いいね23件の投稿にも登場していた「もろ活」、テレビ朝日まで特集した理由
浅草橋のとうもろこし料理専門店「ろく月」を訪れた投稿には、6枚の写真が並んでいました。
1枚目に写るのは、器に入った黄色いとろみのある一皿。
表面には素揚げにしたようなコーンの粒と、赤みがかった粉末が振りかけられています。
具体的なメニュー名は投稿本文には書かれていないため、ここでは見た目の描写にとどめますが、投稿主はこの店を「特に話題になっております」と紹介していました。
この投稿のいいね数は23件、表示回数は4,543回です。
SNSの基準で言えば、決して「バズった」投稿ではありません。
それでも投稿の中で使われていた「もろ活」という言葉は、その後2か月足らずのうちにテレビ朝日が特集を組むほどの広がりを見せています。
SNS運用に関わる人にとって気になるのは、まさにこの落差です。
いいねが伸びなかった言葉が、なぜテレビの生活情報番組にまで届いたのか。
この記事では「もろ活」というキーワードの正体と、産地・飲食店での実際の変化を一次情報から確認しました。
先に結論をまとめると:
– 「もろ活」は旬のとうもろこしをレンジ調理やスイーツ・ラーメンなどで楽しむ活動を指す言葉で、テレビ朝日「ワイド!スクランブル」(9月2日・9月14日)など複数のメディアが実際に特集している
– 起点になった単一の高いいねツイートは見当たらず、いいね数の小さい投稿が積み重なる形で言葉として定着していったとみられる
– 東京都内の飲食店では通常の1.3〜1.6倍の売れ行きを記録する店が出ているほか、山梨県内の産地でも朝採れとうもろこしを求める人の動きが報じられている
Xでは「もろ活」という言葉がどう使われていたのか
浅草橋「ろく月」を訪れた投稿主は、次のように書いています。
「最近知ったのですが、『もろ活』という言葉が流行っているそうです。
ここ数年で『とうもろこし』のラーメンやスイーツなど夏の風物詩として人気になりつつありますが、それを巡る活動を総称しているとか」。
実際にお店を訪ねた記録として、6枚組の写真とともに投稿されていました。
最近知ったのですが、「もろ活」という言葉が流行っているそうです。ここ数年で「とうもろこし」のラーメンやスイーツなど夏の風物詩として人気になりつつありますが、それを巡る活動を総称しているとか。
— うさちゃむ🐦👑💤 (@usachamelo) 2026年7月8日
そんなこんなで特に話題になっております、浅草橋「ろく月」さんに行ってきました🌽
(1/6)↓ pic.twitter.com/Ckp7qgqPcf
このツイートは、リポスト1件・引用1件・返信2件・ブックマーク10件と、いずれも小さな数字にとどまっています。
今回のニュース候補もキーワード検索で見つかったもので、突出したバズ投稿があったわけではありません。
「もろ活」は一つの爆発的な投稿から生まれたのではなく、似たような言葉遣いの投稿が夏の間じゅう静かに積み重なって広がった言葉のようです。
実際に検索データを見ても、この傾向を裏付ける数字が出ています。
「もろ活」という語の月間検索数は、直近月が12カ月平均の約9倍まで伸びていました。
バズった1本の投稿があったわけではないのに、言葉そのものへの関心は着実に積み上がっていたことになります。
ここから先は、テレビや産地の側でどんな動きが実際にあったのかを確かめました。
なぜ「もろ活」という言葉が広まったのか?
家事アドバイザーの矢野きくのさんは、Yahoo!ニュース エキスパートの記事で「もろ活」を「推し活」「サ活(サウナ活動)」などと同じ「〇〇活」型の言葉として紹介しています。
指しているのは、旬のとうもろこしを味わい尽くす活動そのものです。
同記事では、北海道・新千歳空港にある「美瑛選果」のとうもろこしパンが何年も前から行列のできる人気商品だったことも取り上げられており、「もろ活」自体は新しい現象というより、以前からあった人気に新しい呼び名が付いた側面もありそうです。
投稿の中には、もののけ姫に登場する「モロ」を連想して笑いが起きているという紹介のされ方もありますが、語源そのものを掘り下げて説明した記事は今回の調査では見つかりませんでした。
言葉の由来は断定せず、「そう受け止められている」という程度にとどめておきます。
メディアはどのタイミングで取り上げたのか?
