BioWare閉鎖で新作『マスエフェクト』も中止に――署名25万人のファンがタイムズスクエアに広告
「ケーキ」――そう書かれた投稿に添えられていたのは、甘いお菓子ではなく、精巧に塗装されたフィギュア作品でした。
タグには「#SaveMassEffect」。
2026年10月21日、EA(エレクトロニック・アーツ)が長編RPGスタジオ「BioWare」の閉鎖と、開発途中だった新作『マスエフェクト』の中止を発表してから、Xにはこうした投稿が増えています。
好きなシリーズが終わると知ったとき、ファンが実際にどう動くのかに関心がある人にとって、この騒動はちょうどいい観察材料になりそうです。
先に結論をまとめると:
– EAは2026年10月21日、BioWareの閉鎖と開発中だった新作『マスエフェクト』の中止を発表しました
– ファンが立ち上げた署名活動「#SaveMassEffect」は、わずか数日で数十万人規模に膨らんでいます
– 10月26日にはニューヨーク・タイムズスクエアの電子広告看板にもこのハッシュタグが掲出されました
30年続いたスタジオが、なぜ閉鎖されたのか
BioWareはカナダ・エドモントンを拠点に、30年以上にわたって『バルダーズ・ゲート』『ニーバーウィンター・ナイツ』『スター・ウォーズ:ナイツ・オブ・ジ・オールドリパブリック』『ドラゴンエイジ』『マスエフェクト』『Anthem』といったタイトルを手がけてきたRPGスタジオです。
EAのチーフ・スタジオ・オフィサーであるCam Weber氏とCOO(最高執行責任者)のDavid Tinson氏は、全社員向けの連絡で「ここ数カ月、事業全体を厳しく見直してきた」としたうえで、BioWareの閉鎖を伝えました。
あわせて実施される人員削減はEA全体でおよそ400人、全従業員の約3%にあたり、このうちBioWareに所属していたのは約50人とされています。
公式発表によれば、BioWareの一部チームは次回作『マスエフェクト』の初期開発を進めていましたが、EAはこの取り組みそのものを打ち切る判断をしました。
シリーズを愛用してきたプレイヤーが署名活動を始めたのは、この発表のわずか数時間後のことです。
一枚の投稿からも、ファンの熱量そのものは十分伝わってきます。
ケーキ#SaveMassEffect pic.twitter.com/vY0VzVB1f6
— Mazmorra_Customs (@MazmorraStudio) 2026年10月26日
文章はただ「ケーキ」のひとことだけでしたが、写真に写っていたのは、宇宙服のようなスーツをまとったキャラクターと、もう一体の人物が寄り添う場面を再現した、塗装の作り込みが細かいフィギュア作品でした。
ただ、こうした投稿がどこまで広がっているのか、数字で確かめてみることにしました。
署名はどこまで広がったのか
ファンコミュニティがChange.org上で立ち上げた請願「#SaveMassEffect」は、EAに対して新作開発の継続か、他スタジオへのIPライセンス供与のいずれかを求める内容です。
25万人超えという最終的な数字だけでは実感が湧きにくいかもしれませんが、閉鎖発表から2日後の時点で、すでに5万7000件を超えていたと伝える投稿がありました。
「#SaveMassEffectの署名はBioWare閉鎖を受けて5万7000件を超えた」という趣旨の投稿です。
The #SaveMassEffect petition has passed 57,000 signatures after BioWare's closure. It asks EA to resume development or license the franchise to another studio. What's your favorite Mass Effect game? https://t.co/la4VvLUsic pic.twitter.com/JFmaci10Vu
— GameRant (@GameRant) 2026年10月23日
複数の海外ゲームメディアの報道をあわせて確認すると、署名はその後も伸び続け、10月26日から27日にかけて25万件を超えたと伝えられています。
閉鎖発表からわずか1週間足らずで、数字が4倍以上に膨らんだ計算です。
タイムズスクエアの広告には何が書かれていたのか
署名活動の広がりは、オンラインだけにとどまりませんでした。
10月26日、ファン団体「We Are Mass Effect」が配信者のKala Elizabeth氏と共同で、ニューヨーク・タイムズスクエアにある「1560 Broadway」の電子広告看板に広告枠を購入したと報じられています。
広告はシリーズでおなじみの「N7」のロゴとあわせて、「Keelah Si’yah(キーラ・シヤ)」という作中の種族が使う言葉と「#SaveMassEffect」のハッシュタグを映し出し、1時間ごとに15秒間、終日にわたって表示されたとのことです。
ファン有志がわずか数日で、ニューヨークの一等地に広告を出すところまで動いたというのは、1本のゲームシリーズに対する思い入れの大きさをあらためて示しています。
動きはさらに広がり、シリーズの主人公「シェパード」を演じてきた声優2人も声を上げました。
女性版シェパードを演じるJennifer Hale氏と、男性版を演じるMark Meer氏は、それぞれ支援を呼びかける動画を公開したと海外メディアが伝えています。
Hale氏は「ファンがクラウドファンディングを立ち上げ、投資家や優れたゲーム会社が加わり、集合体としてマスエフェクトを蘇らせる」未来を語り、Meer氏は「マスエフェクトを救え。
持ちこたえよう……あの署名にサインしてくれ」と応じたとされています。
Shiritomo GAME編集部の考察
ゲームスタジオの閉鎖自体は、ここ数年珍しい出来事ではありません。
ただ今回のケースが目を引くのは、署名という「意思表示」で終わらず、タイムズスクエアの広告枠という実際の出費を伴う行動にまで発展した点です。
企業の事業判断は、基本的にファンの声だけで覆るものではなく、EAが示した理由もコスト構造の見直しというビジネス上の判断でした。
その意味で、署名の数字そのものが開発再開に直結する可能性は高くないというのが率直な見方です。
それでも、今回のように可視化された熱量は、IPを他スタジオへライセンスするかどうかという、より現実的な選択肢の判断材料にはなり得ます。
ファンコミュニティの行動力を測るうえでも、今後の展開を追う価値があるケースだと感じます。
まとめ
EAによるBioWare閉鎖と新作『マスエフェクト』の中止発表から1週間足らずで、署名活動はタイムズスクエアの広告にまで発展しました。
開発の継続や他スタジオへのライセンスが実現するかどうかは不透明ですが、ファンコミュニティがどこまで声を届けられるのか、引き続き注目されます。