エロ広告規制より「閉じるボタン」を規制してほしい——国民民主党の法案にX民が示した“本当のストレス”
「エロ広告かどうかよりも、あのすっげえ小さく閉じるボタンがあるやつ」。
国民民主党の青少年保護法案をめぐる議論で、そんな声がXで大きな共感を集めています。
法案の中身は性的広告への対応のはずが、話題の中心になったのは別の不満でした。
閉じても復活する広告、位置をズラして誤タップさせる広告——SNSで広告を運用する担当者にとっても他人事ではないテーマなので、何が起きたのか整理してみます。
先に結論をまとめると:
– 国民民主党が7月15日に提出したのは「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」の改正案で、通称「エロ広告規制法案」です
– Xでは法案の是非よりも「閉じにくい広告」への不満が噴出し、元投稿は3,800件超のいいねを集めました
– 「閉じるボタンを押しにくくする」設計はダークパターン(ユーザーを意図的に誤誘導するデザイン手法)の一種と定義されており、Googleの検索評価にも影響し得ることが分かっています
何が起きたのか(Xでの盛り上がり)
きっかけは@tanuzou1027さんの投稿でした。
国民民主党が提出した法案の話題に触れつつ、「閉じるボタンが見つけづらい広告」「閉じても復活する広告」「位置をズラして強制的にクリックさせる広告」「勝手に動画再生する広告」「スマホ画面いっぱいに広がって閉じても読める部分がほとんど無い広告」と、実際に困っている広告の特徴を5つ箇条書きで並べています。
国民民主党は同じ広告規制でも
— 和三盆ねこぞう Nekozou Wasanbon (@tanuzou1027) 2026年7月22日
・閉じるボタンがめっちゃ見つけづらい広告
・閉じても少し経つとまた復活する広告
・閉じようとした途端に位置を微妙にズラして広告を強制クリックさせる広告
・勝手に動画再生する広告
・スマホ画面いっぱいに広がって現れて閉じても読める部分がほとんど無い広告… https://t.co/pkrKAIsujw
このツイートは36.5万インプレッション、いいね3,800件超、リツイート1,200件超を記録しました。
性的な内容そのものより、広告のUX(ユーザー体験)に対する不満のほうが多くの人の実感に刺さったということでしょう。
「規制するならこっちを先にやってほしい」という空気が、リプライや引用ツイートを通じて広がっていきました。
ただ、法案の中身が実際にどうなっているのか、そしてXで指摘された「閉じにくい広告」がどこまで既存のルールで問題視されているのかは、投稿だけでは分かりません。
一次情報を確認してみました。

調べて分かったこと(調査・深掘り)
「エロ広告規制法案」とは実際どんな法律なのか?
国民民主党が7月15日に参議院へ提出したのは、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律の一部を改正する法律案」です。
提案者は伊藤孝恵議員・小林さやか議員で、大規模なデジタルプラットフォーム事業者に対し、青少年有害情報を含む広告について閲覧防止措置の実施や、対応要領の作成・公表、苦情受付体制の整備などを義務付ける内容になっています(新・国民民主党 公式発表)。
提案者側は「表現の自由を制限するのではなく、広告が表示される先を制限して子どもを守る」という趣旨を説明していますが、条文が性表現に限定されていないことから、音喜多駿氏や漫画家の森川ジョージ氏らが「恣意的な運用がなされるのでは」と懸念を表明し、法案そのものが炎上気味の展開になっています(アゴラ、coki)。
つまりXでは「法案の運用が恣意的になるのでは」という表現規制への警戒と、「広告のUXのほうが先だろう」という実利的な不満の両方が同時進行していたことになります。
今回取り上げた@tanuzou1027さんの投稿は、後者の代表格として拡散したパターンです。
「閉じにくい広告」はなぜここまで嫌われるのか?
