名刺にミニノギス仕込むキャステムの「フォロワーが増えません」、他社も便乗する自虐ミームに
名刺の表面に小さな透明ケースが貼り付けられていて、その中には目盛りを読めるほど精巧なミニチュアのノギス(長さを測る工具)が収まっている——。
広島県福山市の精密部品メーカー、株式会社キャステムの公式X(@castem_info)が10月27日昼に投稿した1枚です。
1,805件のいいねと79,846件のインプレッションを集めた一方、添えられていた言葉は「名刺に入るミニミニノギスつくれる技術があるのに フォロワーが増えません。
助けて下さい。」という自虐でした。
企業公式アカウントの運用に悩んだことがある人なら、この落差についつい頷いてしまうのではないでしょうか。
先に結論をまとめると:
– 広島の精密部品メーカー・キャステムの自虐投稿(名刺にミニノギスを仕込む技術があるのにフォロワーが増えない)が1,800件超のいいねを集めた
– 投稿をきっかけに、新潟の金型メーカーや化粧品工場など他業種の企業アカウントが、まったく同じ自虐フォーマットで便乗する小さなミームが生まれた
– 技術そのものは「MIM(金属粉末射出成形法)」という製法で、バズってもフォロワー増加には直結しないというSNS運用側のジレンマも同時に浮き彫りになった
名刺に仕込まれていた「ミニミニノギス」とは
投稿には写真が2枚添えられていました。
1枚目は名刺の表面を写したもので、キャステムの会社情報とともに、ネジのような本体にスライド式の目盛りが付いた小さな工具が丸いケースに収められています。
2枚目はその工具を文房具のMONO消しゴムの箱と並べて撮った比較カットで、実際に画像を確認すると、消しゴムの箱よりもひと回り小さいサイズに収まっていることが分かります。
おもちゃではなく、実際に機能する測定器具のミニチュアだという点が、この投稿の驚きの核心です。
【お知らせ】
— キャステム【公式】 (@castem_info) 2026年10月27日
名刺に入るミニミニノギスつくれる技術があるのに
フォロワーが増えません。
助けて下さい。 pic.twitter.com/kYRMkTgjzd
投稿からまもなく365件のリポスト、39件の引用、53件の返信が付きました。
「技術はすごいのに注目が集まらない」という会社の自虐が、むしろ技術そのものへの驚きを呼び込んだ形です。
ただ、この反響の大きさだけでは、なぜここまで広がったのか、投稿の何が人を動かしたのかまでは見えてきません。
実際に寄せられた引用ツイートを確かめてみました。
調べて分かったこと
このミニノギスはどうやって作られているのか
投稿の翌28日昼、キャステム公式は種明かしとなる投稿を追加しています。
このような微細で複雑な形状を得意とする「MIM(金属粉末射出成形法)製法」
— キャステム【公式】 (@castem_info) 2026年10月28日
医療機器・電子機器・半導体関連部品など、
幅広い分野で活用されています✨
ミニノギスが出来るまでの動画です。
金型メインですが、是非ご覧ください(`・ω・´) https://t.co/AqkKSGcwTx pic.twitter.com/4wZFOVSX5L
この投稿によると、ミニノギスは「MIM(金属粉末射出成形法:金属の粉末を樹脂と混ぜて射出成形したあと、高温で焼き固める製法)」で作られているとのことです。
医療機器や電子機器、半導体関連部品など、精密さが求められる幅広い分野で使われている技術だといいます。
名刺サイズの工具は、普段は目に見えにくい自社の技術力を、誰もが一目で実感できる形に変換した“名刺代わりの実演”という位置づけのようです。
キャステムは広島県福山市を拠点に、ロストワックス鋳造とMIMを得意とする精密部品メーカーです。
今回のような「技術を体感できるノベルティ」は、実は今回が初めてではありません。
過去にも12種類のミニ工具が仕込まれた名刺入れを商品化するなど、ユニークな広報企画を継続的に行ってきた会社だといいます。
