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新人採用27%→9%、COBOL正解率86.6%――この1ヶ月、AIが奪っていたのは新人の「下積み」でした【編集部まとめ】

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年11月2日 更新
新人採用27%→9%、COBOL正解率86.6%――この1ヶ月、AIが奪っていたのは新人の「下積み」でした【編集部まとめ】

ジュニア採用の比率が27%から9%に落ち込みました。
COBOLの移行正解率は5.4%から86.6%に跳ね上がりました。
全く別の発表に見えるこの2つの数字を並べてみると、同じ場所を指しているのが見えてきます。
この1ヶ月、Shiritomoで公開した記事を並べ直したら、ある共通項に気づきました。

AIを使って仕事を進めている人なら、この変化はいつか自分のチームにも及ぶ話です。

先に結論をまとめると:

  • 新人・若手が担っていた「下積み業務」――COBOL移行、イラスト受注など――が、この1ヶ月でAIに次々と置き換わっていた
  • Anthropic自身の社内データでも新人採用比率が27%→9%に落ち込み、「育成の仕組み」そのものが揺らいでいる
  • 置き換えが進む一方で「誰が次のベテランになるのか」「人を雇う理由は何か」という矛盾を指摘する声も出ている

いま、新人の「下積み」に何が起きているのか

この1ヶ月、Shiritomoで公開した記事を眺め直すと、業界も企業もバラバラなのに同じ場所を指す数字が集まっていることに気づきました。
新人弁護士・新人エンジニア・新人イラストレーター――肩書きは違っても、共通しているのは「経験の浅い人がまず任される仕事」が先に置き換わっている点です。

震源地はAnthropicでした。
同社が10月16日に公表した雇用レポートでは、技術職の新規採用に占めるジュニア層の比率が27%から9%まで落ち込み、AIエージェントの稼働時間が人間の労働時間の6倍に達したと明らかになっています。
同じ会社の研究者が「キャリアプランはもう存在しない」と学生に語った講演と、現場のエンジニアが訴える「丸投げの地獄」が、同じ1ヶ月に並んで出てきました。

ここからは、この1ヶ月に公開した7つの記事を順に見ていきます。
警告の出どころから、現場の悲鳴、そして部署そのものがAIになった極端な事例まで、「新人の仕事」に起きていた変化を1つずつ確認していきます。

この1ヶ月、7つの現場で見えた「新人消滅」の兆し

1. 1年前の警告が、今また刺さる理由

「1〜5年以内に新人弁護士・コンサル・金融のプロの半分が完全に消滅する」。
Anthropic CEOのダリオ・アモデイ氏の発言を紹介する投稿が、10月にXで1日で2400件を超えるいいねを集めたとみられます。
難関資格を取って入った業界の入り口が、数年で崩れるかもしれないという警告です。

調べてみると、この発言は2026年10月に突然出てきたものではありません。
2025年のAxiosの取材で初めて語られ、2026年1月のダボス会議でも、金融・コンサル・法律・テック業界を同時に揺るがしかねないと重ねて警告していました。
つまり今回拡散したのは、約1年前からの持続的な主張の再紹介だったことになります。

一方で、非営利団体の代表を務める弁護士エミリー・ガルビン=アルマンザ氏は「今すぐ新人を雇わなければ、5年後・10年後に経験者がいなくなる」という矛盾を指摘しました。
AIが下積みを代替できても、「育成」という業界の仕組みまでは代替できない、という視点です。
この矛盾は、これから見る他の事例とも重なってきます。

「新人弁護士・コンサル・金融のプロの半分が完全に消滅する」――Anthropicのアモデイ氏警告、日本でも拡散「新人弁護士・コンサル・金融のプロの半分が完全に消滅する」――Anthropicのアモデイ氏警告、日本でも拡散新人弁護士・コンサルらの仕事の半分が数年で消えるというアモデイ氏の警告、その裏付けと反論を確認しました。

2. 警告した本人の会社が、同じ数字を出していた

「3年後にAGIが誕生すると分かっていながら、博士号を取り、ポスドクになり、大学教授になる計画を立てているんですか」。
Anthropicの研究者Jascha Sohl-Dickstein氏が博士課程の学生に投げかけたこの問いを紹介する投稿に、1,000件を超えるいいねがつきました。

この投稿が広がった同じ週に、Anthropic自身が公表した雇用データでも、技術職の新規採用に占めるジュニア層の比率が27%から9%まで落ち込み、対話型AIエージェントの稼働時間が2026年8月時点で従業員自身の労働時間の6倍に達したと明らかになっています。
警告を語った研究者の会社が、まさにその通りの数字を社内で出していたことになります。

Anthropicは同じ時期に、株式の5%を公共の利益のための基金に拠出すると発表しています。
AIが新人の採用枠を奪う側にいる会社自身が、その影響を緩和する施策を同時に打ち出した1週間でした。

