アマゾンが5105機衛星でスマホ直結通信へ、2028年開始を目指しFCCに申請
衛星の数は5,105機。
高度510〜580kmの間に5つの軌道殻(衛星を層状に配置する軌道帯のこと)を設けて打ち上げる計画を、アマゾンの衛星事業「Amazon Leo(アマゾン・レオ)」が2026年7月24日、FCC(米連邦通信委員会)に申請しました。
狙いはシンプルで、特別なアンテナも契約変更も不要な、いま使っているスマートフォンをそのまま宇宙経由でつなげることです。
山奥や海上など地上の基地局が届かない場所でも通話やメッセージが送れるようになるとしたら、その恩恵はスマホを持つほぼ全員に及びます。
先に結論をまとめると:
– アマゾンがFCCに最大5,105機の低軌道衛星コンステレーション(衛星群)を申請、標準的なスマホへの直接通信サービスを2028年に開始予定
– 今年4月発表のGlobalstar買収(約116億ドル)と連動し周波数帯(L帯・S帯)を活用、Appleとの提携でiPhoneやApple Watchの衛星SOS機能も支える
– SpaceXのStarlink Direct to CellやAST SpaceMobileと並ぶ「衛星スマホ直結」競争が本格化する
何が起きたのか、アマゾンの衛星計画の中身
今回アマゾンがFCCに提出したのは、Direct-to-Device(D2D、端末直結)と呼ばれるサービスを実現するための衛星群の運用許可申請です。
5つの軌道殻に分散配置される5,105機の衛星は、音声通話・メッセージ・データ通信に加え、緊急通報サービスまでをカバーする設計になっています。
対象となるのは特殊な受信機を積んだ端末ではなく、市販の標準的なスマートフォンです。
アマゾン公式アカウントは、今回の一連の動きについて次のように発表しています(英語ツイート、日本語訳:「速報:アマゾンはGlobalstarを買収し、Amazon Leoに端末直結の衛星接続をもたらします。
またAppleと契約を結び、iPhoneとApple WatchのSOS衛星機能を支えます。
Leo D2Dサービスは2028年に開始予定です」)。
BREAKING: Amazon is acquiring @Globalstar to bring direct-to-device (D2D) satellite connectivity to @Amazonleo, and has signed an agreement with @Apple to power satellite services for iPhone and Apple Watch.
We’ll begin launching Leo D2D services in 2028, ensuring your phone… https://t.co/d8siE4gpsx— Amazon (@amazon) 2026年4月14日
サービス開始は2028年を予定していますが、業界筋の見立てでは2027年に試験衛星の打ち上げが始まり、2028〜2029年にかけて全体の衛星網が段階的に整っていく流れになりそうです。
アマゾンはもともと「Project Kuiper」の名でブロードバンド衛星網を展開していましたが、2025年11月に「Amazon Leo」へブランドを統一しており、今回のD2D計画はこの上位ブランドのもとで進む新規事業という位置づけです。
では、なぜアマゾンはここまで大規模な衛星群を、しかも既存のスマホをそのまま使う形で計画しているのでしょうか。
その背景を掘り下げてみます。
調べて分かったこと
なぜ低軌道の衛星なら普通のスマホの電波を拾えるのか
スマホから衛星への直接通信を可能にしているのは、静止衛星より地球にはるかに近い「低軌道」という位置取りです。
同種の技術を国内で展開するソフトバンクは、公式アカウントで次のように解説しています。
4月から開始した「SoftBank Starlink Direct」(※)にもこの技術が活用されています。
— SoftBank (@SoftBank) 2026年4月19日
「Starlink」の衛星は、低軌道(LEO)衛星。従来の静止衛星に比べて100倍も地上に近いため、微弱なスマホの電波を宇宙でキャッチし、双方向の通信を可能にしました。
※SMS、S!メール(MMS)、RCS及び国際…
低軌道衛星は従来の静止衛星に比べて地上との距離が100倍近いとされ、この近さがスマホの微弱な電波を宇宙側で受信できる理由になっています。
