「45,000円が1日で30万円に」——高市総理の偽サイト詐欺を機に、政府7府省庁がSNS広告に”本人確認”を要請

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年8月8日 更新
「45,000円が1日で30万円に」——高市総理の偽サイト詐欺を機に、政府7府省庁がSNS広告に”本人確認”を要請

「日本政府が開発した金融ソリューションにより、45,000円をたった1日で300,000円に変えることができます」。
首相官邸ホームページを模した偽サイトに、こんな一文が並んでいました。
背景には高市総理の映像。
もっともらしいレイアウトの下に、荒唐無稽な数字が書かれています。

この手の偽サイトは今年に入って何度も確認されてきましたが、2026年8月7日、ついに政府が動きました。
警察庁や総務省など7つの府省庁が、Google・Meta・X・TikTok・LINEヤフーの5社に対して共同で対策強化を要請したのです。
SNSで広告を出したり、SNS上のブランド発信を管理したりしている人にとって、この動きは他人事ではありません。

先に結論をまとめると:
– 政府7府省庁(警察庁・金融庁・消費者庁・デジタル庁・総務省・法務省・経済産業省)が、Google・Meta・X・TikTok・LINEヤフーの5社に「広告主の本人確認強化」「広告の透明性向上」「詐欺広告の迅速な削除」を要請しました
– 5社は2026年10月16日までに具体的な対策方法をデジタル庁へ報告し、2027年3月16日までに実施件数などの結果報告が求められています
– SNS型投資詐欺の2025年被害額は約1,274億7,000万円(前年比46.3%増)。
今回の要請は、広告出稿のハードルが上がる転換点になりそうです

何が起きたのか——高市総理の映像が繰り返し悪用されてきた

首相官邸(災害・危機管理情報)アカウントは、2026年1月23日にも次のような注意喚起を投稿しています。

投稿に添付されたスクリーンショットには、首相官邸のロゴをそのまま流用したページに「政府の保証により、すべての日本国民が毎月9,000,000円の安定した収入を達成できるようになりました」という文言と、高市総理が話す動画のサムネイルが並んでいました。
実在する政府サイトのデザインをそのまま模倣し、あり得ない金額を「政府保証」の言葉で包んで信用させる手口です。

さらに時をさかのぼると、警察庁も2025年10月28日、同様の偽広告について注意喚起していました。

こちらはニュースサイトを装った偽記事のスクリーンショットで、「高市早苗氏と日本の主要機関が新たな投資プラットフォームを発表」「日本人が月533万円以上を稼ぐ方法」という見出しに、日本銀行や三菱UFJフィナンシャル・グループの名前まで無断で並べていました。
ちなみに今回の8月7日の要請の直接のきっかけになったのは、こうした偽サイト・偽広告が2026年に入っても収まらず、むしろ手口が巧妙化していたことです。
加えて2026年3月には、実際には存在しない暗号資産「サナエトークン」に高市首相本人が関与を否定する事態も起きており、なりすまし被害の裾野は投資詐欺だけにとどまらなくなっていました。

こうした個別の注意喚起だけでは被害の拡大に追いつかない——。
そこで政府は、プラットフォーム側の仕組みそのものに手を入れる方向に舵を切りました。

調べて分かったこと

政府は具体的に何を求めたのか?

METIなど関係省庁の発表によれば、要請内容は大きく3つです。

  1. 電子的な認証手段を含めた、広告主の本人確認の確実な実施
  2. 広告主の名称・所在地・本人確認の有無を利用者が確認できるようにする、広告の透明性向上
  3. 違法の可能性があるなりすまし詐欺広告について、公的機関からの削除要請に迅速かつ適切に対応すること

対象は5社で、Google・Meta Platforms・X・TikTok(ByteDance傘下)・LINEヤフーです。
読売新聞の報道では「7府省庁が連携してこのような要請を行うのは初めて」とされており、単独省庁の要請にとどまっていたこれまでとは重みが違う動きだと言えます。
5社は2026年10月16日までに対策内容をデジタル庁へ文書で報告し、2027年3月16日までに本人確認件数や削除件数などの実施結果をまとめて提出することが求められています。

なぜ今、この規模の要請になったのか?

背景には数字の裏付けがあります。
警察庁のまとめでは、2025年のSNS型投資詐欺の認知件数は9,538件、被害額は約1,274億7,000万円で、前年比46.3%増でした。
生成AIによるディープフェイク(本人の顔や声をAIで精巧に合成した偽の映像・音声)で著名人の肖像・音声を無断使用する広告が「広く流通」し、経済的な被害だけでなく、なりすまされた本人の社会的信用も損なっている、というのが政府側の説明です。

なお同じ調査では、SNS型投資詐欺の接触ツールとしての利用率はYouTube27.1%、Instagram16.3%、TikTok10.4%、Facebook6.5%、LINE4.8%、Xは2.1%という結果も出ています。
Xでの接触率自体は他プラットフォームより低い一方、要請対象にはしっかり含まれている点は、今回の要請が「今どこで多く起きているか」だけでなく「プラットフォーム全体の広告審査の仕組み」を底上げしようとしていることの表れかもしれません。

過去の要請と何が違うのか?

総務省は2024年6月にも単独でなりすまし型偽広告への対応を大手事業者へ要請していました。
今回はそこからさらに一歩進み、警察庁・金融庁・消費者庁・デジタル庁・法務省・経済産業省まで巻き込んだ7府省庁合同の要請になった点、そして期限付きの報告義務を課した点が大きな違いです。
「お願いベース」から「進捗を報告させる」段階に移った、と捉えるとわかりやすいでしょう。

Shiritomo編集部の考察:広告主が備えておきたいこと

今回の要請そのものに法的拘束力はありませんが、5社が本人確認を強化すれば、実務上は広告出稿時の審査フローが変わる可能性が高いといえます。
特に法人・個人事業主としてSNS広告を出している運用者は、今後、広告アカウントの本人確認情報の登録や更新を求められる場面が増えることを見込んでおいた方がよさそうです。

またブランド側にとっては「広告の透明性向上」も見逃せません。
広告主情報が利用者から見えるようになれば、逆に言えば自社の公式アカウントであることを明示しやすくなるとも言えます。
なりすまし被害に備える意味でも、公式アカウントのプロフィールや広告クリエイティブに、問い合わせ先や公式サイトURLを明記しておくといった基本的な対策の重要性は、今後さらに増していくでしょう。

まとめ

高市総理の映像を悪用した偽サイト・偽広告が繰り返された末に、政府は7府省庁合同でGoogle・Meta・X・TikTok・LINEヤフーへの本人確認強化要請に踏み切りました。
10月16日、そして2027年3月という具体的な期限が設定されたことで、SNS広告の審査体制は今後数か月で目に見えて変わっていく可能性があります。

さらに深掘りしたい方へ

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