「あなたのLGテレビは盗み聞きしている」――画面オフでも録音を続けていた理由

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年9月8日 更新
「あなたのLGテレビは盗み聞きしている」――画面オフでも録音を続けていた理由

「あなたのLGテレビは、あなたの声を盗み聞きしている」。
あるセキュリティ系アカウントの投稿は、静かにこう告げていました。
テレビの画面は消えている。
それでもマイクは音を拾い続け、テレビは家の中の他の機器を勝手にスキャンしていた――。
米国のセキュリティ研究者らが、LGの有機ELテレビでこの挙動を確認しています。
「電源を切っておけば安心」と考えていた人にとって、この調査結果は前提そのものを揺さぶる内容です。

先に結論をまとめると:
– LGの有機ELテレビは、画面がオフのスタンバイ状態でもマイク音声を取得できることが、Gamers Nexusらの調査で確認されました
– テレビは同じネットワーク上のスマホやスマートウォッチなどをスキャンし、Wi-Fi情報や位置データとともにLGの広告部門へ送っていました
– ネット切断中に集めたデータはローカルに保存され、再接続した瞬間にアップロードされる仕組みでした

LGテレビの「盗み聞き」報告がXで拡散

きっかけは、YouTubeチャンネルGamers Nexusの創設者Steve Burke氏が主導し、Level1Techsや独立系のセキュリティ研究者らと共同で行った調査でした。
市販のLG有機ELテレビ(フラッグシップモデルのG5を含む)を実際に購入し、Wireshark(ネットワークの通信内容を可視化する解析ツール)で通信データを解析するという地道な検証です。
この調査結果を伝える投稿がXで急速に拡散し、数十万インプレッションを記録しています。

Steve Burke氏率いるGamers Nexusの調査によってLGの有機ELテレビに気になる挙動が見つかり、プライバシー面の懸念が広がっている。
研究者らは、テレビが周辺のデバイスやWi-Fiネットワークをスキャンできる一方、LGのコンテンツ認識機能が視聴内容の追跡にも関わっていることを確認した――という趣旨の投稿です。

ただ、この数字とテキストだけでは「どこまで本当に録音・送信されていたのか」が分かりません。
そこで一次情報を確かめてみました。

調べて分かったこと

本当に画面オフでも録音していたのか?

Gamers Nexusが公開した検証動画(135分)によると、研究者らは市販直後のLG OLED G5を使い、画面が消えてスタンバイ表示になった状態でもマイクがクリアな音声を取得できることを確認しています。
取得した音声はテレビ内でテキストに書き起こされ、平文のログとして記録されていたといいます。
画面が暗くなっていても「電源が切れている」とは限らないという点が、今回の調査の核心です。

集めたデータはどこへ、何のために送られていたのか?

同じ調査では、テレビが自宅のWi-Fiネットワークを積極的にスキャンし、接続中のスマートフォンやスマートウォッチといった、テレビとは無関係な機器のIPアドレスまで特定していたことも分かりました。
周辺Wi-Fiネットワークの名前や信号強度、位置データも収集対象に含まれていたとされます。
こうしたデータは、LGの広告部門であるLG Ad Solutionsに渡り、ターゲティング広告に利用される仕組みだったと報じられています。
LGはグローバルで約2億1600万台のスマートテレビを販売しているとされ、ネットワーク上の周辺機器まで数えると、米国だけでもLG Ad Solutionsが把握できるデバイス数は3億6300万台規模に達するという指摘もあります。

「LGのスマートテレビが、スタンバイ状態でもネットワークをスキャンし音声を記録していたことが判明」――Gamers Nexusの新たな調査の詳細を伝えるこの投稿も、公開直後から拡散しました。

ネット切断中はどうなっていたのか?