つまり「フォロワーが増えない」という自虐は、単なる謙遜の言葉ではなく、これだけの企画を重ねてもアカウントの規模がなかなか伸びていない実情を踏まえた、ある種本音の嘆きだった可能性があります(投稿時点のフォロワー数は約18,600人)。
なぜ他の企業アカウントまで「自虐」を真似したのか
今回の投稿がただのバズりで終わらなかった理由は、ここにあります。
ミニノギス投稿をきっかけに、まったく同じ「すごい技術があるのにフォロワーが増えない」という自虐フォーマットを使う便乗投稿が、業種の異なる企業アカウントから相次いだのです。
新潟の金型メーカーの公式アカウントは、
【お知らせ】
— 🐱㍿サンシン🐶【公式】 (@sanjokanagataya) 2026年10月27日
公差100分台の超精密ロストワックス
金型つくれる技術があったり美味しい
新潟ラーメンや海鮮食べたり柴犬
ポストしたりしてるのにフォロワーが
増えません。
助けて下さい。#便乗してみる https://t.co/22HekfjQCZ pic.twitter.com/k6F6jvQnvi
「公差100分台の超精密ロストワックス金型つくれる技術があったり美味しい新潟ラーメンや海鮮食べたり柴犬ポストしたりしてるのにフォロワーが増えません。
助けて下さい。」と、文章構成までほぼそのまま踏襲した投稿を同じ27日午後に出し、56件のいいねを集めました。
同様に、化粧品工場の公式アカウントは「ピラミッドになったり円陣を組んだり……製造部長引率の元、工場で化粧品づくりをしているのにフォロワーさんが増えません。
助けてください。」と便乗し、別の企業アカウントも「『6面全部を切削仕上げした1辺0.05mmの純銅立方体』を作ったってフォロワーが増えませんのに」と、負けじと自社の精密加工技術をアピールしました。
一つの自虐フォーマットが、普段は交わることのない業種の企業公式アカウントの間で、手軽に使える“ミームのテンプレート”として機能し始めていたことが分かります。
バズってもフォロワーが増えないのはなぜか
ここまで見てきた便乗投稿にも共通しているのが、「バズっても自社のフォロワーには直結しない」という悩みです。
これはキャステムに限った話ではなく、企業アカウントの運用担当者が抱え続けている典型的な困りごとだといえます。
いいねやインプレッションを押し上げるのは、投稿の内容そのものへの反応(面白い・すごい・共感できる)です。
これに対してフォローという行動は、「このアカウントが今後も自分に役立つ情報を発信し続けるか」という将来への期待から生まれます。
普段はBtoB向けの技術情報が中心のアカウントが、単発で強いインパクトのある投稿を出しても、フォローという“継続の約束”までは踏み込んでもらいにくいのが実情でしょう。
バズとフォロー増加は、実は別の指標だと捉えたほうが運用としては現実的です。
Shiritomo編集部の考察:BtoB企業アカウントが学べること
今回の一件で見逃せないのは、便乗した企業がいずれも普段はニッチな業界向けに情報発信しているBtoB企業だったという点です。
金型・化粧品製造・金属加工は、一般消費者が日常的に検索する分野ではありません。
それでも便乗投稿が一定の反応を集められたのは、キャステムの投稿に注目していた「ものづくり好きな個人アカウント」という共通の読者層に、便乗した企業が一気にリーチできたからだと考えられます。
フォロワー数という単一の指標だけを見ると地味な結果に映るかもしれませんが、普段リーチできない層に自社の技術力を印象づけられたのなら、広報施策としては十分に価値のある成果です。
SNS担当者が明日からできることがあるとすれば、バズっている他業種の投稿にただ「いいね」や「リポスト」をするのではなく、自社の技術・商品に置き換えて同じフォーマットに乗ってみることでしょう。
失うものが少ない分、試す価値のある一手ではないでしょうか。
まとめ
名刺に仕込まれた小さなノギス一つが、1,800件超のいいねと、業種をまたいだ自虐ミームの連鎖を生みました。
フォロワー数という結果だけでは測れない広がり方を、今回の一件は教えてくれています。
さらに深掘りしたい方へ
キャステムのMIM製法や事業内容について、さらに詳しく知りたい方は公式サイトも参考にしてください。