SNS運用Tips 読了 7 分

87%が元祖と知らないフジパン、「んーぱの大大大逆襲」で千葉繁に暴れさせた理由

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年9月17日 更新
87%が元祖と知らないフジパン、「んーぱの大大大逆襲」で千葉繁に暴れさせた理由

赤く灯った歩行者用信号機。
それだけが写った静止画の先に、動画が再生されます。
もう一本の動画のサムネイルには、青空を突き刺すように立つビルの屋上に「フジパン スナックサンド」と大きく掲げられた看板が、まるで怪獣映画の一場面のような見上げるアングルで写っています。
フジパン公式X(@neobata_fujipan)が9月15日と16日に相次いで投稿したこの2本の動画は、自社の看板商品を自分たちでディスる”自虐広告”です。
企業がSNSであえて自社の弱点を晒す手法は、なぜここまで反応を集めるのか。
スナックサンドの事例から、その仕組みを掘り下げてみます。

先に結論をまとめると:
– フジパン「スナックサンド」は1975年9月15日発売で、山崎製パン「ランチパック」(1984年発売)より9年早い携帯サンドイッチの元祖です
– 自社調査の「87%が元祖と知らない」という結果を逆手に取り、キャラクター「んーぱ」が自虐的に暴走する特撮風CMをシリーズ化しています
– 続編「んーぱの大大大逆襲」は声優・千葉繁のナレーションを起用し、前作よりインプレッション・いいね・引用リポストのいずれも大きく伸びました

元祖なのに「知られていない」と自ら宣言したフジパン

フジパンのスナックサンドは1975年9月15日発売、2025年に50周年を迎えたロングセラー商品です。
9月15日は「スナックサンドの日」にも登録されています。
そのアニバーサリーイヤーに合わせて始まったのが、自社キャラクター「んーぱ」を主役にした一連のCM展開です。

9月15日に投稿された1本目の動画では、次のようなコピーが添えられていました。

「元祖なのに、87%の人に元祖だと思わていないスナックサンド。
その逆襲が、今はじまる———。」というコピー通り、動画は”元祖なのに知られていない”という自社の弱みをそのまま前面に出す構成です。
いいね654件、引用リポスト50件と、まずまずの反応を集めました。
ただ、この「87%」「9年早い」といった数字をそのまま鵜呑みにしていいのか気になったので、一次情報を確かめてみました。

調べて分かったこと

本当にランチパックより9年も早かったのか?

フジパン公式サイトによると、スナックサンドは1975年9月15日発売で、当時「密閉性のあるサンドイッチは日本には無く」、日本初の携帯サンドイッチだったと説明されています。
一方、山崎製パンの「ランチパック」は1984年1月発売です。
発売年を単純に引き算すると9年差で、フジパンが先に市場を切り開いていたのは事実として確認できました

なぜ「元祖」なのに知名度で負けたのか?

ここが今回の自虐CMの核心部分です。
ビジネスジャーナルの分析記事によると、2024年3月~2025年2月の日経POSデータでは「ランチパック68.48%、スナックサンド29.11%」とすでに大きく逆転しているといいます。
小売関係者の指摘として紹介されているのは、山崎製パンの売上規模がフジパンの約4倍あり、スーパーなどでより多くの棚(陳列スペース)を確保できる点です。
加えてランチパックは年間168種類もの新商品を投入し、テレビCMにも積極的に投資してきました。
フジパン自身が「独占販売ではなく、他社から依頼があれば製造販売を認める」という業界協調的な方針を取っていたことも、結果的にランチパックの躍進を許した一因として挙げられています。
つまり「元祖なのに負けた」は誇張ではなく、棚取りとCM投資量の差という構造的な理由が背景にあるようです。

千葉繁のナレーションで、なぜ拡散が跳ねたのか?

翌16日に投稿された続編がこちらです。

「んーぱの大大大逆襲」と名付けられたこの動画は、声優の千葉繁がナレーションを担当しています。
数字で見ると差は歴然です。
1本目はインプレッション29,517・いいね654・リポスト214・引用50でしたが、2本目はインプレッション380,467・いいね5,139・リポスト2,200・引用348まで伸びました。
インプレッションは約13倍、いいねは約8倍、引用リポストは約7倍という伸び方です。
動画のサムネイルを見る限り、1本目は信号機のカットから始まり、2本目は都市を見上げるような特撮風の構図に切り替わっており、続編になるほど”暴走”の規模感を視覚的にも強めている様子がうかがえます。
プレスリリースによれば、9月15日公開のTVCMでは女優の森七菜が出演し、Web版のナレーションに千葉繁を起用したとのことです。

自虐マーケティングは、他の企業のSNS運用にも応用できるのか?

今回の事例から見えてくるのは、自虐広告が効くのは「弱みを誇張しているから」ではなく、自社調査に基づく具体的な数字(87%)という裏付けがあるからという点です。
根拠のない自虐は単なる卑下に見えてしまいますが、数字が伴うと「言われてみれば確かに」という納得感が生まれます。
加えて、「んーぱ」という固定キャラクターに一貫して自虐役を担わせ、「逆襲」から「大大大逆襲」へとタイトルをエスカレーションさせるシリーズ構成にしている点も見逃せません。
1話完結ではなく続き物にすることで、フォロワーが次の投稿を待つ状態を作れています。
ADVERTIMESの報道によれば、フジパンは昨年の50周年キャンペーンでも同様の自虐手法を展開し、売上が大幅に伸びたと伝えられています。
単発のバズ狙いではなく、複数年にわたって同じ手法を積み上げてきた結果というのが実態に近そうです。

Shiritomo編集部の考察:数字が伸びたのは「弱み」ではなく「続編感」

今回特に目を引くのは、リポスト(約10倍)よりも引用リポスト(約7倍)の伸びがそれに迫るペースだった点です。
引用リポストは、ただ拡散するだけでなく「自分のコメントを添えて」共有する行為なので、見た人が黙って流すのではなく、一言添えたくなる内容だったことを示しています。
「元祖なのに知られていない」という自虐フレーズだけなら共感で終わりますが、そこに千葉繁の熱量あるナレーションと”大大大逆襲”というタイトルの盛り方が加わったことで、ツッコミどころ・語りどころが増えたのではないでしょうか。
SNS運用の観点で応用するなら、①自虐の根拠になる具体的な自社データを1つ用意する、②キャラクターや企画名をシリーズ化してタイトルを段階的に強める、の2点は他業種でも再現しやすい型だと考えられます。

まとめ

フジパン「スナックサンド」は本当にランチパックより9年早い携帯サンドイッチの元祖でしたが、棚取りやCM投資量の差で知名度は逆転されていました。
その事実を自虐ネタとして数字入りで発信し、続編でナレーターを豪華にしてタイトルをエスカレーションさせたことが、引用リポストの伸びという「語りたくなる拡散」につながったようです。

さらに深掘りしたい方へ