テレビ朝日系ニュースによると、9月2日には同局の情報番組「ワイド!スクランブル」が「モロ活」ブームを特集しています。
番組では東京・神保町のラーメン店「海老丸らーめん」が紹介され、店主は「通常だったら50〜60杯くらい1日で出るんですけど、とうもろこしラーメンになった時は1日80杯くらいが平均」とコメントしていました。
同店は9月14日放送分でも改めて取り上げられ、記事では「長蛇の列」ができている様子が伝えられています。
1か月以上にわたって同じ店が繰り返し報道されているのは、単発の話題ではなく継続的な人気だと見なされている証拠と言えそうです。
川崎市・武蔵小杉の「ボヤージュサイド・もぐ」では、とうもろこしを使った厚切りトーストを提供しており、当初8月末までの期間限定だった販売を、好評につき9月末まで延長したと報じられています。
長野・八ヶ岳の麓では、もろ活の「ガチ勢」が農園まで足を運ぶ様子も伝えられました。
産地ではどんな変化が起きているのか?
山梨県鳴沢村を取材したUTYテレビ山梨の記事タイトルには「この値段でこの数は絶対買えない」という言葉が使われており、”もろ活”人気を背景に甘みの強いとうもろこしの収穫が最盛期を迎えていると伝えています。
品種は「めぐみゴールド」で、道の駅の直売所には1日1,500〜2,000本ほどが並び、最盛期には1日2,000〜2,500人が訪れているとのことです(この記事は本稿執筆時点で本文ページが表示できなくなっており、検索結果に表示された見出し・要約からの引用です)。
同じ山梨県内の都留市では、道の駅つるが早朝5時ごろから収穫した「朝採れとうもろこし」を販売しており、開店直後に売り切れることもある人気商品だと案内されています。
「もろ活」という言葉が直接のきっかけかどうかまでは確認できませんでしたが、朝採れを狙って足を運ぶ客が増えているという構図自体は、複数の産地情報から共通して見えてきます。
電子レンジだけで本当においしく作れるのか?
家庭で気になるのは、わざわざ茹でなくてもレンジ調理で満足できるのかという点ではないでしょうか。
矢野きくのさんの記事では、皮つきのまま濡らしたキッチンペーパーで包み、600Wで約5分加熱する方法が紹介されています。
仕上げに食パンへ乗せてオーブントースターで焼いたり、かき氷やアイスのトッピングにしたりするアレンジも取り上げられていました。
実はこの「とうもろこし レンジ」という調べ方自体、季節性がかなりはっきりしています。
検索データでは直近月の検索数が12カ月平均の3.4倍に増えていて、とうもろこしが出回る時期になると毎年繰り返し検索される、息の長い困りごとの一つだとわかります。
「もろ活」という言葉が去っても、レンジで手軽に調理したいというニーズ自体は来年の夏もおそらく残るはずです。
Shiritomo編集部の考察:ネーミングはバズの代わりになる
今回の事例が興味深いのは、いいね23件・表示回数4,543回という、SNS運用の指標だけ見れば取るに足らない投稿の言葉が、テレビの生活情報番組にまで届いたという点です。
背景にあるのは、恐らく「もろ活」という語呂の良さそのものです。
「推し活」「サ活」「タピ活」のように「〇〇活」という型は、すでに視聴者・読者側に馴染みがあるため、新しい行動をゼロから説明しなくても一瞬で意味が伝わります。
拡散力を生んでいるのはインプレッション数ではなく、既存の型に乗せた命名そのものだと考えられます。
SNS担当者にとっての示唆は、すでに存在する行動やちょっとしたブームに「名前」を付けられないかを考えてみる価値がある、という点です。
とうもろこしを夏にたくさん食べること自体は以前からあった現象ですが、「もろ活」という呼び名が付いたことで、飲食店側もメニュー名やPR文にその言葉を乗せやすくなりました。
神保町の海老丸らーめんや川崎のボヤージュサイド・もぐは、いずれも既存の商品を「もろ活」という文脈に乗せる形で露出を伸ばしています。
バズらせることが難しくても、名前を付けて拾われやすくすることはできる、というのがこの事例からの学びです。
まとめ
「もろ活」は、単一の高いいね投稿から生まれたバズ現象ではなく、いいね数の小さな投稿が積み重なりながら定着していった言葉でした。
テレビ・産地・飲食店それぞれの実例を見る限り、SNS発の言葉が既存のブームに「呼び名」を与えたことで、報道されやすく、便乗しやすい現象に育ったと言えそうです。
さらに深掘りしたい方へ
「もろ活」という言葉の紹介や、実際に取り上げられた店舗・産地の詳細は、以下の一次情報でも確認できます。