「地味な一日は、逃げ場がない」——Setlogの二極化が映すBeRealの既視感
1時間に1回、スマホが震えます。
撮るのは2秒だけの動画。
それを1日分つなげるとVlog(動画日記)が自動でできあがる——韓国発アプリ「Setlog(セットログ)」の仕組みはシンプルですが、Xの反応は正反対に割れています。
「友達の一日が一気に見られて最高」と喜ぶ声の隣で、「寝る、食べるだけの日は投稿できない」と嘆く声が目立つのです。
SNSで日常を発信する立場の人ほど、この二極化の構造は他人事ではないはずです。
先に結論をまとめると:
– Setlogが求める「1時間ごとの記録」は、日常にイベント性がある人ほど有利で、平凡な一日を送る人ほど負担になりやすい構造です
– 同じ「盛らない日常共有」を掲げたBeRealも、強制的なリアルタイム性がやがて飽きとプレッシャーに転じた過去があります
– ブランドや個人が発信に使うなら、イベント化できる瞬間を選びつつ「盛っていない」空気を壊さない工夫が必要です
「1時間ごとの通知」がXで割れた反応を生んだ理由
Setlogは2025年12月にリリースされた韓国発のアプリで、SEVENTEENやaespaのカリナなどK-POPアイドルが使い始めたことをきっかけに、日本でもZ世代を中心に一気に広がりました。
1時間おきに届く通知に合わせて2秒の動画を撮り、グループ内で共有すると、1日の終わりに自動で1本のVlogにまとまる。
編集の手間がないぶん、BeRealより続けやすいという評判が支持を広げています。

実際にXでは、バンドやアイドルのスタッフが撮った「イベント当日のSetlog」が高い反響を集めています。
【スタッフです】#アレキのsetlog 始めました⚡️
— [Alexandros] (@alexandroscrew) 2026年7月26日
今回はスタッフ目線での #YOKOHAMAUNITE音楽祭 の1日をご紹介!#Alexandros #ORANGERANGE @orangerangenow @unite_ongakusai pic.twitter.com/Bs5KdVHrKu
このツイートは1,500件以上の「いいね」を集めていますが、内容はライブイベント当日、スタッフ目線で追った1日です。
撮る対象に困らない特別な日だからこそ、動画のコマ数も自然に埋まっていく——そう考えると、腑に落ちる部分があります。
ただ、この盛り上がりだけを見ていると、なぜ「地味な日常」を嘆く声が同時に出てくるのか説明がつきません。
そこで、アプリの仕組みと過去の類似事例を調べてみました。
調べて分かったこと
なぜ「地味な日常」だと投稿できなくなるのか?
Setlogには、撮影できなかった時間帯をテキストだけで説明できる機能もあります。
運営側も「何もない時間帯」が発生することは織り込み済みなのでしょう。
それでも多くのユーザーが「投稿できない」と感じる背景には、通知の頻度そのものがあると考えられます。
BeRealが1日1回の撮影だったのに対し、Setlogは1時間ごと。
1日に何度も「今、何をしているか」を見せる必要があるぶん、ネタになる出来事がない時間帯の“空白”が目立ちやすい構造になっています。
友人グループの中で誰かが刺激的な1日を見せていれば、自分の平凡な時間との落差はより意識されやすくなるはずです。
コンサートや遠征、撮影現場といった「非日常」を過ごしている人たちの投稿は、この点で相性が良いといえます。
#遠野キャンプ Day5の様子を #setlog でお届けします!
— 日テレ・東京ヴェルディベレーザ公式⚽ (@tokyo_beleza) 2026年7月27日
オフとなったDay5は、同部屋の2人が担当してくれました💚
🎥 #眞城美春 選手
🎥 #安藤梢 選手#beleza#日テレ・東京ヴェルディベレーザ pic.twitter.com/yddcgJ7nNa
サッカークラブの選手たちがキャンプの1日をSetlogで届けたこの投稿のように、もともと1日の中に見せどころが多い立場ほど、アプリの仕組みと噛み合いやすいのです。
逆に言えば、通勤・在宅・勉強が中心の日常を送る人ほど、同じ頻度で「見せる中身」を探すこと自体がストレスになってしまいます。
BeRealでも同じ現象が起きていたのか?
Setlogが掲げる「盛らない日常の共有」は、BeRealが先に打ち出したコンセプトです。
フランス発のBeRealは、Instagramの「盛る文化」に疲れたZ世代の受け皿として2022年前後に急速に広がりました。
しかし利用が定着するにつれ、強制的なリアルタイム撮影という仕組み自体が負担になっていったと分析されています。
具体的には、毎日似たような投稿が続くことへの単調さ・飽き、そして「リアルであること」自体を演出してしまうという矛盾が指摘されてきました。
ありのままを見せるはずが、結局は「どう見られるか」を意識してしまう——本物らしさを売りにしたアプリほど、本物らしさを演じるプレッシャーを生みやすいという逆説は、Setlogにもそのまま当てはまりそうです。
BeRealはその後、利用率の伸び悩みが指摘され、運営会社もVoodooに売却されるという経緯をたどりました。
Setlogが「1時間ごと」というより高頻度の仕組みを採用している以上、同じ疲れがより早く、より強く表れても不思議ではありません。
実際、30代ライターが試用した際も、通知の多さそのものを負担に感じたという声が出ています。
ユルさが売りのはずのアプリが、使い方次第では監視に近い感覚に変わってしまう——このあたりが、二極化の分かれ目になっているのではないでしょうか。
Shiritomo編集部の考察:発信者が見るべき2つのサイン
Setlogでいいねを集めている投稿の多くが、バンド・アイドル・スポーツチームなど「もともと見せどころのある1日」を過ごす発信者に偏っている点は見逃せません。
ブランドや個人がこうした日常共有型アプリを運用に使うなら、毎日投稿することにこだわるより、イベントが立つ日を狙って集中的に見せる方が反応につながりやすいでしょう。
無理に「地味な日常」を埋めようとすると、発信者自身が最初に疲れてしまいます。
もう一つ注目したいのは、ユーザー疲れの予兆です。
BeRealの失速時にも見られた「通知の多さがしんどい」「毎日同じで飽きた」というコメントは、利用率が落ち始める数カ月前から目立つようになる傾向があります。
今回のSetlogでも同種の声がすでにXに出てきている以上、担当者は「盛り上がっている」という表面的な数字だけでなく、こうしたネガティブな声の増減もあわせて定点観測しておく価値がありそうです。
まとめ
Setlogの二極化は、アプリが悪いというより、「盛らない日常」を高頻度で見せ合う仕組みそのものが持つ宿命に近いものです。
BeRealがたどった道をなぞるのか、それとも別の形で定着していくのか、しばらく注視する価値がありそうです。
さらに深掘りしたい方へ
BeRealの失速の経緯については、BeRealはなぜ失速したのか?Z世代熱狂のSNSが犯した過ちとVoodoo売却の真相で詳しく分析されています。
Setlogがどんなアプリか一から知りたい方は、BeRealの次はこれ。
K-POPスターが火をつけた、Z世代の人気アプリ「Setlog」とは?もあわせて参考にしてください。


