体重50kgを支え跳躍力2〜3倍 東大発「Lunavity」、2018年の映像がいま再拡散中

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年8月13日 更新
体重50kgを支え跳躍力2〜3倍 東大発「Lunavity」、2018年の映像がいま再拡散中

「体重50kgまでを支え、通常の2〜3倍の高さまで跳べる」。
東京大学暦本研究室(暦本純一教授が率いる、人間の身体能力を拡張する技術=Human Augmentationを研究する研究室)が開発したバックパック型ドローン「Lunavity」の紹介には、こう記されています。
ただしこの数値、2026年に測定されたものではありません。
Lunavityが発表されたのは2018年3月、アメリカ・テキサス州で開催されたイベント「SXSW」でのことでした。
当時撮影された紹介映像が最近になってSNS上で再び流れ始め、初めて見た人たちを中心に反応が広がっています。

ガジェット好きの読者にとって気になるのは、「8年前の技術がなぜ今また話題になっているのか」と「実際どこまで実用化が進んだのか」の両方でしょう。
この記事では、SNS上の反応と一次情報の両方から整理します。

先に結論をまとめると:
– Lunavityは2018年に発表された研究プロジェクトであり、2026年の「新製品」ではありません
– 体重50kgまで支え、ジャンプ高さを2〜3倍にする設計だったと海外メディアが報じています(未確認の数値は本文で明記します)
– 開発元の暦本研究室は現在も跳躍支援バックパックの研究を続けており、2026年3月には新たな成果を発表しています

8年前の映像がなぜ今、Xで拡散しているのか

きっかけは、Lunavityの紹介映像が改めてタイムライン上に流れてきたことのようです。
バックパックの上に円形に配置された複数のローター(プロペラを回転させて上向きの推力=浮かせる力を生む装置)が、着地寸前まで機体の姿勢を制御しながら浮遊感のあるジャンプを生み出す様子は、ドローンや人間拡張技術に詳しくない人が見ても一目で伝わるインパクトがあります。

Xでは、仕組みを簡潔に紹介する投稿も見られました。

「人間の跳躍力を拡張するバックパック型の装着式マルチローターシステム」という紹介文の通り、開発したのは東京大学のチームです。
ニュース側の情報によれば、動画の再拡散をきっかけにリハビリテーション用途への期待や、水中運動の代替になり得るという評価もSNS上で見られたとのことでした。
ただしこの文脈は特定の発言者を一次情報で確認できていないため、あくまでSNS上に見られた反応の一つとして紹介するにとどめます。

映像のインパクトだけでは「本当のところ何がすごいのか」「今どこまで実用化が進んでいるのか」までは分かりません。
ここからは一次情報を確認しながら整理していきます。

調べて分かったこと

いつ、どこで発表された技術なのか

Lunavityは2018年3月、東京大学大学院情報学環の暦本純一研究室が開発し、SXSW 2018(アメリカ・オースティンで毎年開催される音楽・映画・テクノロジーの複合イベント)の会場で披露されました。
同じ年には学術会議ACM ISWC(International Symposium on Wearable Computers:ウェアラブル機器研究の国際学会)でも「Augmented Jump: A Backpack Multirotor System for Jumping Ability Augmentation」という論文として発表されています。
名称の「Lunavity」は「Luna(月)」と「Gravity(重力)」を組み合わせた造語で、月面を歩くような軽やかな跳躍感を再現する狙いが込められていました。

スペックはどこまで確認できるのか

海外テック媒体の報道によれば、Lunavityは体重50kgまでの人体を支え、ジャンプ高さを通常の2〜3倍にする設計だったとされています。
フレーム部分の直径は約1.5メートル、装置全体の重量は約60キログラムで、このうちバッテリーだけで約24キログラムを占めていたと伝えられています。
ローターの構成については、海外メディアと学術論文が「オクトコプター(8基のローターを円形に配置するドローン構成)と同様の配置」と説明する一方、国内メディアの一部は「16基のロータを備える」とも報じており、正確な機数は東京大学側の公式発表文では確認できませんでした。
またSXSW発表当時、実際に稼働するプロトタイプの映像は限定的で、初期テストは少人数のユーザーグループを対象に行われた段階だったという報道もあります。

用途を巡る反応では、より具体的な声も見られました。

アミューズメント施設や遊園地からの引き合いを予想する投稿もあり、研究用途にとどまらずエンタメ領域での応用を期待する見方が広がっているようです。

2026年の今、実用化はどこまで進んでいるのか

Lunavity自体が商品化されたという一次情報は見つかりませんでした。
現時点でも研究プロジェクトの域を出ていないとみられます。
ただし、暦本研究室が跳躍支援バックパックの研究をやめたわけではないようです。
2026年3月には、同研究室から新たな成果「Augmented Leap: Human Jump Augmentation Through Apparent Reduced Gravity」が国際会議Augmented Humans 2026で発表されています。
ヘキサコプター(6基のローターを備えるドローン構成)型のバックパックで実効体重を約3分の2まで軽減し、日常的な跳躍の高さを10〜16%、滞空時間を70〜80%延ばすという内容で、災害対応や農作業、過疎地の見回りといった実用的な場面での活用を想定しているとのことです。
Lunavityの直接の後継と明言されているわけではありませんが、同じテーマの研究が8年越しに形を変えて続いていることは確かなようです。
なお暦本氏自身も同じ2026年3月、この国際会議でLifetime Achievement Award(生涯功労賞)を受賞しており、研究の最前線に今もいることがうかがえます。

Shiritomo GADGET編集部の考察

研究デバイスとしてのLunavityを眺めていて気になるのは、名前が生む印象と実際の物理のズレです。
月面の重力は地球の約6分の1(約17%)ですが、海外テック媒体TechEBlogの報道によれば、Lunavityが再現していたのはおよそ4分の1(25%)の重力でした。
つまり厳密には「月面」ではなく「重力が軽くなった状態」に近い設計です。
それでも「Lunavity」というネーミングが強い体験イメージを喚起し、8年後の再拡散を後押ししたのだとすれば、研究ガジェットの寿命はスペック表の正確さよりもコンセプトの分かりやすさに左右されるのかもしれません。
もう一点気になるのは、総重量約60kgのうちバッテリーが約24kgを占めるという構成です。
跳躍力を拡張する仕組み自体は完成していても、バッテリーの軽量化が進まない限り日常的に持ち歩ける製品にはなりにくい構造だと感じます。
2026年の後継研究がヘキサコプター化とともに軽量化と実利用寄りの用途(災害対応や農作業)へ舵を切っているのは、まさにこの壁への一つの回答のように見えます。

まとめ

Lunavityは2018年に生まれた研究プロジェクトであり、2026年に再拡散した映像は当時の記録映像です。
体重50kgまで支え跳躍力を2〜3倍にする設計だったことは複数の海外メディアで確認できましたが、商品化を裏付ける一次情報はなく、研究は後継プロジェクトという形で今も続いているようです。

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