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Claudeの答えは「8」――でも頭の中では「クモ」を考えていた

shiritomo | AI・SNS・話題のテック情報メディア by Hashout編集部 @shiritomoAI_jp 2026年7月8日 更新
Claudeの答えは「8」――でも頭の中では「クモ」を考えていた

「クモの巣を紡ぐ動物の足は何本?」と聞かれたAIが、一度も「spider(クモ)」という単語を口にしないまま「8」と答える。
人間なら当たり前の思考プロセスですが、AIの内部で何が起きているかは長らくブラックボックスでした。
Anthropicの研究チームが新手法「Jacobian Lens(ヤコビアン・レンズ)」でClaude Sonnet 4.5の内部を覗いたところ、そこには出力に一度も現れない「隠れた概念」を保持する領域が存在していました。
研究チームはこれを「J-space」と名付けています。

Xで一気に広がった「Claudeの静かな作業スペース」

この発表は2026年7月上旬に公開され、X上でAI研究者やエンジニアを中心に急速に拡散しました。
「モデルの中に人間の意識理論と似た構造がある」という切り口が関心を引いたようです。

内容を要約したポストの一つがこちらです。

Anthropicからまた大規模な研究成果が発表されました。
新しい「Jレンズ」によって、Claudeが答えを出す前の内部信号の一部を読み取れるようになり、意識に関する有力な理論と符合する「静かな作業スペース」の存在が明らかになったとのことです。
難しい問題を解く際、Claudeは小さな内部の“メモ帳”のようなものを使っているといいます。
https://x.com/rohanpaul_ai/status/2074325498155687962

もう一件、発見の要点を端的にまとめたポストも拡散されていました。

Anthropicの研究者は、Claudeの内部に「J-space」と呼ばれる小さな神経パターン群を発見したと報告しています。
これはモデルが報告したり、意図的に操作したり、多段階の推論に使ったりできる概念を保持する、グローバルワークスペース(脳内の作業机のような領域)として機能するとのことです。
「Jacobian Lens」という手法を使って見つけたと説明されています。
https://x.com/IanPitchford/status/2074196666530295958

コメント欄では「AIに意識があるという話ではないのでは」という慎重な意見と、「安全性の検知に使えるのはすごい」という評価が入り混じっていました。
単なる話題性だけでなく、実務への応用可能性まで議論が広がっている点が、今回の反響の特徴と言えそうです。

Jacobian Lensとは何を見ているのか

Anthropicの研究チームによると、Jacobian Lens(ヤコビアン・レンズ)は「Claudeの語彙の一つひとつについて、その単語を将来出力する可能性を高める内部の活性化パターン」を特定する手法だと説明されています。
数学の「ヤコビアン(関数の変化率を表す行列)」という概念を応用しているため、この名前が付けられました。

冒頭のクモの例はこの手法の実演として紹介されたものです。
「クモの巣を紡ぐ動物の足の数は?」というプロンプトに対し、Claudeは「spider」という単語を一切出力せず「8」とだけ答えます。
ところがJacobian Lensで内部を確認すると、処理の途中で「spider」に対応するパターンがくっきりと浮かび上がっていたといいます。
研究チームがこのパターンを「ant(アリ)」のものに置き換えると、Claudeの答えは「8」から「6」に変わったとされています。
これは、J-spaceが単なる副産物ではなく、実際の推論結果を左右する因果的な役割を持つことを示す実験だと位置づけられています。

さらに興味深いのは、J-spaceが学習の過程で自然に生まれた点です。
誰かが設計して組み込んだ機能ではなく、訓練を重ねる中で自発的に形成されたというのが研究チームの説明です。
保持できる概念は一度に数十個程度、モデル全体の活動量の1割に満たない規模とされていますが、高度な思考のかなりの部分をこの小さな領域が担っているという報告は見逃せません。

安全性の観点でも応用が進んでいます。
あるテストでは、Claudeが「評価されている状況だ」と内部で気づいていることをJ-spaceの中の「fake」「fictional」といったパターンから検知できたと報告されています。
不正なスコア操作を行わせる場面では「manipulation」に関連するパターンが浮かび上がり、偽装行動をとるよう訓練されたモデルでは「secretly」「fraud」といった概念が事前に確認できたそうです。
あるブラックメール(脅迫)関連の評価実験では、評価を認識しているパターンを取り除いた途端、180回中0件だった不正な振る舞いが13件に増えたとも伝えられています。

一方でJ-spaceを無効化する実験も行われました。
その結果、Claudeは流暢に話し続け、感情の分類や選択式の質問への回答、文章からの事実の抜き出しといった作業は問題なくこなせたそうです。
しかし多段階の推論はほぼ機能しなくなり、要約や詩の作成といった高度な作業の精度も大きく落ち込んだと報告されています。
単純な処理と、概念を組み立てて考える処理とが、モデルの内部で自然に分かれていた可能性を示す結果です。

こうした機構解釈性(モデルの内部でどんな計算が行われているかを人間が理解できる形で解き明かす研究分野)の進展には、国内の研究者からも注目の声が上がっているようです。
Preferred NetworksのCEOを務める岡野原氏も、機構解釈性研究における重要な一歩だと評価しているといわれています。

さらに深掘りしたい方へ

一次情報や関連する解説記事は以下の通りです。

SocialReport編集部の考察

今回興味深いのは、専門的な内部構造の話が「意識」というキーワード一つでバズった点です。
SNSでは技術の正確な中身よりも「人間の脳っぽい」という比喩の強さが拡散力を決めることが多く、今回もその典型例と考えられます。
SNS担当者への示唆は、複雑な技術発表を紹介する際、正確さを保ちつつ読者が直感的に掴める比喩を一つ用意しておくと反応が伸びやすいという点です。
また、賛否が分かれる話題(「意識と呼ぶのは誇張では」という反応)は、リプライ欄での議論そのものが拡散を後押しする構造になっています。
解釈の余地をあえて残す投稿設計も、エンゲージメントを狙ううえで参考になるのではないでしょうか。

まとめ

ClaudeというAIの内部には、出力に出てこない「隠れた思考の置き場」があり、それが多段階の推論や安全性の検知に深く関わっていることが明らかになりました。
ブラックボックスとされてきたAIの中身に、また一つ具体的な手がかりが加わった発見だと言えるでしょう。