アマゾンのLeo D2Dも同じ原理を使いますが、5,105機という機数の多さは、衛星1機あたりのカバー範囲が狭くなる分を数で補い、常にどこかの衛星が頭上を通過している状態を作るための設計だと考えられます。
高度510〜580kmという比較的低い軌道も、通信の遅延を抑えつつ地上の電波塔がない場所を面で覆うための選択と見られます。
Globalstar買収とApple提携は何をもたらすのか
アマゾンは2026年4月、衛星通信会社Globalstarの買収を約116億ドルで発表しました。
買収の狙いは単なる規模拡大ではなく、Globalstarが世界120カ国以上で保有する周波数免許(L帯・S帯)を手に入れることにあります。
周波数免許は新規に取得しようとすると長い年月がかかるため、既存事業者を買収して一気に確保する動きは、直結通信サービスを2028年という比較的近い時期に実現する上で大きな意味を持ちます。
買収は2027年の完了を見込んでいます。
同時に発表されたのがAppleとの提携です。
Globalstarはこれまで、iPhoneやApple Watchの「衛星経由の緊急SOS」「メッセージ」「探す」「ロードサイドアシスタンス」といった機能を支える基盤事業者でした。
買収完了後はこの役割をAmazon Leoが引き継ぐ計画で、すでに数千万台規模で使われているApple製品の衛星機能が、裏側でアマゾンの衛星網に置き換わることを意味します。
ユーザーからすればiPhone側の操作は変わらなくても、通信インフラの主役が交代する、業界にとっては大きな転換点です。
StarlinkやAST SpaceMobileとの競争はどうなるのか
衛星とスマホの直結という分野では、イーロン・マスク氏率いるSpaceXがすでに一歩先を行っています。
StarlinkのDirect to Cellサービスは2025年2月に米国でT-Mobileと組んで商用化されており、SpaceXは既に1万機を超える衛星網を運用中です。
AST SpaceMobileも同様のサービスを進めており、アマゾンはこの分野では後発になります。
ただしGlobalstarの周波数免許とAppleという巨大な既存顧客基盤を一括で取り込めることは、アマゾンが自力で基盤を積み上げるより短期間で競争に加わる後押しになりそうです。
ブロードバンド用の衛星網(旧Project Kuiper)を補完する形で、IoT機器や車載通信への応用も視野に入っているとされ、スマホ以外の分野でも各社の衛星争奪戦は広がっていく見通しです。
Shiritomo GADGET編集部の考察
今回の話で興味深いのは、消費者が新しいハードウェアを何ひとつ買わなくても恩恵を受けられる点です。
衛星通信対応スマホという製品カテゴリーが独立して存在するのではなく、既存のiPhoneやAndroid端末がソフトウェアと裏側のインフラだけで「圏外知らず」になっていく。
これは端末の買い替えサイクルよりもキャリアや事業者間の周波数争奪戦のほうが、私たちの体験を左右する時代に入ったことを示しています。
今後は「対応周波数を持つ衛星事業者と提携しているか」が、スマホ選びの隠れた判断軸になるかもしれません。
まとめ
アマゾンは5,105機の衛星でスマホへの直接通信を実現しようとしており、Globalstar買収とApple提携を軸に2028年のサービス開始を目指しています。
地上網に頼らない通信という選択肢が、特別な機種変更なしに手元のスマホへ届く日は、思ったより近いのかもしれません。
さらに深掘りしたい方へ
- Amazon Files FCC Application for 5,105-Satellite Constellation to Enable Direct-to-Device Mobile Services(SatNews)
- Amazon Leo D2D: How satellites will connect your phone from space(About Amazon)
- Amazon to acquire Globalstar and expand Amazon Leo satellite network(About Amazon)
- Amazon seeks federal approval to launch 5,105 satellites for direct-to-device network(CNBC)
