スペースX、自社GPU製造計画をIPO登録で公表 AI市場4503兆円狙う
「宇宙企業がGPU(グラフィックス処理装置・AI計算に使われる半導体)を自分で作る」——そんな見出しを見たとき、思わず二度見してしまいました。
スペースXがSEC(米国証券取引委員会)にIPO(新規株式公開)登録書(S-1届出書)を提出し、その中に自社GPU製造計画が明記されていたのです。
ロケットと衛星通信で世界をリードしてきた企業が、なぜいま半導体製造に踏み込もうとしているのか。気になって深掘りしてみました。
X(旧Twitter)での反響
今回の発表は、X上でかなり大きな話題になっています。
イーロン・マスク氏は「Terafab(テラファブ)」と名付けたプロジェクトの正式発表をXで告知し、「年間1テラワット超の計算能力を生産する」という壮大な目標を掲げました。
その内訳は宇宙向けが約80%、地上向けが約20%とのことです。
Formal announcement of the TERAFAB project, which will be done jointly by @SpaceX and @Tesla, tonight around 8pm CT. Livestream on 𝕏.
The goal is to produce over a TERAWATT of compute per year (logic, memory & packaging) with ~80% for space and ~20% for the ground.
— Elon Musk (@elonmusk) 2026年3月21日
さらにSpaceX公式アカウントは、Intel(インテル)のプロジェクト参加も発表しています。
「スペースX・xAI・テスラが史上最大規模のチップ製造プロジェクトを立ち上げる——ロジック(演算回路)、メモリ(記憶回路)、先進パッケージング(チップ集積技術)を一つ屋根の下に」という内容で、投資家や技術者から驚きと期待のコメントが集まっています。
Intel is joining Terafab!
SpaceX, @xAI, and @Tesla are launching the most epic chip-building effort ever – combining logic, memory, and advanced packaging under one roof → https://t.co/512DIlqNgY https://t.co/1vPLMFl58q
— SpaceX (@SpaceX) 2026年4月7日
予測市場プラットフォームのPolymarket(ポリマーケット)では、Terafab発表後にスペースXのIPO時価総額が2兆ドル(約300兆円)を超えるという予測が55%に達しています。
一方で、「NVIDIA(エヌビディア)でさえTSMC(台湾積体電路製造・世界最大の半導体受託製造企業)に外注しているのに、スペースXに本当にできるのか」という懐疑的な声も少なくないようです。
S-1届出書から読み解いてみると
スペースXが2026年4月1日に提出したS-1届出書の詳細が、複数のメディアで報じられています。
注目すべきは、同社がチップ供給リスクを投資家向けのリスク要因として明記した点です。
「現時点でシリコン(半導体)サプライヤーとの長期供給契約がない」と率直に認めたうえで、その対策として自社GPU製造への大規模投資を宣言しています。
NVIDIAなどへの外部依存を減らし、計算資源を自社で安定確保しようという垂直統合戦略といえるでしょう。
その核心が「Terafab(テラファブ)」プロジェクトです。
テキサス州オースティンのギガテキサス(テスラの工場)隣接地に、世界最大規模の半導体製造施設を建設する共同事業で、スペースX・テスラ・xAI(マスク氏のAI企業)・インテルの4社が参画しています。
総投資額は200億〜250億ドル(約3.2兆〜4兆円)とされ、年間1テラワット(計算能力の単位)を超えるAIチップ生産を目標に掲げているようです。
インテルは最先端の「14Aプロセス」(回路線幅が極めて細かい最新の製造技術)でチップ製造を担うとされています。
S-1ではAI関連市場を30兆ドル(約4503兆円)規模と試算しており、宇宙インターネット(Starlink)やAIクラウドなど複数事業でこの巨大市場を取り込む戦略が示されています。
IPOはナスダック上場を目指し、調達額は最大750億ドル(約11兆円)、評価額は1兆7500億ドル(約263兆円)を超える史上最大級の上場になるとみられています。
ただし、業界関係者からは実現への懸念も出ています。
最先端チップの製造には1000を超える複雑な工程と原子レベルの精度が必要で、NVIDIAやAMD(エーエムディー・米半導体大手)でさえ自社製造は行わずTSMCなどに委託しているほどです。
スペースXが「GPU」と呼ぶものが従来のグラフィック用チップではなく、AI専用アクセラレーター(AI計算を高速化する専用プロセッサ)を指している可能性もあり、実態についてはS-1のさらなる詳細開示を待つ必要があるかもしれません。
さらに深掘りしたい方へ
- Tom’s Hardware:SpaceX、自社GPU製造へ——1.75兆ドルIPO登録書が明かした計画
- XenoSpectrum:SpaceXの自社GPU計画、1.75兆ドルIPOで見えた半導体リスク
- Forbes JAPAN(Yahoo!ニュース):スペースX、約276兆円のIPOを前に自社GPU製造を発表──狙いは約4503兆円のAI市場
- TradingKey:SpaceX IPO開示で判明した自社GPU計画——財務上のブラックホールか、成長エンジンか?
- Bloomberg:スペースX、IPOで2兆ドル超の評価額を目指す
- 日本経済新聞:スペースXの時価総額「M7級」に 6月にIPO、280兆円も
まとめ
スペースXはIPO登録書への自社GPU製造計画の明記を通じ、宇宙企業からAIインフラ企業への転身を鮮明にしています。
総投資3.2兆〜4兆円のTerafabプロジェクトが成功すれば、NVIDIAに依存しない独自の計算基盤を持つ、史上初の「宇宙×AI」複合企業が誕生することになるでしょう。
夢物語に聞こえる部分もありますが、マスク氏がこれまで「無理だ」と言われてきたことをいくつも実現してきたのも事実です。今後のS-1詳細開示や上場の行方に注目していきたいですね。