ゲーム業界 読了 8 分

「10年待ってこれ?」――12年前に消えた前例と、STARCRAFTがまた”シューター”になった理由

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年9月13日 更新
「10年待ってこれ?」――12年前に消えた前例と、STARCRAFTがまた”シューター”になった理由
PR

BlizzCon 2026のオープニング。
赤いアーマーをまとったマリンが降下艇から飛び出した次の瞬間、画面を埋め尽くすザーグの群れに轢き殺されました。
会場がどよめいたのは、そのマリンが「Holt」という名の新兵だと分かった瞬間ではなく、この映像が「STARCRAFTの新作」として流れた瞬間です。
28年前にRTS(リアルタイムストラテジー:資源を集めながら軍隊を指揮して敵陣を攻略するジャンル)として生まれたシリーズが、今度は一人称視点のオープンワールドシューターとして帰ってくる――。
ストラテジーゲームに縁がない人でも、この乗り換えには何か既視感を覚えるはずです。

先に結論をまとめると:
– BlizzCon 2026でSTARCRAFTの新作が発表され、RTSではなくオープンワールドの一人称シューターとして生まれ変わる
– 発売は2030年春予定。
Xboxでの展開を示す情報はあるものの、Blizzardは対応プラットフォームを正式には発表していない
– Blizzardは12年前にも同シリーズをシューター化しようとして頓挫した過去があり、Xでは期待の一方「またか」という声も出ている

Xで沸き起こった「これは”あのSTARCRAFT”なのか」の声

発表直後のXは、歓喜と戸惑いが入り混じった空気になりました。
長年のファンからは単純な喜びの声が上がっています。

Blizzard is basically saying「20年前に夢中になっていたものを覚えているか」と言っている――そんな驚きを込めた投稿がこちらです。

一方で、シリーズの根幹だったRTSというジャンルそのものが姿を消すことに、戸惑う声も少なくありません。
STARCRAFTを一度も遊んだことがないという投稿者からも「STARCRAFTを長年遊んできた人にとって、これはSTARCRAFTと呼べるゲームなのか」という趣旨の疑問が上がっていました。
「発表された」という事実だけでは、ファンの間で評価が割れているというのが実際のところです。

ただ、この盛り上がりだけでは「なぜ今、なぜシューターなのか」までは分かりません。
そこで発表の詳細と、シリーズの過去を確かめてみました。

調べて分かったこと

なぜRTSではなくシューターなのか

新作を率いるのは、Dan Hay氏。
『Far Cry』シリーズのリードプロデューサーを務めてきた人物です。
発表の場でHay氏は、新作を「一歩ごとに手に入れる実感があるオープンワールドシューター」だと説明しました。
舞台は『STARCRAFT II: Legacy of the Void』から70年後の世界。
プレイヤーはテラン(人類側の陣営)の兵士として惑星に降り立ち、装備を強化しながらザーグと戦っていくとされています。

発表で流れたのはフルCGのシネマティック映像のみで、実際のゲームプレイ映像は一切公開されていません。
プラットフォーム・具体的な舞台設定・主人公の詳細・マルチプレイの有無・マネタイズ方式についても、この時点では明かされませんでした。
つまり「シューターになる」という方向性以外、ゲームの中身はまだほとんど分かっていないのが実情です。

過去にも同じ挑戦をしていた

実はBlizzardがSTARCRAFTをシューター化しようとしたのは、これが初めてではありません。
2002年、同社は『StarCraft: Ghost』というスピンオフを発表しています。
ゴーストと呼ばれる特殊工作員ノヴァを主人公にした、当時人気だった『メタルギアソリッド』や『スプリンターセル』を思わせるステルスアクションでした。

しかし開発は難航します。
方向性が定まらないままアクション寄りとステルス寄りの間で揺れ動き、開発会社も二転三転。
2006年には「保留」と発表され、事実上の凍結状態が続きました。
長期化する状況は米Wired誌の「ベーパーウェア(発売されないまま噂だけが続くソフト)大賞」にもランクインするほどで、最終的に当時のCEOだったMichael Morhaime氏が2014年のインタビューで正式な開発中止を認めています。
企画から実に12年もの歳月を経ての幕引きでした。

Xで「10年以上待って、出てきたのがオープンワールドシューターだと知るのは、誰にも味わってほしくない痛みです」という趣旨の投稿が話題になっていた背景には、こうした過去の記憶があると見てよさそうです。

Blizzardにとってシューター化への挑戦は今回が3度目であり、Ghostに加えて2017年頃から進めていた別の非公開シューター企画(コードネームAres、2019年に開発中止)もあり、過去2回はいずれも完成にすらたどり着けなかった、という事実を知っているかどうかで、この発表の受け止め方はかなり変わってくるはずです。

プラットフォームはどこまで決まっているのか

発表直後からXboxとの結びつきをうかがわせる材料はいくつかありました。
Xbox公式ニュースサイトの「Xbox Wire」が今回のBlizzCon発表をトップ記事の一つとして取り上げ、ゲーム情報を追うアカウントの一つも「StarCraftがXboxに来る」と投稿しています。
BlizzardがMicrosoft傘下であることも踏まえれば、Xbox展開は十分に有力な観測です。

ただし、Blizzard・Microsoftのどちらからも「対応プラットフォーム」そのものを明言した公式発表はまだなく、PC・Xbox・PlayStationのいずれについても現時点では未確定というのが正確なところです。
Xでは「XboxのSTARCRAFT新作」という書き方で拡散している投稿もありますが、観測と公式確定は分けて見る必要があります。

Shiritomo GAME編集部の考察

今回の発表で興味深いのは、Blizzardが「同じ轍」をあえて踏んでいるように見える点です。
Ghostがステルスアクションとして頓挫した最大の要因は、社内の方向性が定まらず、開発が長期間ふらつき続けたことでした。
今回の新作もまた発表からリリースまで実に4年近くの期間を見込んでおり、開発中に仕様が二転三転するリスクは決して小さくありません。

一方で、今回は前回と決定的に違う点もあります。
Ghostの発表当時はBlizzard社内に明確なジャンルの実績がありませんでしたが、Hay氏は『Far Cry』シリーズでオープンワールドアクションを何作も手がけてきた実績者です。
ジャンルの舵取りを任せる相手として、前回よりも具体的な裏付けがある人選だと言えます。
ゲームファンとしては、発表の熱量そのものより「今回は同じ失敗を繰り返さない体制になっているか」を、今後の情報公開の中で見極めていく視点を持つとよさそうです。

まとめ

STARCRAFTの新作は、28年の歴史を持つRTSシリーズが一人称シューターへと大きく舵を切る挑戦です。
2030年春という長い開発期間と、12年前に頓挫した前例を踏まえると、期待と同じだけの慎重な視線を向けておいて損はなさそうです。

さらに深掘りしたい方へ