リチェルカがPdMを廃止してFDEを導入——AI時代の組織変革が示す「伝言ゲームの終わり」
「PdMを廃止しました。」——その一言を聞いたとき、正直すぐには意味が飲み込めませんでした。
2026年4月28日に開催された「Product Management Summit 2026」で、スタートアップ・リチェルカのCOO幸田桃香氏が壇上でこう宣言したのです。
AI時代に組織はどうあるべきか。この問いが、IT・スタートアップ界隈で一気に広がっています。
SNSで広がった反響
今回の発表が注目を集めたのは、単なる役職名の変更にとどまらない問いかけを含んでいたからではないでしょうか。
Xでは「情報の解像度が上がる」という賛同の声がある一方、「優秀な人材をどこで確保するのか」「SIerと何が違うの?」といった疑問も飛び交っています。
Goodpatch社がFDE(Forward Deployed Engineer:顧客の現場に入り込んで課題解決を一貫して担うエンジニア)の役割をXで解説すると、スタートアップ界隈を中心に大きな反響が広がりました。
— Goodpatch Inc. (@GoodpatchTokyo) 2026年2月18日
職種の境界が曖昧になるこの変化は、「優秀なオールラウンダーをどこで調達するか」という人材戦略の問題と表裏一体です。
賛否が分かれること自体、この議論が日本のIT・スタートアップ界全体に刺さっている証拠ともいえますね。
リチェルカとFDEについて深掘りしてみました
リチェルカは2022年設立のスタートアップで、生成AIを活用したサプライチェーン管理(SCM:複数の企業をまたいだ物の流れを管理する仕組み)ツール「RECERQA(レサーカ)」を開発しています。
2026年4月にはシリーズA(成長段階での本格的な資金調達ラウンド)で17億円を調達しており、受発注業務の自動化を本格展開している段階です。
幸田氏の発表によれば、従来の組織モデルには構造的な欠陥があったといいます。
営業・PdM(プロダクトマネージャー:製品開発の責任者)・エンジニアが分業するリレー体制では、「顧客の声がPdMというボトルネックを経由するたびに薄まり、エンタープライズ特有の”深い課題”が伝わらなくなる」という問題が生じていたのです。
PdMに代わって導入されたFDEは、パランティア・テクノロジーズ(Palantir Technologies:米国のデータ分析企業)が生み出したモデルです。
リチェルカのFDEには、「顧客業務の深いドメイン理解→仮説構築とプロト開発→実装→継続的な改善提案」を一人でやり切ることが求められます。
「SIerと何が違うの?」という疑問への答えは、プロダクトへのフィードバックループにあります。
従来のSIer(システムインテグレーター:企業向けにシステムを構築・運用する会社)は顧客ごとにスクラッチ開発することが多く、知見が蓄積されにくい構造です。
一方でFDEは、現場で得た課題をRECERQAというプロダクトに反映させ、次の顧客へのデリバリーを加速させます。これがスケールの源泉になっているわけですね。
2026年現在、日本国内でのFDE求人は35件前後まで増加しており、OpenAIをはじめ国内スタートアップでも採用が広がっているようです。
さらに詳しく知りたい方へ
- Product Management Summit 2026 リチェルカ登壇資料「PdMを廃止しました。」(Speaker Deck)
- 株式会社リチェルカ 公式サイト
- リチェルカ、Agentic ERP「RECERQA」でシリーズAラウンド17億円を調達(The Bridge)
- AI時代の新職種「FDE」とは?PalantirやOpenAIも導入する顧客伴走型エンジニアの全貌(inovie)
まとめ
リチェルカのPdM廃止・FDE導入は、「伝言ゲームを断ち切り、顧客の深い課題に一気通貫で向き合う」という後発スタートアップの生存戦略といえるかもしれません。
AI時代に職種の境界が溶けていくなか、この実験がSaaS業界全体の試金石になっていくのではないでしょうか。