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「画像生成AIだけは嫌」の理由——VTuber界隈で広がるAI一貫性議論を深掘りしてみた

shiritomo | AI・SNS・話題のテック情報メディア by Hashout編集部 @shiritomoAI_jp 2026年5月11日 更新
「画像生成AIだけは嫌」の理由——VTuber界隈で広がるAI一貫性議論を深掘りしてみた

ちょっと面白いことに気づきました。

VTuberのなかに、AIを全面否定しているわけではないのに、「画像生成AIは使わない・使わせない」という立場を明確にしている方が多くいます。
音声合成AIを使ったり、動画編集にAIツールを活用したりはするのに、なぜ画像生成AIだけが忌避されるのか。
そんな疑問がXで広がり、クリエイターとファンの間で活発な議論が起きました。

「なぜそれだけは嫌なのか」という問い

Xで最初に話題になったのは、VTuberファンの一人が「画像生成AIだけを避けるのは一貫していないのでは?」と投稿したことでした。
「他のAIツールは使うのに、生成AIイラストだけ特別視するのはなぜか」という指摘に対して、イラストレーターやVTuber関係者から反論が相次ぎました。

この議論の論点を整理するとこうなります。

「一貫していない」とする意見(提起側):
– 音声合成・動画編集・文章生成のAIは使うのに、画像生成だけ避けるのは技術への向き合い方が矛盾している

「画像生成AIは別問題」とする意見(イラストレーター側):
– 学習データの取得方法の問題(著作権者の許諾なしに大量収集)がある
– 生成物が既存作品に類似した場合に著作権侵害となりうる
– 「ママ(キャラクターデザインを担当したイラストレーター)の許諾を取っているのか」という問題

この議論の核心は「技術そのものへの否定ではなく、学習データの倫理的問題」にあります。
音声合成AIは一般的に本人の声で学習させる。
画像生成AIは不特定多数の著作物を無断収集して学習させることが多い——この違いが「一貫性がない」という批判に対するイラストレーター側の答えです。

文化庁の指針と実態のズレ

法的な側面も調べてみました。
文化庁は2024年3月に「AIと著作権に関する考え方について」を公表しています。

主なポイントはこうです。
著作権法第30-4条により、「情報解析目的」のAI学習は著作権者の許諾なしに行えます。
ただし生成物が既存の著作物と類似する場合は、著作権侵害となる可能性があります。
文化庁の指針は「原則許諾不要」としながら、「生成物の類似性によっては侵害」という二段構えになっています。

この「グレーゾーン」がVTuber界隈での不安を生んでいます。
ファンアートを生成AIで描いた場合、それがVTuberのキャラクターデザイン(ママの著作物)に類似すれば侵害の可能性がある。
「AIイラストだから」ではなく「特定キャラクターに類似した生成物だから」という観点からの炎上リスクを、界隈全体が警戒しているのです。

「理解してから使おう」というメッセージ

議論のなかでイラストレーターたちが繰り返し訴えていたのは「技術の成り立ちを調べてほしい」という言葉でした。
「なぜその技術が存在しているのか」「何を素材にして学習しているのか」を知ったうえで使ってほしい、という主張です。

これは批判ではなく、共存のための対話の入口だと思います。
実際、2024年以降に登場した画像生成モデルのなかには、許諾を得たデータだけで学習したものや、アーティストがオプトアウト(学習対象から除外)を申請できる仕組みを持つものも増えてきています。
Adobeが許諾素材のみで学習した「Firefly」を提供しているのがその代表例で、商業利用での著作権リスクを避けたいケースに選ばれています。

VTuber界隈が直面する「ファンアート文化」との両立

VTuber界隈には、ファンが2次創作(ファンアート・二次小説・動画など)を楽しむ豊かな文化があります。
この文化を成立させているのは、「VTuberの中の人(所属タレント)とイラストレーター(ママ)の両方が暗黙に認めている」という信頼関係です。

AIイラストによる2次創作がその信頼関係を揺るがす可能性——これが、VTuberファンの一部が敏感になる背景でもあります。
「誰でも簡単に高品質なファンアートを作れる」ことは便利ですが、それがイラストレーターの仕事や表現を侵食するものであれば、文化の土台そのものが崩れかねないという懸念です。

VTuber界隈でAI活用を進めたい立場の人も、イラストレーターの権利を守りたい立場の人も、「どこに問題があるか」を共有することが、最初の一歩になるのではないでしょうか。
技術が進化するほど、「誰がどんな目的で使うか」という問いはより切実になります。

さらに深掘りしたい方へ

まとめ

「画像生成AIだけは嫌」という立場は一貫性がないのではなく、学習データの倫理的問題という固有の問題への反応です。
技術への賛否より、「何が問題になっているか」を理解する議論がVTuber界隈で始まっています。
法的なグレーゾーンが残るなか、クリエイターとファンがどう向き合っていくかは、AIイラスト全体の未来にも関わる問いでしょう。