「声の権利大事にして」――モンストの人気キャラにAI音声、MIXIが中断に追い込まれた理由
「祝福のお知らせ」を、人気キャラクターの声で届けるはずだった企画が、始まる前に取り下げられた。
MIXIが9月24日、スマートフォンゲーム「モンスターストライク(モンスト)」の人気キャラクター「ガブリエル」がAI音声で自社ニュースを紹介する企画の実施見合わせを発表しました。
企業がキャラクターにAI音声を持たせようとするとき、何が「良い受け止め」と「炎上」を分けるのか。
その分かれ目が見える事例なので、SNS運用やAI活用に関わる人には特に参考になる出来事です。
先に結論をまとめると:
– MIXIは9月24日、モンストの人気キャラ「ガブリエル」がAI音声でニュースを紹介する企画「MIXIニュースリリース by AIガブリエル」の実施を見合わせると発表した
– 9月10日の最初の発表では声優本人の許諾に触れておらず、「声優の声を無断でAI化した」という受け止めが先に広がった
– MIXIは24日になって「声優ご本人に許諾をいただき、本企画のために収録した音声をもとに制作した」と説明したが、公開のタイミングが批判の後だったため火消しにはならなかった
Xでの盛り上がり(何が起きたのか)
MIXIは9月10日、モンストの人気キャラクター「ガブリエル」がAI音声で自社のニュースを「祝福のお知らせ」として届ける企画「MIXIニュースリリース by AIガブリエル」を発表しました。
しかし発表直後からXでは、既存キャラクターの声をAIに置き換えることへの反発が広がりました。
公式アカウント「株式会社MIXI」は9月24日、企画の実施見合わせと、内容や形をあらためて検討する方針を発表しています。
【「MIXIニュースリリース by AIガブリエル」について】
— 株式会社MIXI (@mixi_PR) 2026年9月24日
先日ご紹介した「MIXIニュースリリース by AIガブリエル」は、ニュースリリースの新たな届け方を探る企画として準備を進めてきました。
このたび、本企画の実施を見合わせ、内容や形をあらためて検討することとしました。(1/2)
ただ、この告知だけでは「なぜここまで反発が広がったのか」「声優への配慮はなかったのか」までは分かりません。
発表の経緯をさかのぼって確かめてみました。
調べて分かったこと
なぜここまで批判が広がったのか?
問題の起点は、9月10日の最初の発表内容にありました。
この時点でMIXIは、AI音声が声優本人の許諾を得た収録音声をもとに作られていることには触れていませんでした。
そのため「既存キャラの声を本人に無断でAI化したのではないか」という受け止めが先に広がり、Xでは声優の権利保護を求める声が相次ぎました。
実施見合わせの一報を受けて、経緯を整理して伝える投稿も広がりました。
合成音声や生成AIそのものへの批判が多く撤回に至った、と見る向きが目立ちます。
9月10日にMIXIからAIキャラ(AIガブリエル)活動の発表がありましたが、先ほど撤回のニュースが届きました。
— 毛玉雀 (@kedamasuzume) 2026年9月24日
合成音声や生成AIについての批判が多く撤回したようです。
既存キャラのAI化はやはり色々と話題になりますね😲 https://t.co/YXrAAx2c9Z
声優の許諾はあったのに、なぜ止まらなかったのか?
MIXIは実施見合わせの発表にあわせて、「声優ご本人に許諾をいただき、本企画のために収録した音声をもとに制作した」と経緯を明らかにしました。
つまり、声優本人の同意なく声を合成していたわけではなかったことになります。
ただし、この説明が出たのは批判がすでに広がった9月24日で、最初の9月10日の発表には含まれていませんでした。
情報を後出しにしたことで、「無断で声をAI化した」という誤解を解く前に炎上が先行してしまった形です。
スポニチアネックスの報道を引用したある投稿は、見出しにあった「声の権利大事にして」という言葉を添えていました。
投稿者自身は「声優の仕事をAIに置き換えようとしただけ」に思える、と受け止めています。
MIXI 「モンスト」AI企画の見合わせを発表 キャラの音声をAIで生成し物議「声の権利大事にして」(スポニチアネックス) https://t.co/NDmfVasZ5W
— とらべる安納芋 (@nyankenji2025) 2026年9月24日
たしかに、ガブリエルは担当してる声優さんもいるはずですし、ストライカーの端くれの俺にも単に「声優の仕事をAIに置き換えようとしただけ」に思えます
今後どうなるのか?
MIXIは「楽しみながらサプライズを持って届けられる方法を模索する」として、内容や形をあらためて検討する方針を示しています。
ただし9月24日時点で、再開時期や具体的な代替案は明らかにされていません。
声優本人の許諾があったという説明自体を評価する声もあれば、「既存キャラではなくオリジナルのAIキャラクターを使えばよかったのでは」という代替案を提案する声もXでは見られ、今後どんな形に落ち着くのか注目されます。
Shiritomo編集部の考察:発表の「順番」を間違えると起きること
今回の一件で目を引くのは、MIXIが批判を浴びた理由そのものよりも、声優への配慮が「なかった」のではなく「発表の順番」が悪かったという点です。
声優本人の許諾を得て収録した音声を使うという、本来であれば安心材料になるはずの情報が、最初の発表に含まれていませんでした。
結果として、SNS上では「無断で声をAI化した」という前提で議論が先に固まってしまい、後から出した正しい情報がその前提を覆すには間に合いませんでした。
SNS上での情報の受け取られ方は、事実そのものよりも「最初にどう見えたか」に強く引っ張られる傾向があります。
企業が既存のキャラクター・IP(知的財産)にAIを絡めた施策を打つときは、懸念が予想される情報(権利処理・本人の同意の有無)を、良い知らせより先に、最初の発表に含めておくことが重要です。
それが「炎上を避ける」だけでなく「反応そのものを変える」ことにつながります。
AIキャラクター活用は今後も増えていくテーマだけに、今回のMIXIの対応は発表設計の反面教師として参考になる事例と言えそうです。
まとめ
MIXIの「AIガブリエル」企画は、声優本人の許諾を得ていたにもかかわらず、その事実を後出しにしたことで批判を招き、実施見合わせに至りました。
既存キャラクターにAIを絡める企業は、権利処理の説明を発表のどこに置くかが、今後の受け止められ方を左右しそうです。