ネット広告の苦情が初めて6割超えに——過去最多12,589件のJARO報告から、SNS広告運用者が読み取るべきこと

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年8月5日 更新
ネット広告の苦情が初めて6割超えに——過去最多12,589件のJARO報告から、SNS広告運用者が読み取るべきこと

12,589件。
日本広告審査機構(JARO)が2026年7月に公表した2025年度の苦情受付件数です。
コロナ禍で外出自粛の影響もあってか苦情が膨らんだ2020年度の11,560件を、設立以来はじめて上回りました。
しかも今回、インターネット広告への苦情が初めて全体の6割を突破しています。
SNSでの広告出稿を担当している人や、フィード上の広告クリエイティブを日常的に目にしている人にとっては、他人事ではない数字ではないでしょうか。

先に結論をまとめると:
– JAROへの苦情は2025年度に12,589件で過去最多、うちネット広告が60.9%と初めて6割を超えました
– 電子コミック(電子書籍・動画配信)業種の性的表現、閉じるボタンを誤タップさせるようなダークパターンへの苦情が急増しています
– 生成AIで著名人になりすました投資詐欺広告への苦情は前年比478.8%と、AI悪用の広告被害が急拡大しています

何が起きたのか

JAROが公表したのは、2025年度(2025年4月〜2026年3月)に受け付けた苦情・意見の集計結果です。
総数12,589件のうち、ネット広告に関するものが前年度の1.7倍に増え、初めて全体の60.9%を占めました。
特に「表現」に関する苦情は2.4倍、掲載の「手法」に関する苦情は2倍という伸び方で、量だけでなく苦情の中身も悪化しているのが今回の特徴です。

JAROは半年おきに苦情受付状況をまとめて公表していて、今回の発表に先立って上半期分もXの公式アカウントで告知していました。

半年分だけで前年同期の1.7倍という数字が出ていた時点で、通期でも記録的な件数になることはある程度見えていたとも言えます。
ただ、実際に蓋を開けてみると、単純な「量の増加」以上に、苦情の中身が偏っていたことが調べていくうちに分かってきました。

調べて分かったこと

なぜネット広告への苦情がここまで増えたのか

内訳を見ると、苦情が集中していたのは特定の業種です。
電子書籍・ビデオ・音楽配信(電子コミック広告を含む)業種には1,171件の苦情が寄せられ、そのうち909件が性的表現に対するものでした。
2026年6〜7月にかけて性的な広告表現への社会的な関心が報道などで高まったこともあり、この時期に苦情が急増したとJAROは説明しています。
性的広告への苦情は1,937件にのぼり、その75.9%が女性からの申し立てだったという点も見逃せません。
しかも、その8割以上がネット広告に集中しています。

「閉じるボタン」問題とは何か

もうひとつ急増したのが、いわゆるダークパターン(利用者を意図せず不利な操作へ誘導するUI設計)への苦情です。
閉じるボタンがわざと誤タップしやすい位置に配置されていたり、広告が画面全体を覆って本来のコンテンツの閲覧を妨害したりするケースへの苦情が、前年比163.8%の1,027件に達しました。
バナーやインタースティシャル広告(コンテンツの合間に全画面表示される広告)を扱う運用担当者にとっては、クリエイティブの中身だけでなく「配置」や「操作性」も苦情の対象になり得るという教訓になりそうです。

生成AIは広告苦情にどう関わっているのか

今回の集計で目を引くのが、生成AIを使ったとみられる投資詐欺広告への苦情です。
証券・債券・投資その他のカテゴリでの苦情は158件で、前年比478.8%という突出した伸び率を記録しました。
著名人の顔や声をAIで合成した動画を使い、実在の人物が投資を推奨しているかのように見せかける手口が広がっていることが背景にあるとみられます。
生成AIコンテンツを使った演出そのものが問題というより、なりすましや誤認を誘う使い方が苦情の急増につながっている構図です。

医薬部外品をECで販売する特定の広告主に対しては、「気持ち悪い」「汚い」といった苦情が479件も集中し、JAROが当該広告主に苦情の情報提供を2回行った事例も報告されています。
同じ表現への苦情が繰り返し寄せられる状況は、広告主・媒体社どちらの立場からも軽視できないものでしょう。

こうした状況について、JAROの発表を見た人からはこんな反応も出ています。

Shiritomo編集部の考察:明日からやることは2つ

今回のデータで運用担当者が持ち帰るべきポイントは2つあると考えます。
ひとつは、クリエイティブの表現内容だけでなく「閉じるボタンの配置」のようなUI設計も苦情対象になり得るという視点です。
誤タップを誘発する導線は短期的なクリック率を稼げても、ブランドへの不信感という形で長期的なコストになりかねません。
もうひとつは、生成AIを演出に使う場合の透明性です。
AI生成であることを明示しないまま著名人らしき人物を登場させる手法は、意図せずとも「なりすまし広告」に近い印象を与えかねません。
SNS広告の審査基準はプラットフォームごとに異なりますが、JAROのような第三者機関への苦情動向は、審査基準が今後どう厳格化していくかを先取りするヒントにもなります。

まとめ

JAROへの苦情が過去最多を更新し、その主戦場がネット広告に移ったという事実は、SNSでの広告出稿が当たり前になった今、運用担当者にとって無視できないシグナルです。
表現の過激さだけでなく、UI設計や生成AIの使い方まで含めて、出稿前に一歩立ち止まって確認する習慣が求められているようです。

さらに深掘りしたい方へ

今回の記事は、以下の一次情報をもとに執筆しました。