特に注目されたのが、インターネットを切断している間の挙動です。
研究者らのテストでは、テレビをネットワークから切り離しても音声やテキストのファイルはローカルに蓄積され続け、再びネットに接続した瞬間、そのデータが暗号化されてLGのサーバーへアップロードされていたといいます。
次の投稿は、この一連の流れを端的にまとめています。

「速報:あなたのLGテレビはあなたの発言を盗み聞きしている。
発言を文字起こしし、画面の内容をコピーし、ネットワーク上のあらゆる機器をスキャンする。
研究者によれば、ネットを切断してもデータ収集は止まらず、再接続した瞬間にアップロードされる」――そう伝えるこの投稿は、そのデータの送り先がLGの広告部門であることも指摘しています。

LGは何と説明しているのか?

LGはこれまで、自社のテレビについて「周囲の会話を収集・記録・保存することはない」と公に説明してきました。
しかし今回の調査チームは、テストで実際にマイク音声がテキストとして書き起こされ、ログとして残ることを確認したとし、この説明と食い違うと主張しています。
なお、LGは今回の調査結果について、公開時点(2026年9月8日)で公式な反応を示していません
今後の説明があれば、続報で扱いたいところです。

「録音」だけではない、未公開の脆弱性も

Gamers Nexusらの調査では、webOS(LGテレビのOS)に、遠隔からコードを実行できる深刻な脆弱性も見つかったと報じられています。
この脆弱性については、メーカーへ通知したうえで対応を待つ「責任ある開示」のプロセスが進行中とされ、技術的な詳細はまだ公開されていません
悪用の実例が確認されているわけではなく、あくまで開示プロセス中の段階です。

LGテレビのマイクや視聴データ収集は設定でオフにできるのか?

「LGテレビ マイク オフ」「LGテレビ 設定 オフ」で検索する人は多いはずです。
今回の報道を追った海外メディアの整理によると、LGテレビには関連する設定項目がいくつか存在します。
「設定」→「詳細設定」(機種やソフトウェアバージョンによりメニュー名は異なる場合があります)→「一般」→「システム」→「その他設定」の階層から、番組内容を認識して広告に使う機能(Live Plusなど)と、マイク機能をそれぞれオフにできるほか、「設定」→「サポート」→「プライバシーとご利用規約」から視聴情報の同意(Viewing Information Agreement)を取り消す方法も紹介されています。
ただし研究者らは、これらの個別設定をオフにしてもデータ収集が完全になくなるわけではないと指摘しており、最も確実な対策は「テレビをインターネットに接続しない」こと、つまり有線のストリーミング端末や外部プレーヤーを別途つないで、テレビ本体はネットから切り離すことだとしています。
設定変更はあくまで軽減策であり、根本的な解決ではないという点は押さえておきたいところです。

Shiritomo GADGET編集部の考察

今回の件で興味深いのは、問題が「マイクが付いている」こと自体ではなく、スタンバイという状態の定義がメーカーとユーザーでずれていた点です。
ユーザーにとって「画面が消えている=オフ」ですが、製品設計上は「ネットワーク待受・センサー動作は継続」という状態にすぎません。
この非対称性は、テレビに限らずスマートスピーカーやロボット掃除機など、常時電源が入っている家電全般に共通する構造的な課題です。
プライバシー設計の観点では、機能ごとに個別トグルを用意するより、「ネット接続を切る」「マイクを物理的に無効化する」といった、ユーザーが状態を目視で確認できる手段のほうが信頼を得やすいはずです。
スマート家電市場が広がるほど、こうした「見えない動作」の説明責任は重くなっていくのではないでしょうか。
今回のように第三者の実測調査が公になること自体が、メーカーへの牽制として機能している側面もありそうです。

まとめ

LGの有機ELテレビは、画面オフのスタンバイ状態でもマイク音声を取得し、周辺デバイスの情報とともにLGの広告部門へ送信していたことが、独立系の調査で確認されました。
設定変更だけでは収集を完全に止められない可能性がある以上、気になる人はネット接続そのものを見直すのが現実的な対策になりそうです。

さらに深掘りしたい方へ

今回の調査についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。