「あなたたちのキャリアプランはもう存在しない」――Anthropic研究者が博士課程の学生に贈った警句「あなたたちのキャリアプランはもう存在しない」――Anthropic研究者が博士課程の学生に贈った警句AGIが3年後に来る前提で「キャリアプランはもう存在しない」と語ったAnthropic研究者の講演の中身。

3. 任せすぎた側からも、悲鳴が上がっていた

「ガチで地獄ですよ」。
Claude Codeに開発を丸投げする現場の実態を、エンジニアのゆうき氏がそう投稿しました。
最初の数週間は驚くほど速く進むものの、1〜2ヶ月を過ぎたあたりから「同じAPIなのにファイルごとにレスポンス形式が違う」といった不整合が噴き出すという報告です。

同じ時期、別のエンジニアも「育てたら快適になると信じて育ててたけど、健康被害が出そうなレベルで強いストレスを感じている」と実体験を投稿していました。
前の事例で見たAnthropicの雇用データとも符合します。
対話型セッションの約8割は、エージェントが人間の入力を待っている時間だったと報じられていて、速くなったのはAIの処理だけだったという実態が見えてきます。

根本原因として挙げられているのは、AIが目の前の質問には正確に答えられても、プロジェクト全体を見渡す判断は苦手だという点です。
新人の仕事をAIに渡しても、全体設計の判断までは渡せないという、1つ前の事例とも重なる限界がここにもありました。

「1〜2ヶ月後、ガチで地獄ですよ」――Claude Code丸投げの代償、Anthropicも認める新人育成の壁「1〜2ヶ月後、ガチで地獄ですよ」――Claude Code丸投げの代償、Anthropicも認める新人育成の壁Claude Codeに開発を丸投げしたエンジニアが明かした「1〜2ヶ月後の地獄」、Anthropic自身のデータも同じ方向を指していました。

4. 「下積み」を失ったのは、エンジニアだけではなかった

「生成AIが流行してから、イラスト依頼はほぼ無くなりました」。
イラストレーターのこうした嘆きが10月に話題になりました。
日本フリーランスリーグが約2万5000人規模で実施した調査では、回答者の12.0%が収入減を報告しています(10〜50%減が9.3%、50%以上減が2.7%)。

ただ、業界全体が沈んでいるわけではありません。
最も多かった回答は「ほとんど変わらない」の40.9%で、影響の大きさは人によってかなり差があるのが実態です。
一方で企業側は、AI使用を禁じる契約条件を提示したイラストレーターを「対応が面倒」として避ける動きも出ていて、スキルシェアサービスのココナラは、コンテンツマーケットでのAIイラスト出品そのものを禁止しています。

エンジニアの下積みがClaude Codeに渡ったのと同じ時期に、イラストレーターの下積みも生成AIに渡っていました。
業界は違っても、起きていることの形はよく似ています。

依頼が来なくなった――生成AIの普及でイラストレーターの仕事が激減、企業は契約トラブルを警戒依頼が来なくなった――生成AIの普及でイラストレーターの仕事が激減、企業は契約トラブルを警戒生成AIの普及でイラスト依頼が激減、収入減は1割超と調査で判明。
企業側の契約トラブル警戒も広がっています。

5. 新人が学ぶ機会すらなかった仕事が、先にAIへ渡った

COBOLは今もATM取引の95%、オンライン銀行システムの4割以上を支えているとIBMの調査は伝えています。
60年以上前に生まれたこの言語を扱える技術者は年々減り、新人が学ぶ機会はほとんどありませんでした。

OpenAIは10月20日(日本時間)、COBOLのコードを別言語へ書き換えるテストの正解率が、旧モデルの5.4%から新モデルで86.6%まで伸びたと発表しました。
推論を強めた設定では97.9%に達し、低い推論設定でも利用コストは旧モデルより約39%低く済むといいます。
20言語を対象にした新ベンチマーク「MultiLangBench」でも平均87.4%を記録し、前世代の26.8%から1年足らずで3倍以上に伸びています。

ここで気をつけたいのは、公開されている数字がいずれもOpenAI自身による評価だという点です。
第三者機関による検証はまだ出ていません。
それでも、新人がそもそも学ぶ機会を持てなかった仕事に、先にAIが入り込んだという順序は、他の事例とは少し違う意味を持っています。

新人は書けないのに、AIは書けるようになった――COBOL移行の正解率が86.6%に新人は書けないのに、AIは書けるようになった――COBOL移行の正解率が86.6%にCOBOLコードの移行正解率が1年で5.4%から86.6%に。
新人が学ぶ機会すらなかった仕事がAIに渡った経緯です。

6. 新人どころか、部署そのものがAIになった

部門長、マネージャー、担当者――肩書きはすべて揃っているのに、そこに人間は一人もいません。
NECが2026年8月1日に発足させた「コーポレートAI・ワークフォース部門」は、財務分析や問い合わせ対応までこなす組織でありながら、構成員の全員がAIエージェントです。

