「仕事が早く終わっても、早く帰らないですよね、日本人って」——DeNA IT本部長が明かす、AI効率化なのに社員が早く帰らない理由
「経営『AIでラクして早く帰って』→社員『帰らない』 工数最大9割減のDeNAも悩むAI効率化の壁」。
ITmediaのニュース速報アカウントが投稿したこの見出しが、Xで想像以上の反応を呼びました。
経営「AIでラクして早く帰って」→社員「帰らない」 工数最大9割減のDeNAも悩むAI効率化の壁https://t.co/CAMZcK8Rnt
— ITmedia NEWS (@itmedia_news) 2026年9月17日
AI活用が「進んでいる企業」の代表格として語られがちなDeNAが、成果を出したその先で足踏みしている——そのギャップに、多くの働き手が自分ごととして反応した投稿です。
AIツールを日々の業務に取り入れているSNS運用者・ビジネスパーソンにとっても、「効率化した分、時間は本当に空くのか」は他人事ではないテーマといえます。
先に結論をまとめると:
– DeNAは法務のツール利用規約チェックを9割、ライブ配信サービス「Pococha」の配信審査を6割削減するなど、AI活用で大幅な工数削減に成功
– しかし浮いた時間の分だけ社員が仕事を「詰め込む」形になり、退勤時間は変わらず。
IT本部長の金子俊一氏は「楽になってサボってくれるなら、成果が出ているので全然ウェルカム」と社内で呼びかけているが実現していない
– パーソル総合研究所の調査でも、生成AIでタスク時間は平均16.7%短縮される一方、実際に業務時間が減った人は利用者の25.4%にとどまり、浮いた時間の61.2%が別の仕事に再投下されている実態が明らかに。
DeNA固有ではなく日本企業に共通する構造的な課題とみられる
Xで見つかったバズの発端
itmedia_newsの投稿は570件の「いいね」を集め、137件の引用ポストを誘発しました。
「工数最大9割減」という具体的な数字と、「それでも帰らない」という意外性のある結末が、リポスト・引用の広がりを後押ししたと見られます。
一方、この報道より少し前には、DeNA会長の南場智子氏のAI活用への姿勢を紹介する投稿も大きな反響を呼んでいました。
DeNA南場智子さん、
— うちた (@uchita_success) 2026年9月14日
「今、一番"差"をつけられるタイミング」
正解が出切ると、速い人の優位は消える。
南場さんがAIをフル活用するのも、同じ発想。
差がつくのは、正解が固まる前だけ↓pic.twitter.com/M0VKoTwXXU https://t.co/cMS3GPiClF
「DeNA南場智子さん、『今、一番”差”をつけられるタイミング』 正解が出切ると、速い人の優位は消える。
南場さんがAIをフル活用するのも、同じ発想。
差がつくのは、正解が固まる前だけ」——こちらは1,200件を超える「いいね」を集め、南場氏の発信への関心の高さがうかがえます。
両者を並べると、「AIをどう使うか」を語る南場氏の発信と、「使った結果どうなったか」を伝える現場発の報道という、対照的な2つの視点が浮かび上がります。
調べて分かったこと
DeNAはどれだけAI効率化を実現したのか
DeNAは2025年2月に「AIオールイン」を宣言し、IT本部長の金子俊一氏が掲げたのは「業務量を半分に、生産性を倍に」という目標でした。
1年半が経過した現在、成果として挙がっている数字は小さくありません。
法務によるツール利用規約チェックは9割の工数削減、ライブ配信サービス「Pococha」の配信審査は6割の工数削減を実現したとされ、開発プロジェクトの一部では作業の95%をAIが代替する例も出ているといいます。
なぜ「早く帰る」にはつながらなかったのか
数字の上では大きな成果が出ているにもかかわらず、社員の退勤時間はほとんど変わっていません。
金子氏は「仕事が早く終わっても、早く帰らないですよね、日本人って」と話し、現場からは「楽になってはいない」という声が上がっているといいます。
同様の構造は、SNSで話題になった投稿でも「8時間で1件やっていた人が、8時間で2件やる」と表現されています。
週40時間という労働時間の枠は変わらないまま、浮いた時間に新しいタスクが流れ込んでくるということです。
金子氏はこの状況について「楽になってサボってくれるなら、成果が出ているので全然ウェルカム」「早く帰ってくれ」と社内で繰り返し伝えてきたといいますが、浮いた時間の使い道について「決して無駄ではない。
ただ、時間が空いたらこれをやりたいと思っていたところに、どんどん作業工数が流れていっている」とも説明しています。
南場智子氏が語る「進捗不足」の中身
南場氏自身も、2026年3月のイベントで人材シフトの遅れを認めていました。
「効率化は進んだ。
ところが作業が楽になった分、自ら仕事を詰め込むことが分かった」と述べ、AIで浮いたはずの人員を新規事業へ回す計画が「思ったほどできていない」ことを課題として挙げています。
今回の9月の報道でも、南場氏は「DeNAのメンバー、真面目ですからね」と、社員の勤勉さが結果的に効率化の果実を目減りさせている構図を語っています。
26年度からはマネジャーの人事評価に「人材の輩出」を組み込むなど、制度面からのテコ入れも予定されているといいます。
DeNAだけの現象ではない、パーソル総研の調査が示す全体像
この「効率化しても楽にならない」現象は、DeNA固有の問題ではなさそうです。
パーソル総合研究所が2026年2月に発表した調査によると、生成AIを使った業務は使わない場合に比べて平均16.7%(週26.4分)の時間短縮効果があった一方、実際に自分の業務時間全体が減ったと答えた人は利用者のわずか25.4%にとどまりました。
さらに、削減できた時間のうち61.2%は結局「仕事」に再投下されており、その大半(75.4%)が日常業務だったといいます。
AIが生み出した余白は、放っておけば自動的に別の仕事で埋まるという構造が、調査データからも裏付けられた形です。
Shiritomo AI編集部の考察
DeNAの事例が示しているのは、AIツールを導入するだけでは労働時間は減らないという、身も蓋もない現実だと考えます。
工数が9割減っても、6割減っても、「空いた時間で何をやめるか」を組織として決めない限り、その時間は別のタスクで埋まっていく。
これはツールの性能の問題ではなく、評価制度や業務設計の問題です。
実際にDeNAが26年度からマネジャー評価に「人材の輩出」を組み込もうとしているのは、AI活用の次のフェーズが「導入」から「配分の意思決定」へ移っていることの表れといえそうです。
SNS運用や業務効率化にAIを取り入れている現場でも、「浮いた時間で新しい発信を増やす」だけでなく、「何をやめるか」を同時に決める視点が問われる局面に入っているのではないでしょうか。
まとめ
DeNAは法務チェックで9割、配信審査で6割という大幅な工数削減をAIで実現しましたが、社員の退勤時間は変わらず、浮いた時間は新たな業務に再投下されているのが実態です。
パーソル総合研究所の調査も同様の傾向を示しており、AI効率化の恩恵を「時間の余裕」として実感するには、ツール導入だけでなく「何をやめるか」を組織として決める段階に来ていることがうかがえます。
さらに深掘りしたい方へ
今回取り上げたDeNAの詳しい取材内容は、ITmediaの記事で公開されています。
南場智子氏が人材シフトの遅れを語った2026年3月時点の様子は、こちらの記事で詳しく紹介されています。