薄毛の質問に、会社が用意した回答――アデランス子会社のステマが7年越しに発覚した理由

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年9月8日 更新
薄毛の質問に、会社が用意した回答――アデランス子会社のステマが7年越しに発覚した理由

「薄毛に悩んでいます」。
ヤフー知恵袋に投稿されたこの質問に、数時間後、別のアカウントから「このウィッグを試してみては」という回答が付きました。
質問した人と答えた人は、赤の他人ではありませんでした。
どちらも、同じ広告会社が用意したアカウントだったのです。

2026年9月7日、アデランスの子会社「ライツフォル」が、2019年に外部の広告会社へ報酬を払ってこうした投稿を依頼していたことを認めました。
SNSでキャンペーンの口コミを募ったり、インフルエンサーに商品を紹介してもらったりする施策を日常的に行っている人ほど、他人事ではいられない話です。
「7年も前の投稿が、なぜ今になって問題になるのか」を軸に、調べて分かったことをまとめます。

先に結論をまとめると:
– アデランス子会社ライツフォルが2019年6月、広告会社に月15万円を払い、ヤフー知恵袋で「質問と回答をどちらも用意する」ステマ投稿を依頼していました
– ライツフォルは3カ月分の報酬を支払い、2019年12月ごろまでに延べ約70件の投稿が確認されています
– ステマ規制は2023年10月施行ですが、規制前の投稿でも「今も閲覧できるなら是正すべき」というルールがあり、7年前の行為が発覚の対象になりました

知恵袋の質問と回答、実は同じ会社が用意していた

日本経済新聞や東京新聞などが7日、共同通信の報道をもとにこの件を伝えました。
それによると、ライツフォルは東京都内のネット広告会社に月15万円を支払い、ヤフー知恵袋に「薄毛に悩んでいる」という体裁の質問を投稿させ、続けて別アカウントから第三者を装ってライツフォルのかつらなどを勧める回答を投稿させていたとされています。
ニュース速報アカウントの投稿でXにも流れましたが、拡散したのはごく少数で、当欄が確認できた反応も片手で数えられる程度でした。

ライツフォル側は「現在のコンプライアンスに照らすと適切ではなかった」と不適切な対応だったことを認め、該当投稿の削除を進める方針です。
ただ、この一件を「7年前の古い話」で片付けられない事情が、調べていくと見えてきました。

調べて分かったこと

なぜ2019年の投稿が、いま問題になったのか?

ステマ(ステルスマーケティング:広告であることを隠したまま行う宣伝手法)が景品表示法上の不当表示として規制されたのは、2023年10月1日からです。
ライツフォルの投稿はそれより4年以上前のものなので、規制の対象そのものではありません。

ただし消費者庁の運用基準では、規制が始まる前の投稿であっても、今もインターネット上で閲覧できる状態なら、依頼した事業者はできる限り投稿の修正・削除に努める義務があるとされています。
つまり「昔やったことだから」は、免罪符にはなりません。
ネット上の投稿は自分で消さない限り残り続けるため、何年も前の施策が最新のルールに照らされる、という構図が今回起きたことになります。

知恵袋の質問と回答、何が「不自然」だったのか?

今回の手口で目を引くのは、質問を投稿するところから広告会社に依頼していた点です。
一般的な口コミステマは「すでにある質問に、宣伝したい側が答えを差し込む」形が多いのですが、今回は質問そのものが宣伝目的で作られていました。
しかも回答は「別アカウント」から行われており、広告であることは一切明記されていません。
この一連の流れに対して月15万円の報酬が3カ月分支払われ、2019年12月ごろまでに延べ約70件の投稿が確認されたとされています。

この手のステマ、読む側で見分ける方法はあるのか?

知恵袋のような質問・回答サイトでは、やらせや自作自演を見分ける手がかりがいくつか指摘されています。
質問が締め切られるまでの時間が極端に短い、ベストアンサーが不自然に早く選ばれる、質問者・回答者ともにIDを非公開にしているケースが多い、といった特徴です。
副業や高額な美容商品の勧誘リンクとセットになっているパターンも報告されています。
もちろん、こうした特徴があるからといって必ずステマとは限りませんが、「質問から回答までが早すぎる」「妙に商品名だけ具体的」と感じたときは、一度立ち止まって確認する価値があります

なお、こうした施策が発覚した場合に措置命令の対象となり、従わなければ2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されるのは、広告を依頼した事業者側だけです。
回答役を演じたアカウントの持ち主やインフルエンサー個人が罰せられる仕組みにはなっていません。

Shiritomo編集部の考察:過去の施策こそ棚卸しの対象にする

この一件が示しているのは、SNSやQ&Aサイトでの口コミ施策は「今の基準」だけでなく「過去にやったこと」まで含めて管理対象になる、ということです。
2023年のステマ規制以降に始めた施策をチェックする体制を整えていても、それより前に行った小規模なキャンペーンや、外部の広告会社に丸投げしていた口コミ施策までは見落とされがちです。

今回のように何年も前の投稿でも今アクセスできる状態であれば是正対象になる以上、過去の口コミ・レビュー施策を棚卸しし、広告表記の有無を確認する作業は、多くの企業にとって決して他人事ではないはずです。
特に外部の広告会社やインフルエンサーに運用を委託している場合、依頼した側が把握していない投稿が残っている可能性もあります。
定期的な棚卸しと、依頼先への発注内容の再確認が、次の「7年後の発覚」を防ぐ一番現実的な手立てになりそうです。

まとめ

7年前のヤフー知恵袋への投稿が今になって問題視されたのは、ステマ規制そのものが遡って適用されたからではなく、「今も見える投稿は是正すべき」という運用基準があったためでした。
過去の口コミ施策を振り返る機会として、この一件から学べることは少なくないでしょう。

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