「5年後クリエイターではない」内閣府委員の発言にクリエイターが反発
生成AIをめぐる政策議論の場で、ある発言がX上で大きな反発を呼びました。
内閣府の知財戦略本部に関わる会議で、AIに否定的な意見を送った人たちについて「5年後クリエイターではないので気にしなくていい」という趣旨の発言があったことが伝わり、イラストレーターやデザイナーから怒りや不安の声が相次いでいます。
先に結論をまとめると:
– 内閣府の知財戦略本部の議論に関わる委員が、生成AIに否定的なパブリックコメントを送った人たちを念頭に「そういう人たちは5年後クリエイターではないので気にしなくていいと思います」という趣旨の発言をしたと伝わった
– 発言が報じられると、イラストレーターやデザイナーから当事者の声を切り捨てているとの批判がXで広がった
– グッドパッチの調査では、デザイナーの78.8%がAIを毎日使う一方、50.9%がキャリアへの不安を抱えているという現実も合わせて話題になった
何が起きたのか
発端は、内閣府の知的財産戦略本部に関わる会議の様子を伝える投稿でした。
生成AIの利用に否定的な立場からパブリックコメントを送った人たちについて、ある委員が「そういう人たちは5年後クリエイターではないので気にしなくていいと思います」という趣旨の発言をしたことが明らかになり、Xで急速に拡散しました。
この発言に反応したyumemirunecoco氏は、発言に同意したとされる委員の名簿らしき画像を添えて投稿しています。
X上では、この発言について「パブリックコメントに対して『そういう人たちは5年後クリエイターではないので気にしなくていいと思います』という発言を述べ同意されたメンツはこちらか。
生成AIを使わない人はクリエイターでは無いから著作権を取り上げるみたいな発言ともとれる。
初中級者の苦情って切り捨てた人よりひどい」との投稿が3,868件の「いいね」を集めました。
パブリックコメントに対して「そういう人たちは5年後クリエイターではないので気にしなくていいと思います」という発言を述べ同意されたメンツはこちらか。
— ねここ (@yumemirunecoco) 2026年11月2日
生成AIを使わない人はクリエイターでは無いから著作権を取り上げるみたいな発言ともとれる。
初中級者の苦情って切り捨てた人よりひどい。 pic.twitter.com/urkFJgecv8
別の投稿では、発言そのものよりも、パブリックコメントという制度の軽視を問題視する声も上がりました。
今回の件、生成AIやクリエイターどうのではなく、有識者側がパブコメは無視していいと言って国もそれに頷いたって発言自体が大問題なの、おそらく当人らはわかってないのだろうな。あの人らには笑い話だろうけど、国民にとっては全然笑い事じゃないよ
— 美々野どわね (@MiminoDowane501) 2026年11月2日
調べて分かったこと
発言した委員は誰なのか
発言したのは、音楽プロデューサーでエンターテック領域の起業家として知られるStudio ENTRE株式会社代表取締役の山口哲一氏とみられます。
前述のyumemirunecoco氏の投稿に添えられた画像には、「コンテンツ戦略ワーキンググループ委員名簿(13名)」と題された資料が写っており、山口氏の名前が委員の一人として記載されていました。
山口氏は発言の意図について、新しい技術に関心を持たない人はそもそもクリエイターの定義に当てはまらない、AIを一律に拒否する姿勢は考えが浅い、社会やルールが変わっても専門家は結果を出せるはずだ、といった立場を説明しているとされています。
なぜこれほど反発が広がったのか
批判が集中した理由の一つは、この発言が「否定的な意見を送った人」という具体的な個人・立場を指していると受け取られた点です。
パブリックコメントは本来、政策決定の過程で国民の声を反映させるための制度であり、その意見を「気にしなくていい」と切り捨てるような言い方は、制度の意義そのものを軽視していると受け止められました。
生成AIへの賛否という対立軸だけでなく、「異論を唱えた当事者の声をどう扱うか」という、より根本的な論点として広がったことが、反発の規模を大きくした要因とみられます。
AIとクリエイターの関係は、データでもどう見えているのか
この議論と並行して、デザイン会社グッドパッチが222名のデザイナーと61社を対象に実施した調査「AI Design Databook 2026」の結果も話題になりました。
調査によると、デザイナーの78.8%がAIを毎日利用しており、67.1%が「担当領域が広がった」と回答する一方、50.9%が自身のキャリアに不安を感じていると答えています。
AIを日常的に使いこなしている現場の多くでも、専門性や強みの拠り所が揺らいでいるという複雑な実態が浮かび上がりました。
Shiritomo編集部の考察:賛否の前に、声の扱い方が問われている
今回の一件が示しているのは、生成AIをめぐる議論が「使うか使わないか」という単純な対立では済まなくなっているということです。
AIを毎日使っているデザイナーでさえキャリアへの不安を抱える一方で、政策を議論する側が否定的な意見を「気にしなくていい」で片付けてしまえば、立場の違う当事者の声を拾う仕組みそのものへの信頼が失われかねません。
生成AIの制度設計がこれから本格化する中で、賛成派・反対派のどちらの声も切り捨てずに拾う姿勢こそが、議論の前提として問われているのではないでしょうか。
まとめ
内閣府の知財戦略本部に関わる委員の「5年後クリエイターではない」という発言が伝わり、イラストレーターやデザイナーから反発が広がりました。
背景には、パブリックコメントという制度の軽視への懸念と、AIを使うクリエイター自身も抱えるキャリア不安が重なっていました。
さらに深掘りしたい方へ
デザイナーのAI利用実態を伝えた日本経済新聞の記事で、グッドパッチの調査結果の詳細を確認できます。