任天堂と特許訴訟中でも「ぜひそうした話をしたい」——パルワールド、Switch2移植に前向き
任天堂とポケモン社から特許権侵害で訴えられている会社のトップが、その任天堂のハードへの移植について聞かれ、前向きな言葉を返しました。
『パルワールド』を開発するポケットペアの溝部拓郎CEOです。
ゲーム系ニュースメディアVGC(Video Games Chronicle)のインタビューで語ったもので、裁判の決着を待たずに語られた発言という点が目を引きます。
ゲーム業界の動向やSNSでの話題の広がり方を追っている読者にとっては、訴訟の相手でもあるプラットフォームにここまではっきり前向きな姿勢を示した背景が気になるところでしょう。
先に結論をまとめると:
– 溝部CEOがVGCのインタビューで、Switch 2版『パルワールド』の可能性について「ぜひそうした話をしたい」と前向きに語りました
– ただし任天堂・ポケモン社との特許訴訟は今も東京地裁で係争中で、移植の話とは別の線で進んでいます
– ポケットペアは訴訟のさなかにも2025年1月、Switch向けに『Overdungeon(オーバーダンジョン)』を発売した実績があります
任天堂と係争中の社長が語った「移植の話をしたい」
この話題を伝えたのは、ゲーム系の話題を発信するアカウント「ゲームのはなし」(@gamenohanashi)です。
日本時間10月28日の朝5時55分に投稿され、1,113件のいいね、345件のリツイート、68万回を超える表示回数を記録しています。
投稿では、溝部CEOがSwitch 2を「日本のゲーム業界にとっても素晴らしいプラットフォーム」と評価したうえで、『パルワールド』の展開について話し合う機会があれば「ぜひそうした話をしたい」と語ったことが紹介されました。
投稿に添付された画像は、プレイヤーキャラクターとさまざまなパル(パルワールドに登場する生物)、そして作品ロゴが並ぶ公式ビジュアルです。
移植そのものを示す新しい画像ではなく、既存の作品イメージが使われています。
任天堂と特許訴訟で争う『パルワールド』開発元ポケットペアの溝部拓郎CEOが、Switch 2への移植協議に前向き。
— ゲームのはなし (@gamenohanashi) 2026年10月27日
Switch 2を日本のゲーム業界にとっても素晴らしいプラットフォームと評価し、将来『パルワールド』の展開について話し合う機会があれば「ぜひそうした話をしたい」と語った。… pic.twitter.com/WfcW19HGPj
ただ、この投稿だけでは「なぜ今になって前向きな発言が出たのか」「訴訟はどうなっているのか」までは分かりません。
そこでVGCの元記事と、任天堂・ポケットペア間の訴訟の経過を調べてみました。
調べて分かったこと
溝部CEOは具体的に何と語ったのか
VGCの記事によると、溝部CEOはSwitch 2のスペックが明らかになったあと、移植が現実的な選択肢になりつつあるかを問われ、「Of course(もちろんです)」と即答しています。
そのうえで、「将来、パルワールドをSwitchプラットフォームに何らかの形で持っていく機会について話し合ったり検討したりできるなら、ぜひそうした会話をしたいです」(原文の趣旨を要約)と述べました。
一方で、進行中の特許訴訟そのものについては「discuss(論じる)」ことはできないとも明言しており、移植への前向きさと訴訟へのコメントは明確に切り分けられています。
なお溝部CEOの立場はこれまで一貫していたわけではありません。
2024年6月、作品の正式発売前の段階では「Switch版は技術的に難しいだろう」という趣旨の発言をしていました。
その後2025年3月には、ポケットペアの広報担当者が「スペックが十分であれば検討する価値は100%ある」とコメントしており、Switch 2のスペック公開を経て、トップ自身の言葉として前向きな姿勢がはっきり示された形です。
任天堂とポケットペアの訴訟は今どこまで進んでいるのか?
