舌だけでパソコンを操作する「MouthPad」が一般販売開始 精度は脳インプラント並みという記録も

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年7月24日 更新
舌だけでパソコンを操作する「MouthPad」が一般販売開始 精度は脳インプラント並みという記録も

毎秒10.47ビット。
これは、脳に電極を埋め込む最先端のブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI:脳と機械を直接つなぐ技術)が達成してきたカーソル操作の精度と肩を並べる数字です。

この記録を出したのは、脳ではなく舌でした。
7月22日、サンフランシスコのスタートアップAugmentalが、舌の動きだけでパソコンやスマホを操作できるマウスピース型デバイス「MouthPad」の一般販売を米国で始めたのです。
ハンズフリー操作というと福祉機器のイメージが強いかもしれませんが、実際の広がり方を見ると、それだけでは説明がつきません。
ガジェット好きなら「新しい入力デバイス」として、購入判断や今後のトレンドを考えるうえで一度は知っておきたい動きです。

先に結論をまとめると:
– 「MouthPad」は上あごにフィットする特注のマウスピース型デバイスで、舌の動きでカーソル操作・クリック・スクロールができます
– 価格は1台1,400ドル(約2台セットは1,900ドル)+歯科スキャン費用50〜150ドルで、注文から配送まで約6ヶ月かかります
– 障害者支援を出発点にした技術ですが、Xでは投資家やIT企業のオフィスでの実用例も報告され、想定より幅広い層に広がっています

Xでの盛り上がり

Augmentalの公式アカウントは「MouthPad is a touchpad you drive with your tongue. Now available across the US.(MouthPadは舌で操作するタッチパッドです。
米国全土で購入可能になりました)」と投稿し、300万インプレッションを超える反響を集めました。

この投稿には900件を超える引用ポストが付き、単なる話題性にとどまらない広がりを見せています。
ただ、投稿の反応だけでは「本当に実用的なのか」「誰が使っているのか」までは分かりません。
そこで公式発表や過去の研究資料を確認してみました。

調べて分かったこと

なぜ今、一般販売にこぎつけたのか?

MouthPadはもともと、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究がルーツです。
脊髄損傷などで手が使えない人たちが、パソコンやスマホを自分の意思で操作できるようにする目的で開発が始まりました。
Augmentalの創業者兼CEOのTomás Vega氏がこの研究をもとに起業し、これまで100人を超える利用者が実際にMouthPadで日常のパソコン操作をこなしてきたといいます。

今回の一般販売と同時に、Augmentalは「Vox」という新しいウェアラブルマイクも発表しました。
こちらは小さな声でも認識できる「ささやきタイピング」用のデバイスで、Vega氏自身が抱える吃音(きつおん:話す際に言葉が詰まったりつかえたりする症状)の経験から企画したものです。
既存の音声入力インターフェースが使いにくいという自身の課題感が、Augmentalの製品開発の原動力になっているようです。

実際どんな仕組みで、いくらするのか?

MouthPadは歯科医院などで口腔内を3Dスキャンしてから個人に合わせて製造されるため、注文から手元に届くまでおよそ6ヶ月かかります。
価格は1台1,400ドル、2台セットで1,900ドル、これに加えて歯科スキャン費用が50〜150ドルほど必要です。
操作方法は、舌を軽くタップするとクリック、吸う(すする)ような動作で右クリックに相当する操作ができる仕組みで、スワイプやスクロールなど一般的なトラックパッドのジェスチャーにも対応しています。
接続はBluetoothで、macOS・Windows・Linux・iOS・Androidと幅広いプラットフォームに対応しているため、Bluetoothマウスが使える機器であればほぼ操作できる計算です。

想定と違う層にも広がっているのは本当か?

引用ポストを見ると、「初めて投資した製品がこれだと思うと、自分がやってきたことを実感する」と語る投資家の反応がありました。

さらに、AIスタートアップのオフィスを訪れたユーザーが「みんながMouthPadを使ってAIエージェントに指示を出し、ソフトウェア開発の現場を管理している」と紹介する投稿も見られました。
当初想定されていた「手が使えない人のための支援機器」という枠を超え、両手がふさがりがちなエンジニアの作業効率化ツールとしても注目され始めていることがうかがえます。

Shiritomo GADGET編集部の考察

アクセシビリティ機器として生まれた製品が、そのまま一般消費者向けガジェットとして流通し始めている点は興味深い動きです。
似た構図はAppleのVoiceOverやAndroidのTalkBackなど、もともと視覚障害者向けの支援機能が結果的に全ユーザーの利便性向上につながった例にも通じます。
MouthPadの場合、価格が1,400ドルと高額で、注文から半年待ちという点は一般普及の壁になりそうですが、「両手がふさがっている状態でどう機器を操作するか」という課題は、料理中のスマホ操作から作業現場のハンズフリー入力まで幅広い場面に当てはまります。
今後、より安価で汎用的な後継製品が登場すれば、支援機器の枠を超えた新しい入力デバイスのカテゴリとして定着する可能性があります。

まとめ

MouthPadは障害のある人の自立支援を目的に開発された舌操作型トラックパッドですが、実際の一般販売開始後は投資家やIT企業の現場からも注目され、想定より幅広い層に受け入れられつつあります。

さらに深掘りしたい方へ

MouthPadの詳しい仕様や購入方法は公式サイトで確認できます。