Logic Pro 13が公開、目玉のAIアシスタントはベータ版かつ米国英語のみに限定
Appleの音楽制作ソフト「Logic Pro」が13へのメジャーアップデートを迎えました。
AIによる作曲アシスタントや、ミックス済みの音源からドラムだけを分離する機能の強化が話題になっていますが、調べてみるとAI機能には「ベータ版」「米国英語のみ」といった明確な線引きが設けられています。
ほぼ同じタイミングで、サンプル音源サービスのSpliceも独自のDAW(音楽制作ソフト)「Splice Create」を公開しました。
2つのニュースを合わせて、今どこまでがAIで、どこからが人の作業なのかを整理します。
先に結論をまとめると:
– Appleは10月27日、Logic Pro 13を発表。
AIの「インテリジェント・アシスタント」はベータ版・米国英語のみで、対応にはmacOS 27「Golden Gate」以降が必要
– ドラムのミックス済み音源をキックやスネアなど個別トラックに分離する「Stem Splitter」が強化され、Browser(音源ブラウザ)も全面的に再設計された
– ほぼ同じタイミングでSpliceが新DAW「Splice Create」のベータ版を公開。
自社の音源カタログを検索できる音声・テキスト操作のアシスト機能を備えるが、ユーザーが作った曲自体はAIの学習に使わないと説明している
Logic Pro 13で何が変わったのか
Appleの公式発表によると、Logic Pro 13の新機能は大きく3つです。
1つ目は「インテリジェント・アシスタント」です。
Apple独自のモデルと他社のモデルを組み合わせて動き、新しい曲の立ち上げ方の提案や、プロンプト1つでのボーカルトラックのセットアップ、作業中のプロジェクトの調整などを助けてくれます。
ただしこれはベータ版かつ米国英語のみの機能で、利用にはApple Intelligence対応Mac・macOS 27「Golden Gate」以降が必要です。
Logic Pro 13本体の対応OSはmacOS 26.1以降(Apple silicon搭載Mac)ですが、AIアシスタント部分だけはさらに新しいOSを要求する、という二段構えになっています。
2つ目は「Stem Splitter」の強化です。
もともとミックス済みの音源から大まかな要素を分離する機能でしたが、今回のアップデートでドラムをキック・スネア・ハイハット・タム・シンバルなど個別のトラックに分けられるようになりました。
原曲の多重録音データ(マルチトラック)が手元になくても、完成した音源から素材を取り出せるのが特徴です。
3つ目は、音源を探す「Browser」の再設計です。
ループ・インストゥルメント・エフェクトのプリセットが一つの場所にまとまり、オンデバイス(端末内)の音楽解析によって音源を自動で分類・タグ付けしてくれるようになりました。
サウンドを探す手間を減らす方向の変更です。
Creator Studioへの加入が前提
これらの新機能を使うには、Appleのサブスクリプション「Creator Studio」への加入が必要です。
料金は通常プランが月額12.99ドルまたは年額129ドル、学生向けプランが月額2.99ドルまたは年額29.99ドルで、新規加入者には1ヶ月の無料トライアルが用意されています。
発表は10月27日でしたが、実際にMac App Storeで使えるようになったのは11月に入ってからです。
X(旧Twitter)上でも、発表直後からこのアップデートを伝える投稿が見られました。
Apple、新世代DAW「Logic Pro 13」を発表…… 本格的なAI機能『インテリジェント・アシスタント』を搭載、ミックスされたドラムの分離にも対応 – ICON https://t.co/fCcymeLPrB pic.twitter.com/q8WlnAuROv
— ICON (@ICON_jp) 2026年10月29日
価格や対応OSを整理する投稿も見られます。
【Logic Pro 13のシステム要件】
— HEM2 (@HEM_SQUARE) 2026年10月29日
対応OS:MacOS 15.4 Sequoia (2025/3/31) ~
対応CPU:Apple Silicon (M1~)のみ
【Logic Pro 13 買い切り価格】
Logic Pro 13 ¥30,000
【Apple Creator Studio(アプリ10種のサブスク)料金】
年額 ¥17,800
※価格は税込
※AIアシスタントはMacOS 27~のみ
なお引用した投稿の対応OS表記(MacOS 15.4〜)はApple公式発表の内容と異なり誤りで、Logic Pro 13本体の対応OSは前述の通りmacOS 26.1以降(AIアシスタントはmacOS 27「Golden Gate」以降)が正しい情報です。
同じ11月5日に公開されたSpliceの新DAW「Splice Create」
Logic Pro 13が実際にMac App Storeで使えるようになったのと同じ11月5日に、サンプル音源サービスのSpliceが、独自のDAW「Splice Create」のベータ版を公開しました。
Mac向けのスタンドアロンアプリとして無料で使い始められ、Windows版とWeb版は今後提供予定とされています。
Splice Createの特徴は、自社が持つ300万点以上のロイヤリティフリー音源ライブラリと、音源プラグイン「Splice INSTRUMENT」を、1つのDAWの中から直接検索・利用できることです。
さらに「Assist」という音声・テキストでの操作機能があり、「このスタイルの音を探して」「ドラムをグループ化して」といった指示で作業の一部を自動化できます。
制作の進め方を学べる「Point Mode」というガイド機能も用意されています。
なお「Ableton互換」という紹介も見かけますが、実際にはAbleton Live・FL Studio・Pro Toolsなど主要DAWのキーボードショートカットに合わせてプリセットを切り替えられる、という機能です。
Splice自身がAbleton Live内にプラグインとして入り込むような直接連携ではない点は、誤解しやすいので注意が必要です。
有料プラン「Create Pro」は、新規ユーザー向けの導入価格として月額9.99ドルが用意されています。
Spliceは「学習に使うのは自社がライセンスを持つカタログの音源のみで、ユーザーがCreate上で作った・アップロードした曲は学習に使わない」とも説明しています。
Shiritomo編集部の考察:広げる機能と、線を引く機能
Logic Pro 13とSplice Create、どちらも「AIが音楽制作を助ける」という見た目は同じですが、実際の線引きには違いがあります。
Appleは、AIアシスタントという最も踏み込んだ機能をベータ版・米国英語のみ・新しいOSが必要、という形に絞って出しています。
一方でStem SplitterやBrowserの再設計は、ベータなどの制限なく全ユーザーに提供されています。
「AIが曲を考える」部分は慎重に出し、「AIが素材を整理・分離する」部分は先に広く配る、という優先順位が見えます。
Spliceも同様に、Assistという操作支援機能は提供しつつ、学習データの範囲を自社ライセンスのカタログに限定し、ユーザー自身の制作物は学習対象から外すと明言しています。
どちらの会社も「便利さを広げる機能」と「慎重に線を引く機能」を分けて設計している点は共通していると言えそうです。
まとめ
Appleは10月27日にLogic Pro 13を発表し、AIアシスタント(ベータ版・米国英語のみ)とドラム分離強化・Browser再設計を加えました。
Logic Pro 13が使えるようになったのと同じ11月5日にSpliceも独自DAW「Splice Create」のベータ版を公開し、自社音源カタログの検索とAIアシスト機能を備えています。
いずれも「AIが考える」部分には制限や説明が添えられており、便利さと慎重さの両方が同時に進んでいる状況です。