訴訟の発端は2024年9月18日です。
任天堂と株式会社ポケモンが東京地方裁判所に、ポケットペアを相手取って特許権侵害訴訟を共同で提起しました。
対象になっているのは3件の特許で、いずれも『パルワールド』のゲームメカニクスに関するものです。
内訳は、モンスター(パル)の捕獲システムに関するものが2件、搭乗・騎乗システムに関するものが1件とされています。
これらの特許は2021年12月22日に出願された元の特許から枝分かれした分割出願で、『パルワールド』の発売後に権利化が進んだという経緯があります。
ポケットペア側は訴訟の影響を避けるためとみられる形で、2024年11月と2025年5月のアップデートでゲームメカニクスに手を加えました。
さらに2025年11月には、原告側(任天堂・ポケモン社)が訴訟の対象範囲を仕様変更前の旧バージョンに絞り込んだと報じられています。
これにより、2026年7月10日に発売された正式版(1.0)そのものが差し止めの対象になる可能性は、実質的にはほぼなくなったとみられています。
訴訟は2026年10月時点で終盤を迎えており、10月1日に証拠調べの期日が開かれ、11月9日には裁判所が心証(判断の方向性)を示す見通しとされています。
仮に原告側が全面勝訴したとしても、請求額はそれぞれ500万円程度にとどまる見込みで、賠償額自体はそれほど大きくありません。
むしろ今回の訴訟は、金銭的な決着よりも「パルワールドのどの表現が任天堂の権利に触れるのか」という線引き自体が焦点になってきた経緯があります。
このほか、日本特許庁では任天堂側が新たに出願したタッチパネル操作によるモンスター捕獲の特許が2026年7月に拒絶査定を受け、任天堂は9月に不服審判を請求しています(詳細は後述の関連記事でも触れています)。
米国でも任天堂の「サブキャラクターを呼び出して戦わせる」特許が再審査され、2026年4月に請求項すべてが拒絶されるなど、任天堂側の特許戦略は一本調子では進んでいないのが実情です。
訴訟中でもSwitch向けに発売した前例はあるのか?
今回の発言を「唐突な方針転換」と見る向きもあるかもしれませんが、ポケットペアには訴訟のさなかにSwitch向けタイトルを出した前例があります。
ローグライクとタワーディフェンスを組み合わせたカードアクション『Overdungeon(オーバーダンジョン)』のNintendo Switch版です。
2025年1月9日、任天堂との訴訟が続く中で突然発売され、当時のゲームメディアでも「係争中にSwitch向けに新作を出す」という組み合わせの珍しさが話題になりました。
『パルワールド』の特許訴訟と、ポケットペアという会社とSwitchプラットフォームとの関係は、もともと別の線で動いていたとも言えそうです。
移植の実現はどこで決まるのか
溝部CEOの発言はあくまで「話し合いたい」という意向の表明であり、Switch 2版『パルワールド』の開発や発売が決まったわけではありません。
VGCの記事でも、CEOは訴訟そのものへのコメントは避けており、移植が実現するかどうかは、①訴訟の決着のつき方、②Switch 2のハードウェア性能で『パルワールド』のようなオープンワールド作品を動かせるかという技術面の2つが鍵を握ると見られます。
11月9日に予定される裁判所の心証開示が、今後の流れを占う1つの節目になりそうです。
Shiritomo GAME編集部の考察:発言のタイミングが示すもの
今回の発言が出たタイミングには、SNSでの情報拡散という観点から見ても意味があります。
訴訟の当事者が互いに沈黙しがちな局面で、CEO自らが「移植の話をしたい」と踏み込んだ発言をすれば、ゲームメディア・SNSの双方で取り上げられやすいことは、溝部CEO自身も織り込んでいたと考えられます。
実際、今回の投稿は68万回超の表示回数を記録しており、訴訟の行方そのものより「ポケットペアは任天堂と敵対一辺倒ではない」というメッセージの方が広く伝わった可能性があります。
企業トップの発言がSNS経由で切り取られて拡散するとき、本来は一体のはずの「係争中の事実」と「将来への期待」が分離して伝わりやすい点は、情報を受け取る側として意識しておきたいところです。
読者としては、派手な見出しだけで判断せず、訴訟の進行状況という地味な事実もあわせて追うことが、今後の展開を見誤らないコツになりそうです。
まとめ
ポケットペアの溝部拓郎CEOは、任天堂との特許訴訟が続く中でもSwitch 2版『パルワールド』の可能性について前向きな姿勢を示しました。
訴訟は2026年10月時点で終盤にさしかかっており、11月9日の裁判所の判断が1つの節目になりそうです。
移植が実現するかどうかは、訴訟の決着とハード性能の両方にかかっています。
さらに深掘りしたい方へ
溝部CEOの発言全文は、VGCの記事Pocketpair would ‘love to have conversations’ to bring Palworld to Switch 2, CEO saysで読むことができます。
訴訟の経過については、弁理士が整理した【2026年7月更新】パルワールド訴訟はどうなった?任天堂との裁判の現状と今後を弁理士が解説にも詳しい解説があります。

