Xの本アカウントが乗っ取られた瞬間、サブ垢が動いた——「ユーザー同士の通報協力」が広がる理由
プロ雀士・石田亜沙己さんの本アカウントに、見慣れない投稿が並んだ。
数分後、サブアカウントから緊急のお知らせが飛んだ。
「本アカウントが乗っ取られました。
通報にご協力ください」。
それだけの一言に、フォロワーが次々と動いた。
同じ投稿を見た人が同じ手順で通報し、しばらくして本アカウントは凍結された。
この動きは石田さんだけの話ではありません。
7月17日頃から、日本語圏のXで、特に女性やオタク層を狙ったアカウント乗っ取り・なりすまし被害が急増しています。
SNSを運用する立場なら、自分やチームのアカウントが同じ標的になる可能性は十分にあります。
先に結論をまとめると:
– 7月中旬から、日本語圏Xで女性・オタク層を狙った乗っ取り・なりすまし被害が急増している
– 手口は「相互フォローの信頼」を悪用したDM詐欺で、偽の凍結警告からDiscordへ誘導するパターンが目立つ
– 最も有効な対策は二段階認証(できればSMSより認証アプリ)の設定
偽の凍結警告からDiscordへ——広がる新しい乗っ取り手口
7月17日頃から報告が相次いでいるのは、なりすましアカウントが誘惑的な投稿でフォロワーを集め、DMで「VISAカードが不正利用された」「アカウントが凍結される」といった偽の警告を送りつけ、Discordへ誘導する手口です。
石田亜沙己さんや「りるるん。」さんなど、実際に被害を公開した人が通報を呼びかけ、一部は凍結に追い込むことに成功しています。

第三者が乗っ取り被害を通報する手順自体もXでシェアされ、広がっています。
「第三者からの乗っ取り報告のやり方」は
— 東雲エリィ🪽💙台パン天使系VStreamer (@erii_shinonome) 2026年1月22日
①乗っ取られているアカウント(@_1jyo)の右上【︙】から【報告】を選択
②【なりすまし】を選択
③【他のXユーザーがなりすましの被害を受けている】を選択
④被害に遭っているアカウント(@jyo_rinto225)を入力
以上です!
ご協力よろしくお願いします…!
投稿された手順を要約すると、乗っ取られたとみられるアカウントのメニューから「報告」→「なりすまし」→「他のXユーザーがなりすましの被害を受けている」を選び、被害アカウントを入力するという流れです。
フォロワー同士が同じ手順を共有することで、一つのアカウントに対して複数人が同時に通報でき、凍結までのスピードが上がります。
ただ、この「フォロワー同士の助け合い」だけで防げるものなのか、そもそもなぜここまで被害が広がっているのかは、ここまでの報告だけでは見えてきません。
実際の手口や背景を調べてみました。
なぜ今、この手口が広がっているのか?
Xのアカウント乗っ取りは以前から存在する被害ですが、2026年に入ってから報告数が増えているとする記事が複数見られます。
背景として指摘されているのが、フィッシング詐欺の巧妙化です。
特に注意すべきなのが「リアルタイムフィッシング」と呼ばれる手法です。
攻撃者が偽のログイン画面を用意し、被害者がそこにID・パスワードを入力すると、その情報を使って攻撃者が裏側で本物のXサイトへリアルタイムにログインを試みます。
被害者が続けてSMS認証コードや認証アプリのコードを入力してしまうと、そのコードごと盗まれ、二段階認証を設定していても突破されてしまうケースがあります。
つまり「二段階認証をつけているから安心」とは言い切れず、コードの入力先が本物のXかどうかを毎回確認する意識も必要になっています。
なぜオタク層・女性が狙われやすいのか?
もう一つ気になったのが、被害者に女性やオタク層が多いと報告されている点です。
石田亜沙己さんのように相互フォローの文化が強いコミュニティでは、フォロワー同士の信頼関係が厚く、知り合いのアカウントから届いたDMを疑わずに開いてしまいやすい傾向があります。
攻撃者はこの「知り合いだから大丈夫」という心理を突く形で、なりすましアカウントを使ってDMを送りつけています。

第三者による通報の呼びかけも、Xで広く共有されました。
「第三者からの乗っ取り報告のやり方」
— ツナヤ(TUNAYA) (@KS65113763) 2026年3月14日
①乗っ取られたアカウント(@kariyou09 )の右上【︙】から【報告】を選択
②【なりすまし】を選択
③【他のXユーザーがなりすましの被害を受けている】を選択
④被害に遭っているアカウント(@kariyou09 )を入力
ご協力をお願いいたします
こうした投稿が広がること自体は、コミュニティの自衛策として機能しています。
ただ裏を返せば、「相互フォロー内なら安全」という前提が崩れつつある状況とも言えるでしょう。
今すぐできる対策は何か?
複数の専門記事が共通して勧めているのが、二段階認証(2FA)の設定です。
パスワードに加えて追加の認証を求めることで、不正ログインの多くを防げます。
その中でも、SMS認証よりも認証アプリの利用が推奨されています。
SMS認証は「SIMスワッピング」と呼ばれる手口に弱く、攻撃者が携帯キャリアを騙して電話番号を乗っ取ってしまえば、SMSコードごと奪われてしまうためです。
認証アプリならその心配がありません。
また、DMで届く「不正利用されました」「凍結されます」といった警告は、真偽を確かめる前にリンクを踏まないことが基本になります。
公式サポートを名乗るDMやアカウントほど、実際は偽物であるケースが多いという点も覚えておきたいところです。
Shiritomo編集部の考察:SNS担当者が今日から見直すべきこと
企業やブランドのSNSアカウントを運用している方にとって、今回の件は他人事ではありません。
フォロワーとの信頼関係が厚いアカウントほど、なりすましDMの標的になりやすいという構造は、個人アカウントも企業アカウントも変わらないためです。
まず見直したいのが、アカウント管理者全員の二段階認証の設定状況です。
複数人で運用している場合、一人でも設定が甘いと、そこが突破口になり得ます。
次に、フォロワーからの不審なDMを見つけた際に、誰にどう報告するかという社内フローを決めておくこと。
今回のように「サブアカウントから緊急周知→フォロワーが一斉通報」という流れがスムーズに機能したのは、報告手順がシンプルで共有しやすかったからです。
ブランドアカウントでも同様に、乗っ取られた際の連絡手段(サブアカウントや別のSNS)をあらかじめ用意しておくと、対応の初速が大きく変わってくるでしょう。
まとめ
Xで広がるアカウント乗っ取り・なりすまし被害は、相互フォローの信頼を悪用する新しい手口によって、個人だけでなく企業アカウントにも無縁ではないリスクになっています。
二段階認証は認証アプリで設定し、疑わしいDMのリンクは踏まない、この基本を今一度見直しておきたいところです。


