任天堂の特許を止めたのは、任天堂自身が『著作権侵害』と呼ぶファン動画だった
出願番号「2026-019762」。
任天堂と株式会社ポケモンが出していた、タッチパネル操作でモンスターを捕獲する仕組みに関する特許が、日本特許庁から拒絶査定を受けました。
理由として特許庁が挙げたのは、2013年にYouTubeへ投稿された無許可のファンメイド3Dポケモンゲーム映像です。
任天堂側はこの映像自体を「著作権を侵害する動画にすぎない」と主張しましたが、退けられました。
パルワールドを巡る一連の訴訟の行方を追っている人はもちろん、ゲームの特許がどう審査されるのか気になる人にも関係がある話です。
先に結論をまとめると:
– 任天堂・ポケモン社のモンスター捕獲特許(出願番号2026-019762)が拒絶査定を受け、2026年9月3日付で不服審判を請求した
– 拒絶の根拠は2013年の無許可ファンメイド3Dポケモン動画で、任天堂は「著作権侵害の映像」と反論したが特許庁は退けた
– この特許は2024年9月開始のポケットペア社への特許侵害訴訟とは別の出願で、審判の結果は今後の主張の土台にも関わってくる
Xで広がる「パルワールド関連特許」の審判請求
きっかけは、ゲーム系ニュースアカウントの投稿でした。
任天堂が拒絶査定を受けた特許について、査定の内容に反論し、審判を請求したと伝えるものです。
任天堂、拒絶査定された『パルワールド』関連特許に不服審判請求。査定内容に反論し、特許を受けられる発明であると主張https://t.co/E8D23aYy2D pic.twitter.com/RXZjtCCbFr
— ⚡Game*Spark⚡ (@gamespark) 2026年9月11日
1,000件を超えるいいねが付き、パルワールドとポケモンを巡る訴訟の行方を気にする層から反応が集まりました。
ただ、投稿の短い文面だけでは「なぜ拒絶されたのか」「この特許がポケットペア社との訴訟とどう関わるのか」までは分かりません。
そこで拒絶査定の中身と、これまでの訴訟の経緯を一次情報で確認しました。
調べて分かったこと
なぜ2013年のファンメイド動画が拒絶の根拠になったのか?
特許庁は、この特許が示す「捕獲アイテムを対象に向けて操作し、命中判定を行う」という仕組みについて、2013年の無許可ファンプロジェクト「Pokemon Generations」の映像で既に同種のメカニクスが実現されていたと判断し、技術的な新しさ(進歩性)を認めませんでした。
任天堂側は「著作権を侵害する動画の再生映像は、客観的な技術情報として認定できない」と反論しましたが、特許庁は「著作権侵害の有無は進歩性の判断に影響しない」として退けています。
任天堂は不服審判の中で、特許庁が「組み合わせの動機づけ」を十分検討せず、物理的・プログラム的な組み合わせの可能性だけを見ていた点も問題視しているようです。
この特許は、ポケットペア社との訴訟とどう関係しているのか?
任天堂と株式会社ポケモンは2024年9月18日、東京地方裁判所にポケットペアを提訴しています。
対象となったのは、捕獲アイテムの照準・命中判定に関する特許(第7493117号)、捕獲アイテムまたは戦闘キャラクターの選択・照準に関する特許(第7545191号)、搭乗キャラクターへの搭乗に関する特許(第7528390号)の3件です。
今回拒絶査定を受けた出願は、これらとは別の新規出願です。
訴訟自体にすぐ影響するわけではありませんが、モンスター捕獲メカニクス周りの権利を厚くしようとする動きの一環と見られます。
ポケットペア側は2025年1月31日に非侵害を主張、2月21日に無効の抗弁を提出、11月には請求範囲を旧仕様バージョンに限定するなど、双方の応酬は現在も続いています。
任天堂に残された選択肢は?
拒絶査定を受けた出願人には、一般的に3か月以内の不服審判請求、内容を分けた分割出願、あるいは特許取得自体を断念するという3つの道があります。
任天堂は今回、9月3日付で不服審判請求を選びました。
審判で査定が覆るかどうかは今後の特許庁の判断次第で、時間がかかる可能性があります。
Shiritomo GAME編集部の考察
今回の一件は、モンスター収集・捕獲というゲームメカニクスそのものが、業界全体の権利関係に絡み始めていることを示す事例だと考えています。
ファンメイド動画という非公式コンテンツが、思わぬ形で特許審査の証拠として扱われた点も見逃せません。
同種の収集・育成要素を持つ他社タイトルの開発者にとっても、今回の審判の行方は「どこまでが特許で押さえられる仕組みなのか」を測る材料になりそうです。
訴訟本体の進行とあわせて、今後も定期的に確認しておく価値があるトピックです。
まとめ
任天堂の特許出願は、皮肉にも自社が「著作権侵害」と呼ぶファンメイド動画によって拒絶されました。
ポケットペア社との訴訟本体とは別の動きですが、モンスター捕獲メカニクスを巡る権利関係は、今後もこのシリーズの外側で細かく動いていきそうです。
