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パトカーのサイレンに気づけなかった理由 ノイズキャンセリングイヤホンの「聞こえなさ」を技術から考える

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年7月23日 更新
パトカーのサイレンに気づけなかった理由 ノイズキャンセリングイヤホンの「聞こえなさ」を技術から考える

サイレンが鳴っている。
うるさいな、とは思っていた。
それでも足は止まらず、ランニングを続けていた——。
神楽健さん(@kagura_takeru_)が2026年7月22日に投稿したこのエピソードは、1日で1100万インプレッションを超える反響を呼びました。

パトカー3台に囲まれ、イヤホンを外した瞬間に「なんで逃げるんや」と声をかけられる。
笑い話として広まった一方で、Xでは「その音量で外を歩くのは危ない」という指摘も相次ぎました。
ワイヤレスイヤホンでランニングや通勤をする人にとって、他人事では済まされない話です。

この記事では、なぜノイズキャンセリング(周囲の騒音を打ち消す機能)イヤホンがサイレンすら聞こえなくするのか、その仕組みを技術面から確認しました。
あわせて、骨伝導イヤホンや片耳使用が本当に安全な選択肢なのか、法律上イヤホン装着中の歩行に問題はないのかも調べています。

先に結論をまとめると:
– ノイズキャンセリングは「逆位相の音」を作って周囲の音を打ち消す仕組みで、性能が高いほどサイレンのような大きな音も遮断しやすくなります
– 骨伝導イヤホンは耳をふさがず頭蓋骨を通して音を伝えるため、構造上、周囲の音が自然に届き続けます
– 歩行者がイヤホンをして歩くこと自体は現行法で直接禁止されていませんが、自転車運転中の両耳イヤホンは都道府県の条例で規制されています

1100万インプレッションを集めたランニング職質エピソード

神楽さんの投稿は、ランニング中に鳴っていたサイレンを「やけにうるさいな」と感じながらも走り続け、終了後にイヤホンを外した瞬間に職務質問を受けた、という内容でした。
7月22日の投稿から1日足らずで爆発的に拡散し、記事執筆時点で49,897件のいいねがついています。

コメント欄では「あるある」という共感と笑いが目立つ一方、音量を上げてノイズキャンセリングを効かせた状態で外を歩く行為の危うさを指摘する声も数多く見られました。
単なる笑い話として消費するには、イヤホンという道具の特性を知っておいたほうがよさそうです。
ここからは、なぜここまで周囲の音が聞こえなくなるのか、仕組みを確認していきます。

ノイズキャンセリングイヤホンはなぜサイレンも打ち消してしまうのか?

ノイズキャンセリングには大きく分けて2種類の方式があります。
ひとつはイヤーピースで物理的に耳の穴をふさぎ、外の音を遮断する「パッシブ方式」。
もうひとつは、内蔵マイクが周囲の騒音を拾い、それと逆位相(波形が反転した状態)の音をリアルタイムで生成してぶつけることで音を打ち消す「アクティブノイズキャンセリング(ANC)」です。

多くの最新イヤホンはこの両方を組み合わせています。
つまり、物理的に耳をふさいだうえで、さらに電子的に騒音を打ち消しているため、性能が高い機種ほど、サイレンのような大きな環境音も「うるさいけれど聞こえる」から「ほぼ聞こえない」レベルまで減衰させてしまうわけです。
神楽さんが感じた「やけにうるさいな」という違和感は、ANCが効いた状態でもなお音量が突き抜けてきた結果だったと考えられます。

この点については、Xでも技術的な指摘がありました。

このポストは、自転車の両耳イヤホン走行がすでに規制されている一方で、歩行者には同様の規制がないことへの違和感を述べたものです。
ノイズキャンセリング性能そのものが「自分の安全を自分で手放している」状態を生みやすいという指摘は、製品の特性を踏まえると納得できる部分があります。

骨伝導イヤホンや片耳使用は本当に安全なのか?

Xの反応では、骨伝導イヤホン(耳をふさがず、頬骨付近の振動で音を内耳に直接伝える方式)や片耳使用を勧める声も目立ちました。
骨伝導イヤホンは、頬骨やこめかみ付近に当てた振動子が頭蓋骨を通して内耳の蝸牛(かぎゅう)に直接音を届ける構造で、鼓膜や耳の穴を経由しません。
そのため耳の穴自体はふさがれておらず、車や自転車の走行音、人の声といった周囲の音が自然に耳へ入り続けます。

一方で、多くのANC搭載イヤホンには「外音取り込みモード」も備わっています。
内蔵マイクで拾った環境音をそのまま耳に届ける機能で、切り替えれば周囲の音を確認しながら音楽も聴けます。
ただしこのモードとノイズキャンセリングは基本的に排他的な切り替え式で、両方を同時にオンにはできません。
今回のケースのように「ノイズキャンセリングをオンにしたまま外を走る」状態が常態化していると、この切り替え自体が意識されにくくなる点は見落とされがちです。

実際、Xでは骨伝導イヤホンを推す声も上がっていました。

車の走行音や地面の状態など、音から得られる安全情報は思いのほか多いという指摘は、屋外でイヤホンを使う人全般に当てはまる内容といえそうです。

歩行者のイヤホン使用は法律違反になるのか?

今回のエピソードは走行中の話であり、自転車の条例とは別物として整理しておく必要があります。
現行法では、歩行者がイヤホンをつけて歩く・走ること自体を直接禁止する規定はありません。
一方、自転車の運転者については、道路交通法にもとづく都道府県の道路交通規則(条例)で、安全な運転に必要な音や声が聞こえない状態での走行が規制されてきました。
2026年4月1日からは自転車の交通違反にも青切符(交通反則通告制度)が導入され、イヤホン使用で周囲の音が聞こえない状態での走行もこの対象に含まれています。
ただしこれはあくまで自転車運転者に対する規制であり、ランニング中の歩行者に同じ規制が及ぶわけではありません。
今回、神楽さんが受けたのは交通違反としての取り締まりではなく、不審な挙動に対する通常の職務質問だったと考えられます。

Shiritomo GADGET編集部の考察

今回の件で興味深いのは、「うるさいと感じているのに、音を下げる・モードを切り替えるという発想に至らなかった」という点です。
ANC搭載イヤホンの多くは、専用アプリやボタン長押しで外音取り込みモードに切り替えられますが、その操作は日常的に意識されているとは言いがたいのが実情です。
運動中に音楽のリズムを止めたくない、操作が面倒、そもそも切り替え機能の存在を知らない、といった理由で「つけっぱなし」になっているユーザーは少なくないと見ています。

この構図は、Shokzやambieのような骨伝導・オープンイヤー型イヤホンが「ながら聴き需要」の受け皿として支持を広げてきた背景とも重なります。
ノイズキャンセリングの性能競争が「いかに周囲を消すか」を追求してきたのに対し、オープンイヤー型は最初から「周囲を消さないこと」を製品コンセプトに据えています。
屋外での運動用途に限って言えば、性能の高さがそのまま安全性につながらないという逆説は、今後も製品選びの判断材料として意識されてよいポイントではないでしょうか。

まとめ

ノイズキャンセリングの性能が上がるほど、サイレンのような重要な音まで打ち消してしまう可能性があります。
屋外で使う場面では、外音取り込みモードへの切り替えや骨伝導・片耳イヤホンといった選択肢を、自分の使い方に合わせて検討してみる価値がありそうです。

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