運営コストは月およそ35万円と報じられていますが、これはAIを動かすためのトークン費用を指す言葉で、人間の給与とは性質が異なります。
NECはこのコストを将来的に10分の1まで下げる目標を掲げていて、今の35万円はむしろ高めの数字だという見方が実態に近いようです。
対象業務にかかる時間は従来の約7分の1に短縮されたと報じられています。

ここで見逃せないのは、最終的な意思決定とガバナンスは今も人間が担っているという点です。
新人の仕事どころか部署全体をAIに置き換えた極端な事例でも、人が最後に判断する場所だけは残されていました。

「人件費」は月35万円――NECが部門長から社員まで全員AIの無人部署を新設「人件費」は月35万円――NECが部門長から社員まで全員AIの無人部署を新設部門長からAI、月の運用コストは35万円――NECが発足させた全員AIの部署の内側を取材記事から読み解きました。

7. それでも人を雇う理由は、まだ誰も答えられていない

「あなたの給料でClaude Max 20xのアカウント数十個契約できるわけだが、それでもあなたを雇う理由とは?」。
10月8日夕方、いとうさんがXに投稿したこの問いかけは、2,869件のいいねと48万件を超えるインプレッションを集めました。

ちょうど同じ週、Anthropicは10月7日にClaude MaxとTeamプランの契約者向けに毎月のAPIクレジットを発表していました。
Max 20xでは月200ドル分、Teamプランは最大500ドルまでプールできる内容です。
エンジニア1人の人件費で、何十個分のアカウントが契約できる計算が成り立ってしまいます。

ただし、このクレジットは対話形式のClaude Codeセッションには使えず、API経由の開発に限られます。
3つ目の事例で見た「丸投げの地獄」を踏まえると、人を雇う理由は、AIに任せられない全体設計の判断そのものにありそうです。
数字で殴る皮肉混じりの問いかけが拡散したのは、まだその答えが言葉になっていないからではないでしょうか。

「それでもあなたを雇う理由とは?」――AnthropicのAPIクレジットが刺さる採用面接の新問い「それでもあなたを雇う理由とは?」――AnthropicのAPIクレジットが刺さる採用面接の新問いClaude Max 20xで浮いた人件費分、「それでも人を雇う理由」をXの投稿とAnthropicの新施策から考えます。

7個の事例を1枚にまとめると

事例 数字 効いたもの
アモデイ氏の警告 新人弁護士・コンサル・金融の半分が1〜5年で消滅 2025年Axios取材からの持続的な主張の再拡散
Anthropic自社データ ジュニア採用27%→9%、AIエージェント稼働6倍 2026年10月16日公表の雇用レポート
Claude Code丸投げ 1〜2ヶ月で保守不能になる「地獄」 全体設計をAIに任せきった際の不整合
イラストレーター 収入減1割超(12.0%) 日本フリーランスリーグの約2万5000人調査
COBOL移行 正解率5.4%→86.6%(高推論97.9%) OpenAIの低リソース言語強化
NEC無人部署 運用コスト月35万円、処理時間7分の1 部門長からAI社員まで全員AIの実証
採用面接の皮肉 Claude Max 20x月200ドルで数十人分 AnthropicのAPIクレジット新施策

Shiritomo編集部の考察:明日からやることは2つ

7つの記事を並べて見えてくるのは、AIが「新人の仕事」を奪っているのではなく、「新人が仕事を通じて経験を積む仕組み」そのものを奪っている構造です。
COBOLの移行もイラストの受注も、本来は下積み期間を経て身につく技能でした。
それがAIに渡ったことで、Anthropic自身のデータが示すとおりジュニア採用の比率が27%から9%まで落ち込んでいます。
しかし同じ会社の中で、Claude Codeに丸投げしたエンジニアが「1〜2ヶ月後の地獄」を報告している事実も見逃せません。
AIは個々の指示には正確に答えられても、プロジェクト全体を見渡す判断は苦手だと、現場の声が繰り返し指摘しています。

明日からできることは2つです。
1つは、AIに任せる作業と人間が判断を担う領域を先に線引きすること。
NECの事例が示すように、最終判断を人に残す設計は、無人化を進めた組織でも機能する可能性があります。
もう1つは、新人採用そのものを止めるのではなく、「AIが代替できるのは下積みの作業であって、育成という仕組みではない」と割り切り、別の形で経験を積ませる機会を用意することです。

まとめ

新人が担っていた下積みの仕事は、この1ヶ月でAIに次々と置き換わりました。
ただ、育成という仕組みまで置き換えられるのかは、まだ誰にも分かっていません。

さらに深掘りしたい方へ

この1ヶ月は他にも、ChatGPTが日本人の日常に浸透していることを示す調査結果や、東浩紀氏がAGI/ASI以降の人間の価値を語った投稿を読み解く記事が反響を集めました。