法で83年前のナチスの暗号も解けている

GPT-6 Astraの成果はこれだけではありません。
Bloomberg社でプロダクト開発の仕事をするCarter Leffen氏は、同じAIを使い、1941年7月10日にドイツ陸軍が送信したEnigma暗号(指標「MVUEH」)を約10時間で解読したと報告しています。
83年間解けなかった暗号で、解読の糸口になったのは、同じ日に送られた別の電文にすでに含まれていた地名「Rosenow」でした。
この地名を手がかりに探索させたところ、「進路を教えてほしい。
私はRosenow、Rosenowにいる。
至急無線で返答されたし」という趣旨の文面が浮かび上がったとのことです。

Shiritomo編集部の考察:AIのニュースは「誰が拡散したか」も見る

今回のケースで実務的に参考になるのは、いいね数の差そのものです。
「終戦直前に解読」という不正確な文脈を含む投稿は4,400件超のいいねを集めた一方、鍵の実態を指摘した投稿は52件にとどまりました。
拡散量と正確さは比例しないというのは、SNS上で情報を発信する立場の人ほど実感していることだと思いますが、AI関連のニュースは特にこの差が開きやすい傾向があります。
「AIがすごいことをした」という一文で完結する情報のほうが拡散されやすく、「ただし前提には注意が必要」という補足は伸びにくいためです。
自社のSNS運用でAI関連の話題を取り上げる際は、いいね数の多い一次投稿だけでなく、リプライ欄や引用欄に伸びていない訂正・補足がないかを確認する一手間が、誤情報を広めない実務的な防御線になります。

まとめ

GPT-6 Astraが解いたのは、鍵そのものの謎ではなく「その鍵がいつ・どこまで使われていたか」という前提のズレでした。
AIの成果を伝えるニュースほど、拡散された一文だけでなく背景まで確かめる価値がありそうです。

さらに深掘りしたい方へ

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今回の解読について、より詳しく知りたい方は以下も参考にしてください。