@tanuzou1027さんが列挙した「小さな閉じるボタン」「復活する広告」「位置をズラす広告」は、UXの世界ではダークパターン(ユーザーの意図しない行動を誘発するよう意図的に設計されたインターフェース)の一種として整理されています。
中でも「ユーザーが望む行動を意図的に困難にする」タイプは「オブストラクション(妨害)」と呼ばれ、閉じるボタンを小さくする・複数のバツ印を紛らわしく配置する・本物のボタンにフェイクを重ねるといった手法が典型例として挙げられています(darkpatterns.jp)。
Forbes JAPANが紹介した意識調査でも、押しにくい×ボタンや読みづらい色の文字は「ダークパターン」として消費者に認識されており、アメリカや欧州ではこうした設計を規制する法律の整備が進んでいる一方、日本ではまだ直接的な規制は存在しないようです(Forbes JAPAN)。
今回のX上の不満は、「表現規制」より「体験規制」を望む声が先に噴き出した、と見ることもできそうです。
「閉じにくい広告」は検索順位にも影響するのか?
実はGoogleは、こうした広告の出し方を以前から問題視しています。
2017年1月から、モバイル検索においてコンテンツへのアクセスを妨げるインタースティシャル広告(画面全体を覆う形式の広告)を多用するページの評価を下げるアルゴリズムを導入しています。
フルスクリーン広告を不適切なタイミングで表示し、ユーザーの誤タップを誘発するような実装は、検索順位の下落につながる可能性があるとされています(Web担当者Forum)。
現時点でこのペナルティは主にモバイル検索が対象ですが、Googleがモバイル版ページの評価をデスクトップ検索にも反映する「モバイルファーストインデックス」を採用していることを踏まえると、「閉じにくい広告」を放置することは、法規制の有無にかかわらずSEO上のリスクにもなり得ます。
X上の不満は感情論だけでなく、実際にGoogleの評価軸とも重なっていたわけです。
反応・広がり
このテーマへの共感は元投稿だけにとどまりませんでした。
引用ツイートの一つでは、同じ不満をより具体的な体験として語る声が上がっています。
エロ広告の是非よりも、閉じるボタンの小ささや誤タップを誘発する配置に対する苛立ちが強く共感を呼んでいる様子が、この引用からも読み取れます。
あーーー!わかる…
— NobunagA (@NobunagA_A) 2026年7月22日
エロ広告かどうかよりも、あのすっげえ小さく閉じるボタンがあるやつとか、まんなかの狭いところに✗があるのにそこ押そうとすると、間違えて上下のバナータップしちゃってリンク先が開くクソうざい広告規制してほしいw https://t.co/P79tMGN6U9
いいね数は114件と元投稿ほどではないものの、「あーーー!わかる…」という共感の書き出しから始まり、真ん中の狭いスペースに×ボタンがあるのに間違えて上下のバナーをタップしてしまう、という具体的な失敗体験が語られています。
抽象的な「広告がうざい」ではなく、具体的な操作ミスの描写であるほど拡散しやすいことがうかがえます。
Shiritomo編集部の考察:広告運用担当者が明日からできること
今回の議論から見えてくるのは、「閉じにくい広告」は法規制を待つまでもなく、すでにブランドイメージと検索評価の両方にマイナスに働くリスクだということです。
SNS広告やディスプレイ広告を出稿する企業にとって、閉じるボタンの視認性やタップのしやすさは、単なるデザインの好みの問題ではなく、ユーザーの信頼を左右する要素として扱う必要があります。
具体的には、まず自社が出稿している広告フォーマットが「オブストラクション」型のダークパターンに該当していないかをチェックすることから始められます。
閉じるボタンのサイズが小さすぎないか、周囲のバナーとの距離が十分か、閉じた広告が短時間で再表示される仕様になっていないか——こうした項目は広告代理店やアドネットワークに確認できる範囲です。
また、自社サイトに広告枠を設けている場合は、Googleのインタースティシャル広告に関するガイドラインへの適合状況を定期的に見直すことも有効でしょう。
炎上した法案そのものへの賛否は分かれるところですが、「ユーザー体験を軽視した広告は嫌われる」という結論には、規制の有無にかかわらず耳を傾ける価値があります。
SNS上の「あるある」的な不満は、実は企業側の広告運用にとって具体的な改善のヒントを含んでいることが多いものです。
まとめ
国民民主党のエロ広告規制法案は表現規制への懸念で議論を呼びましたが、Xで最も共感を集めたのは「閉じにくい広告そのものを規制してほしい」という実利的な声でした。
ダークパターンやGoogleの評価基準を踏まえると、広告のユーザビリティ向上は法規制の是非を超えて、企業が今すぐ取り組む価値のあるテーマだと言えそうです。