アイラップ発売50周年、SNSで売上450%に――1976年ポリ袋の復活の経緯
「1976年 日本初の箱入りポリ袋 アイラップ誕生、話題となる」。
そんな一文から始まる年表形式の投稿に、880件のいいねと178件のリポストが集まりました。
矢印でつながれた年表をたどると、全国展開→価格競争で撤退→日本海側だけで生き残る→SNSで全国復帰、という波乱の歴史が見えてきます。
今年発売から50年を迎えるロングセラー商品が、なぜSNSをきっかけに全国区へ戻ってきたのか。
キッチン用品としてだけでなく、防災グッズとしても注目される理由を調べました。
先に結論をまとめると:
– 「アイラップ」は1976年発売、特許切れ後の価格競争で一度は売場から姿を消した商品
– 2018年の公式SNS開始をきっかけに調理テクニックが拡散し、売上は約450%に拡大
– 今年は発売50周年で、1976〜1978年の初期デザインを再現した復刻パッケージも登場している
何が起きたのか
投稿したのは、アイラップを製造・販売する岩谷マテリアルの公式Xアカウント(@i_wrap_official)です。
年表のような形式で、1976年の発売から今日に至るまでの経緯を振り返っています。
1976年
— アイラップ【公式】 (@i_wrap_official) 2026年10月18日
日本初の箱入りポリ袋
アイラップ誕生、話題となる
↓
類似品・海外品が増加
↓
1980年代
価格競争、売場から駆逐される
↓
日本海側エリアで浸透、
以後30年間維持
↓
2018年
SNSアカウントが誕生
↓
バズった事で全国に復帰
↓
防災分野で活躍、話題に
↓
類似品・海外品が増加(2回目) https://t.co/4ZiDOPCxy4 pic.twitter.com/374qLxlLcl
投稿に添付された写真には、商品パッケージから手でアイラップを取り出す場面が写っています。
パッケージには「60枚入」「25cm×35cm」の文字があり、現行のアイラップのものです。
この投稿には880件のいいね、178件のリポスト、15件の引用がつき、インプレッション数は23,290件に達しました。
19日の夜には、「最初から日本海側でしか売ってなかったと思ってました 実は復活だったんですね」という引用が1件寄せられています。
最初から日本海側でしか売ってなかったと思ってました
— いっそのこと@ナウル屋東大阪布施出張所 大阪日本長田商會 (@TarouKim10504) 2026年10月19日
実は復活だったんですね https://t.co/l2QCqISE7O
この引用のように、アイラップを北陸・日本海側のローカル商品だと思っていた人もいたようです。
ですが一次情報を確認すると、もともとは全国展開していた商品だったことが分かりました。
調べて分かったこと
全国展開→撤退→ローカル商品化という前半生
アイラップは1976年、日本で初めての家庭用箱入りポリ袋として、テレビCM付きで全国展開されました。
高密度ポリエチレン製のマチ付き袋で、ロール式のラップにはできない使い方ができる点が特徴でした。
しかし特許が切れると類似品が乱立し、価格競争の末に多くの売場から姿を消していきます。
生き残ったのは新潟・山形・富山・石川・福井など日本海側のエリアで、以後約30年にわたってこの地域だけで定着した「ご当地商品」のような存在になっていました。
2017年まではおよそ20年間、売上はほぼ横ばいの状態が続いていたといいます。
2018年のSNS開始が転機に
転機になったのは2018年の公式SNSアカウント開設でした。
ユーザーがアイラップを使った時短調理や防災活用のアイデアを次々に投稿するようになり、商品の機能性があらためて注目されたのです。
代表例が、袋ごと電子レンジで作る蒸しパンのレシピ投稿で、約3万件のいいねを集めました。
このレシピで紹介された「アイラップホルダー」という関連グッズの売上は、投稿をきっかけに約12倍に伸びたと報じられています。
SNS開始前の約20年間横ばいだった売上は、開始後に約450%まで拡大しました。
2017年まで日本海側中心だった販路が、再び全国に戻った形です。
フォロワー数も30万人を超える規模に育っています。
アイラップの使い方、炊飯や防災にどう使うのか
近年とくに注目されているのが、防災分野での活用です。
断水時でも、袋の中に米と水を入れて湯煎すればご飯が炊ける「アイラップ炊飯」というテクニックがSNSで話題になりました。
食器を汚さずに済むため、水が貴重な被災時の調理法として紹介される機会が増えています。
アイラップはグッドデザイン賞や防災グッズ大賞なども受賞しており、キッチン用品から防災グッズへと役割を広げてきたことがうかがえます。
実際、「アイラップ 使い方」という言葉は月間4,400件前後、「アイラップ 防災」も月間140件前後で検索され続けており、一過性のブームではなく、日常的に調べられ続けている言葉であることが分かります(Google広告のキーワードプランナーによる2026年9月時点のデータ)。
発売50周年で復刻パッケージも登場
今年2026年は、アイラップの発売からちょうど50年の節目にあたります。
これを記念して、1976〜1978年の発売当初のデザインを再現した復刻パッケージが、2026年3月12日からAmazonなどのWEB通販限定で販売されています。
現行品とサイズ・容量は変わらないまま、パッケージだけが当時のレトロなデザインに戻っているのが特徴です。
今回の投稿で振り返られた「波乱の50年史」は、この節目を意識したものだったとみられます。
Shiritomo編集部の考察:ユーザー投稿が商品を再定義した好例
アイラップの事例が示しているのは、企業自身が新しい用途を宣伝したわけではなく、ユーザーが見つけた使い方がSNSで広がり、商品の立ち位置そのものを変えたという点です。
メーカー側が最初から「防災グッズ」として売り出していたわけではなく、ユーザーの投稿がきっかけで新しい市場を掘り当てた形になります。
SNS運用の観点で参考になるのは、企業アカウントがユーザー発のアイデアを否定せず拾い上げ、積極的に発信してきたことでしょう。
ロングセラー商品が一度衰退しても、使い方の提案次第で再評価される余地があることを、アイラップの450%という数字は示しています。
自社製品の「本来の強み」をあらためて洗い出し、ユーザーがどう使っているかを観察する姿勢は、他の業種のSNS担当者にとっても参考になりそうです。
まとめ
1976年発売のアイラップは、価格競争で一度は売場から姿を消しながらも、2018年のSNS開始をきっかけに全国区へ復帰しました。
発売50周年を迎えた今、復刻パッケージの登場とともに、その歩みがあらためて注目を集めています。