「いいえ、ご自身が喋っています」口の動きのズレに気づいたCEOが見破ったAI面接の正体
「口の動き全然一致してないですけど大丈夫ですか?」。
オンライン面接でそう尋ねると、画面の向こうから返ってきたのは「いいえ、ご自身が喋っています」という一言でした。
質問と答えがかみ合っているようで、かみ合っていません。
この違和感をきっかけに、AIベンチャーKOWROの採用担当者は、目の前の「応募者」がAIによるなりすましだと確信するに至りました。
採用担当者やリモートで人と接する機会が多い方にとっては、他人事では済まされないかもしれません。
先に結論をまとめると:
– KOWROのオンライン面接で、応募者の発話と口の動きがずれる・社名を読み間違えるなどの違和感からAIなりすましが発覚しました
– 決め手になったのは、社名「KOWRO」を候補者が「COLO」と読み間違えた場面でした
– この事例は北朝鮮のIT技術者による同様の手口が5,000社・6,500件以上確認されているという大きな流れの中にあります
何が起きたのか
この一件を最初にXで公開したのは、KOWROの採用担当者本人でした。
投稿者は「人生で初めてAIが面接に来ました」と切り出し、候補者の発話と口の動きが一致していないことに気づいて「口の動き全然一致してないですけど大丈夫ですか?」と尋ねたところ、「いいえ、ご自身が喋っています」という答えが返ってきたと明かしています。
人生で初めてAIが面接に来ました。
— 原田 祐二 KOWRO CEO (@1230yuji) 2026年9月9日
オンライン面接で、候補者が話してる内容と口の動きが全く一致してなくて「口の動き全然一致してないですけど大丈夫です?」って聞いたら「いいえ、ご自身が喋っていますよ」と返ってきました。
AI時代の採用ってAIを採用する時代ってこと?笑
このポストは1万人以上の「いいね」を集め、多くの採用担当者・エンジニアの間で拡散されました。
投稿者はその後、実際の面接動画も公開しています。
「注意喚起も込めて」という言葉とともに動画を出したのは、同じような手口が他の企業にも及んでいることを知ってほしいという意図があったようです。
では、具体的にどこでAIだと見抜いたのか、動画公開時の説明を確かめてみました。
調べて分かったこと
なぜAIだと確信できたのか?
続けて投稿された動画公開のポストには、見抜いた決め手がより具体的に書かれています。
投稿者によると、動画の開始時点からすでに「なんか変だな」という違和感があり、社名の「KOWRO」を「COLOさん?(KOWROやろ)」と読み間違えられたタイミングで確信に変わったとのことです。
人生で初めてAIが面接に来た動画を公開します。
— 原田 祐二 KOWRO CEO (@1230yuji) 2026年9月10日
注意喚起も込めて。
補足すると動画スタートが面談スタートではなく、なんか変だなって思っててCOLOさん?(KOWROや)ってなったあたりから頬杖ついてAIだと確信を持ってます笑
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発話と口の動きのずれに加えて、自社の名前という基本的な情報を誤るという点が、機械的な受け答えを疑わせる決定打になったと読み取れます。
なお、この動画自体は編集部では未確認のため、映像の具体的な見た目については触れず、投稿者が文章で説明している内容のみをここでは紹介しています。
このポストには「めちゃくちゃおもしろい。
わからないで話してしまうケースもありそう」という反応も寄せられており、見抜けずに採用してしまうケースが実際にあり得るという点に共感が集まっている様子がうかがえました。
北朝鮮IT技術者の潜入という大きな文脈
このKOWROの事例自体、テレビ朝日系(ANN)がKOWROの原田祐二代表への取材を交えて詳しく報じています。
あわせて朝日新聞は、日本人エンジニアを名乗る応募者の日本語がたどたどしく、声と口の動きの一部が合っていなかったという、KOWROとは別の面接ケースを報じました。
この朝日新聞の報道でNTTデータグループのエグゼクティブセキュリティアナリストが、北朝鮮のIT技術者による関与の可能性を指摘しています。
こうした、AIなどを使って別人になりすましオンライン面接を受けるケースは、5,000社・6,500件以上に上るとみられていると報じられています。
目的はリモートワークで企業に入り込み、得た収入を北朝鮮に送金することや、企業の機密情報を盗み取ること、さらにはランサムウェアなどのサイバー攻撃に利用することだとされています。
KOWROの一件が単独の珍事ではなく、こうした大きな流れの一角である可能性がある点は、採用担当者にとって見過ごせない情報でしょう。
Shiritomo編集部の考察:明日からやることは2つ
今回の事例で興味深いのは、決め手になったのが高度な検知技術ではなく、「社名の読み間違い」という極めて人間的な違和感だった点です。
AIによる音声・映像合成の精度が上がるほど、こうした基本情報のミスは相対的に目立ちやすくなります。
採用担当者への示唆は2つあります。
①面接の冒頭で自社名や固有名詞をあえて口頭で確認する質問を入れることで、機械的な受け答えとの齟齬を早期に見つけやすくなります。
②発話と口の動きのずれという違和感を覚えたら、その場で率直に指摘して反応を見ることも有効そうです。
KOWROの採用担当者が実際に取った行動そのものが、現時点で個人にできる有効な対処法の一つだと言えそうです。
まとめ
KOWROのオンライン面接では、発話と口の動きのずれと社名の読み間違いから応募者がAIによるなりすましだと発覚しました。
同種の手口は北朝鮮のIT技術者によるものとみられる事例が5,000社・6,500件以上報告されており、採用の現場で軽視できない問題になりつつあります。
さらに深掘りしたい方へ
北朝鮮IT技術者による採用詐欺の手口と規模については、報道各社が継続的に取材を進めています。