「Siriをオフにしても出てくる」——スマホは本当に会話を聞いているのか、仕組みを調べてみました
先日、ABEMAの番組でタレントの小島瑠璃子さんが「すっごく怒ってる」と、めずらしく本気の怒りをあらわにする場面が話題になっていました。
「Siriをオフにしているのに、会話した内容が広告で出てくるのはなんなんですか?」
この一言にXで何千もの「わかる!」が集まりました。
小島瑠璃子が怒り
— オリコンニュース (@oricon) 2026年6月4日
「会話した内容が広告で出てくるのはなぜ?」https://t.co/JEi1yxCScn
検索した内容に関連する広告が表示されるのはわかるが、「Siriもオフにしているのに、会話した内容が広告で出てくるのはなんなんですか?」と疑問。日常で感じている“スマホ盗聴疑惑”への怒りを明かした pic.twitter.com/rKxdN99EuD
「眉間のシワ取りシートのことを友達と話したら、そのあとすぐに広告が出てきた」「おなら直後に消臭系の広告が出た」「旅行先のことを口にしたらホテルの広告が…」——次々と似たような体験談が投稿され、広告とスマートフォンへの不信感がにわかに盛り上がりました。
こうした声のひとつに、こんな投稿もありました。
やっぱりスマホって、通話してなくても会話を聞いてるよね。
人と話してる内容に沿った広告をおすすめで出してくるもん。怖すぎ😰
(大事な会話のときは電源オフ?それとも機内モードでもいけるのかな?!Bluetoothはいつもオフにしておかないと。。) https://t.co/mX3V82iTwi— シャコンヌ (@chaconne_15) 2026年2月10日
「やっぱりスマホって、通話してなくても会話を聞いてるよね。
人と話してる内容に沿った広告をおすすめで出してくるもん。
怖すぎ」という内容です。
同じ疑問を持っている方は、相当な数にのぼるようです。
私もこの話を見て「あれ、自分も似た経験があったな」と思いました。
本当にスマホは会話を聞いているのでしょうか?少し調べてみました。
「盗聴していない」とGoogleもAppleも公式に言っている
まず公式の立場から確認してみましょう。
GoogleもAppleも、スマートフォンが会話を盗聴して広告に使っているという事実は公式に否定しています。
Appleは「iPhoneのマイクはApple製チップの最も低いレベルで制御されており、ソフトウェアだけでは勝手に動作させることができない」と説明しています。
マイクが使用中のときは画面にオレンジ色の点が表示される仕組みになっており、インジケーターが光っていないなら録音は行われていないということです。
Googleも検索履歴・YouTube視聴履歴・インストール済みアプリ・位置情報・ウェブ閲覧履歴などを組み合わせてパーソナライズ広告を配信していることを公式に認めていますが、マイクの常時収録はそのリストに含まれていません。
さらに、ノースイースタン大学の研究チームが数千ものスマートフォンアプリのネットワークトラフィックを詳細に監視しましたが、音声データを秘密裏に送信している証拠は1件も見つかりませんでした。
全ユーザーの音声を常時録音・送信するには膨大なデータ量と電力が必要で、技術的にも非現実的とされています。

「盗聴されている」と感じる理由——二つの認知バイアス
では、なぜ多くの人が「盗聴されている」と感じるのでしょうか。
ここには二つの認知バイアスが関係しています。
ひとつは「頻度錯覚(バーダー・マインホフ現象)」。
一度何かを意識すると、その後同じ情報が目に入りやすくなる心理です。
「新しい靴が欲しい」と思い始めると、街中で靴の広告が急に増えたように感じますよね。
あれと同じで、ある話題を会話したあとに関連広告を「見つけてしまう」頻度が上がります。
もうひとつは「確証バイアス」。
会話と一致した広告だけが強く記憶に残り、無関係な広告(実際には圧倒的に多い)は素通りされます。
「また盗聴広告だ!」と感じた瞬間だけが強く印象に残り、何百もの無関係な広告は記憶に残りません。
そして、実はGoogleやMetaのターゲティング技術は盗聴なしでも驚くほど高精度です。
検索したキーワード、閲覧したサイト、位置情報の変化パターン、購買履歴、フォロワーの傾向、ブラウザのタイムゾーンやページの言語まで組み合わせれば、ユーザーが次に何を欲しがるかを高い確率で予測できます。
「まるで聞いていたみたい」と感じるのは、それだけ精度が高くなったということでもあります。
SNS広告担当者として知っておくべきこと
SNS広告を運用する立場から見ると、この「盗聴疑惑」問題は重要なシグナルです。
ターゲティング精度が上がれば上がるほど、ユーザーは「監視されている」と感じやすくなります。
広告が「刺さる」ほど、不信感も生まれやすいというジレンマが存在しているわけです。
消費者の広告への不信感は世界的に高まる傾向にあり、特にリターゲティング広告(一度見た商品が何度も追いかけてくる広告)への抵抗感は強くなっています。
強引なリターゲティングを続けることは、ブランド好感度を下げるリスクもあります。
「なぜこの広告が表示されているのか」を透明に説明するアプローチや、プライバシー意識の高いユーザーへの配慮が、今後のSNS広告運用では重要になってきます。
「広告の理由」を明示できるプラットフォームの機能を積極的に活用することも一つの手です。
パーソナライズ広告をオフにする設定方法
気になる人向けに、設定の方法を紹介しておきます。
iPhone(iOS)の場合: 「設定」→「プライバシーとセキュリティ」→「Appleの広告」→「パーソナライズされた広告」をオフにする
Androidの場合: 「設定」→「Google」→「広告」→「広告トピック」をオフにする
ただしオフにしても広告の数は変わりません。
関連性が低くなるだけです。
完全に広告をなくしたい場合は、各SNSアプリの設定からも個別に変更できます。
さらに深掘りしたい方へ
- Google パーソナライズド広告の仕組み(公式)
- Apple公式 – iPhoneの広告コントロール方法
- カスペルスキー「スマホはあなたの会話を聞いている?」
- Android で広告のプライバシー設定を管理する(公式)
まとめ
スマートフォンが会話を盗聴して広告に使っている証拠は、今のところ見つかっていません。
「盗聴されている」と感じるのは、ターゲティング技術の高精度化と確証バイアスが組み合わさった結果です。
SNS広告担当者にとっては、精度の高い広告が逆に不信感を生むという現実を意識しておくことが、これからの運用に役立ってくるはずです。
