画像を足したらテキストも伸びた。DeepSeekの新モデルがローカルAI勢をざわつかせた理由

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年9月1日 更新
画像を足したらテキストも伸びた。DeepSeekの新モデルがローカルAI勢をざわつかせた理由

画像を理解する機能を追加しただけのはずなのに、コーディング系のベンチマーク(AIの性能を測る共通テスト)7項目のうち6項目でスコアが上がっていた——。
中国DeepSeekが8月31日にHugging Face(AIモデルを配布・共有する世界最大級のプラットフォーム)で公開した実験モデル「DeepSeek-V4-Flash-Vision-Exp」を巡って、こんな報告が出ています。
テキスト専用モデルに画像認識を”足し算”しただけのモデルのはずが、肝心のテキスト性能まで底上げされていたという話です。
ふだんChatGPTやClaudeを使っている方にも、無料で自分のPCに置ける選択肢がまた一つ増えた、という関係のある話です。

先に結論をまとめると:
– DeepSeekがV4-Flashシリーズ初の画像対応モデルをMITライセンス(商用利用も含め自由に改変・再配布できるライセンス)でオープンウェイト(AIモデルの中身の数値データそのものを公開する方式)公開
– 画像を足したのにテキスト系エージェントのベンチマークが下がるどころか一部で上回ったとDeepSeek自身も発表している
– ただし画像は一律800×800ピクセルに圧縮されるため、細かい文字や資料の読み取りは苦手という報告も出ている

「テキストも伸びた」という発表にローカルAI勢が反応

DeepSeekは8月21日、V4-Flashをベースにしたマルチモーダル(テキストだけでなく画像なども合わせて扱えること)の実験モデルを、まずAPI(ソフトウェア同士がやり取りする窓口)経由で先行公開しました。
公式アカウントの発表はこうです。

(和訳)「DeepSeek-V4-Flash-Vision-ExpがDeepSeek APIプラットフォームで利用可能になりました。
このマルチモーダル実験モデルは、エージェント(AIが自律的にタスクをこなす機能)・推論・世界知識を含むテキスト性能でDeepSeek-V4-Flashと同等です。
マルチモーダルのエージェント系ベンチマークでは大きく前進しています」

この段階ではAPI限定で、重みそのものは公開されていませんでした。
ところが、それから10日後の8月31日、Hugging Face上の公式リポジトリに重みが実際にアップロードされ、誰でもダウンロードして自分の環境で動かせる状態になりました。
ライセンスはMIT、パラメータ数(AIの中にある調整可能な数値の総数、多いほど表現力の目安になる)は305Bと表記されています。
テキスト性能を落とさずに画像理解を足すという発表内容が、10日越しに「実際に手元で確かめられる」形になったことが、ローカルでAIを動かす層の関心を集めた形です。
ただ、発表の「同等」という言葉だけでは実際にどこがどう変わったのか分かりません。
一次情報を確認してみました。

調べて分かったこと

「テキスト性能が同等どころか伸びた」は本当か

DeepSeek公式の説明は「V4-Flashと同等」という控えめな表現でした。
ただし内訳を見ると、コーディング系のエージェントベンチマークである「Terminal Bench 2.1」で83.9、「DeepSWE」でもわずかにスコアが上がったと発表資料に明記されています。
海外メディアのレビュー記事では、テキスト系エージェントのベンチマーク7項目のうち6項目でV4-Flash-Vision-ExpがテキストのみのV4-Flashを上回ったと報告されており、「ビジョンを足すためのモデル」のはずが、実質的にはテキストモデルの底上げに近いという評価も出ています。

一方、画像を使うマルチモーダル系のベンチマーク「ApexBench」(Pass@1、AIが一発でどれだけ正解できるかを測る指標)は26.2から36.5へと10ポイント以上伸びました。
これは画像を扱えるようになったことで初めて解けるタスクが増えた結果なので、テキスト性能の向上とは別の話として区別して読む必要があります。

画像認識の実力はどこまで本物か

肝心のビジョン機能そのものについては、評価が割れています。
海外の技術系フォーラムでの検証によれば、入力される画像は一律およそ800×800ピクセルにリサイズされ、1枚あたり最大384トークン(AIが文章を処理する際の単位)として課金される仕組みです。
そのため、レイアウトの確認やUIのチェックといった「大まかな構造を見る」タスクは得意な一方、領収書や小さな文字を読み取るような精密なOCR(画像内の文字を読み取る技術)作業は精度が落ちるという指摘があります。

ある検証者は、写真に写った教会を別の地名でラベル付けして提示したところ、モデルは誤りを指摘せずそのまま「確かにその場所です」と答えてしまったと報告しています。
時計の文字盤を読む単発のテストでは一度失敗したものの、10回中9回は正しく読めたという再検証結果もあり、1回のテスト結果だけで実力を判断するのは危険だという声も上がっています。
実装面でも、推論エンジン「vLLM」がこのモデルのネイティブなビジョン機能にまだ対応しておらず、環境によってはテキストのみでしか使えないという課題も残っています。

家庭のPCでも動かせるのか

「ローカルで試せる」と言っても、305Bパラメータのモデルをそのまま動かすには相応の環境が必要です。
有志が公開した量子化版(モデルの精度を落として軽量化する技術)GGUF形式では、4bit量子化で約155GB、8bit量子化で約162GB程度のストレージ・メモリ容量が必要とされています。
従来のV4-Flash本体でも無圧縮でのローカル実行には168GB程度のRAMが目安とされていたことを踏まえると、誰でも普段使いのノートPCで試せるわけではなく、メモリを大量に積んだMac StudioやワークステーションクラスのPCが実質的な前提になりそうです。
それでも「重みが公開されている」こと自体に価値を感じる層が一定数いるからこそ、この話題は盛り上がっています。

Shiritomo編集部の考察:発表を2回に分ける戦略に意味がある

今回の件で目を引くのは、DeepSeekが同じモデルの話題を「API先行公開」と「オープンウェイト公開」の2回に分けて発信している点です。
8月21日にAPIで機能を披露し、話題が一段落しかけた10日後にあらためて重みを公開する。
これにより、同じ製品で2回ニュースサイクルを回せる構造になっています。
SNS上での話題化を狙うなら、機能公開とオープン化を同時に出し切るのではなく意図的にずらすことで、注目のピークを2つ作れるという点は参考になる動きです。
加えて、テキスト性能を落とさない設計を強調する発表の仕方は、「画像を足すと他が犠牲になるのでは」という利用者の不安を先回りして打ち消す狙いがあるとみられます。

まとめ

DeepSeek-V4-Flash-Vision-Expは、画像理解を加えながらテキスト性能を落とさない、むしろ一部で上回ったという触れ込みの実験モデルです。
8月31日にMITライセンスでオープンウェイト公開され、誰でも重みを入手できる状態になりました。
ただし画像認識には解像度の制約や誤答のリスクが残り、動かすにも相応のハードウェアが必要になります。
話題の熱量に対して、実際に自分の用途で試して確かめる姿勢が引き続き求められそうです。

さらに深掘りしたい方へ

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DeepSeekの新モデル「V4-Flash」、破格の値段は本当に実力に見合っているのかDeepSeekの新モデル「V4-Flash」、破格の値段は本当に実力に見合っているのか100万トークン入力しても、請求はわずか0.14ドル(約22円)。 中国のAI企業DeepSeekが7月31日に公開した新モデル「DeepSeek-V4-Flash」のAPI価格です。

一次情報や関連情報は以下も参考にしてください。